3章 開店2日前
昨日に続き2時半から説明会が始まった。
出席者は11名いた。全員来ていた。みんな金が欲しかった。
この年になると、大金を手に入れられる仕事は特殊技術でも持ってない限り無理。まして女性には無理だった。
でも、なめることさえ我慢すれば、お金が手に入る。生きて行ける。
この仕事が、有りか、なしかと言われれば有りである。
お金を手に入れるためには、働かなければいけない。これは誰でも解る。
ただ、自分の良心に問いただした時に、良いか?悪いか?と言えば、良いであった。
理由は、
「きれいごとでは生きて行けない。」
「他人のことは、気にしない。」
「誰も助けてくれない。」
「自分のことは自分でする。」
「国民年金では、生きて行けない。」
「生きるためには、金が欲しい。」
ということを知っていたからである。
控室の真ん中に置かれた机の上には、名前の書かれたA4のネームプレートが置かれていた。
「さくら。」「ジュン。」「ラブ。」「さゆり。」「まり。」「あけみ。」「テレサ。」「ゆかり。」「あい。」「さちこ。」「あゆみ」と11枚のネームプレートがあった。
大きく、解りやすい字で書かれていた。
おばちゃんには、解りやすかった。
「好きなネームプレートを取って首に掛けてください。その名前がこの店での源氏名になります。」と明が言った。
「ここではプライバシー保護のため、その名前で呼びます。」と明が言った。
おばちゃんたちは、机の上のネームプレートを見ながら考えていた。
メガネのおばちゃんが、「ラブ」と書かれたネームプレートを取って首にかけた。
ネームプレートに手を伸ばすおばちゃん達は、私は源氏名なんてなんでもいいよといいながら、さゆりは私のイメージじゃないし、まりは同級生に根性ババの子がいたから嫌い。ジュンも・・・。
同じネームプレートを持った者同士が名前の譲り合いをしながら、楽しそうに会話している。
どれにしようと言いながら、次々に、ネームプレートをかけていった。
みんなの名前が決まるのに10分程かかった。
明が立って喋っているおばちゃん達を座るようにお願いした。
「手前から自己紹介お願いいたします。源氏名だけで結構です。皆さんに顔を見せてあげてください。」と明が言った。
①ラブ
「私がラブです。よろしくお願いします。」みんなに顔を見せて、お辞儀した。
ラブは本名渡辺道子。67才。
3年前に旦那を亡くす。月の年金は12万円。持ち家。税金、国保料、介護保険料、車の維持での支払いが重く伸し掛かる。
家計はいつも苦しい。子どものためにと思い、専業主婦を選び、子育て後は、非常勤の公務員として働き、扶養から外れないように働いたため、社会保険の加入期間が短く、年金が少ない。
今となっては遅いが、若い時から将来を見据え、働き方、生き方をもう少し、考えればよかったと痛感している。
少しでも金と時間に余裕があれば、箱バンに載って、一人キャンプに行くことが好きな、上沼恵美子さんに少し似ているおばちゃんであった。
②さくら
「私がさくらです。みなさんよろしくお願いたします。」とみんなに顔を見せてお辞儀押した。
さくらは本名山田陽子。69才です。
旦那は1年前に亡くなり、月9万円の年金で暮らしている。
家賃は市営住宅で2万円。食費2万5千円。光熱費2万5千円。あと病院代やその他でギリギリ。
年金だけでは、生活が苦しいので、たまに子どもに、2万円程度借りますが、子供は、借やさなくていいよと言ってくれますが、落ち込んでしまいます。
小さく片平なぎささん似である。
③ジュン
「私がジュンです。よろしくお願いします。」と言って、みんなに手を振った。
ジュンは本名山田結子。70才。
旦那とは熟年離婚して、婚姻中に第三号被保険者の手続きをしていなかったのか、あるいは、元夫が国民年金を2人分納めていなかったのか、理由は解らないが、年金受給者の資格がなかった。
慰謝料や財産分与もなく。長男の家に身を寄せて、月4万円のアルバイト収入で暮らしている。娘にも援助してもらっている。
年金がないということは、老後の自由を奪うだけでなく、子供達にも大きな負担をかけている。
制度を知らないことが人生の後半をダメにしている。
少したれ目の岡崎由紀さん似である。
④ちえこ
「私がちえこです。よろしくお願いします。」笑顔で一礼した。
ちえこは本名山崎弥生。67才。
旦那とは離婚して遺族年金が受け取れず。10年働いて国民年金の分だけ、月6万8千円。
婚姻年数に応じて遺族年金が欲しい。
⑤ゆかり
「私がゆかりです。よろしくお願いします。」と言って深々と頭を下げた。
ゆかりは本名前田麻衣子。69才。
旦那と離婚して子供2人を看護婦をしながら育てた。年金は15万円あったが、糖尿病になり、月の薬代が3万円掛かる。それに家賃3万円。食費3万円。光熱費3万円。生活できない。今は、貯金を崩しながら生活している。
「友達からご飯食べに行かない?」
「旅行に行かない?」と誘ってくれていたが、何回も断り続けると誘ってくれなくなった。
最初は「次に行くね。」と言っていたが、誘われなくなった。
ある日友達に会ったときに、「最近どう」と聞かれ、「元気よ」としか答えられなかった。
「本当は寂しい。一緒に行きたい。」と言えなかった。
健康も失い。友達も失って、仕事として人の健康を守って来たのに、自分の健康が守れなかった。
35年働いて、定年すれば、友達と旅行に行ったり、ランチに行ったり、楽しい時間を楽しみにしていたのに。
ゆかりはちょっとぷちょっとしている森昌子さんに似ている。
⑥あゆみ
「私があゆみです。よろしくお願いします。」と大きな声で言った。
本名渋谷望。57才。
旦那が退職金が上乗せされるので早期退職する。
退職金は2000万円あったが、700万で残りの家のローンを払い、長男の家の購入資金に300万円出した。
退職後、旦那とのんびり旅行とかに行っていたら、だんだんお金が無くなった。
65才になれば年金が入るので、「パートでもしながら。」と気軽に旦那がなり言っていたが、その旦那が亡くなり、私が年金をもらえるまで、10年間を1000万円で過ごさなければいけない。
もらえる年金も90000円。これで生活しなければいけない。
パートに出ようと思ったけど腰が痛い。
「あと、何年生きられるのか?」
「お金がたりるのか?」
計算ばかりで、不安で眠れない。
骨格の言い、水前寺清子さんにである。
⑦まり
「私がまりです。よろしくお願いします。」と一礼した。
まりは本名内海あかり。66才
国民年金6万円。貯金200万円。独身。
年金で生活しようとしたが、まりには、一緒に暮らす愛犬がいる。
ペットが体調を壊し手術をするのに百万円掛かる。
手術の後、月3万円の治療代が掛かる。
大好きなペットを飼うことは、自分の首を絞めること。
まりは大きな小柳ルミ子さんに似ている。
⑧あけみ
「私があけみです。皆さんよろしくお願いいたします。」と言いながら、直角に頭を深々と頭を下げた。
本名は田口明子。68才。
元は小さな水道屋をやっていたが、夫が死んだので、息子の家で暮らす。
最初はおかあさんゆっくりいてくださいねと嫁が言ったが、だんだん居心地が悪くなって来た。
また、孫に対して、
「もう少し勉強させたしかいい。」
「ゲームばかりしたら、あかん。」
とか、口を挟むようになり、嫁の顔がいがんだ。
息子から、
「おかん、この家のことには口出ししないでくれよ。」と言われた。
どうせ私は、邪魔扱いやと思い、自分の部屋にこもって、仏壇に向かうのと、アルバムを見ることが、私の仕事です。
「こんなはずじゃなかった。」と毎日思っている。
年を取って、やつれた、藤圭子さんみたいな感じ。
⑨あい
「私があいです。よろしくお願いします。」とネームプレートを見せながら、頭をさげた。
本名は長谷川優子。67才。
専業主婦を40年以上して、家族のために尽くす。月の年金が4万5千円。
卵1パック、350円。50円のパンの耳、もやし、とうふなど、安い食材で過ごす。
手芸教室に通っていたが、5000円のお金がないので通えない。
毎日を手芸の本を見て過ごす。
自分の趣味が出来なくなって情けなくなる。
何のために生きているのか?
太めの八代亜紀さんに似ている。
⑩さちこ
「私がさちこです。さっちゃんと呼んでください。よろしくお願いします。」とみんなにあいさつして一礼した。
本名鈴木舞子。66才。
65才で旦那と離婚して1200万円貰う。
年金が60000円。家賃50000円。残り10000円で生活するのは無理
。毎月100000円を貯金から出す。
あと9年で貯金は無くなる。
そんなことを考えていたら寝られない。
山田スミコさんに似ている。
⑪さゆり
「私がさゆりです。皆さんにご迷惑お掛けするかわかりませんが、よろしくお願いします。」と深々と頭を下げた。
本名山本和歌子。66才。
64才で旦那と死に別れた。貯金は800万。年金は68000円。
もう少しお金が貯まれば老後をゆっくり過ごそうねと言っていたが、貯まる前に旦那が亡くなった。
さゆりの自己紹介が終わると明が言った。
「皆さんにお願いがあります。みんな仲良くしてください。派閥を作らないでください。」
「店が弱くなる原因の一つに、女の人同士の好き嫌いがあります。みなさんは大人ですので、腹立つことがあっても、けんかするようなことはしないでください。」
「店側は一人、一人みなさんを同等に扱います。誰の肩を持つと言うことはありませんので、そのことだけは先に言っときます。」
「それでも揉めた時は辞めて貰います。」
「これから新店をオープンします。みんなで楽しい店を作りませんか?」
と協力することのお願いをした。
明はピンサロを営業する上で、一番厄介なのが女性の管理だと常々、良男に言っていた。
どう言う理由かわからないけれど、「女性は売れっ子になるとマウントを取り出す。
私のお陰で店が流行っているのよ。私が一番稼いでいるのよ。」と口に出して言う。
これを言われると店の中は大変である。
あるものは、その女の人に付き、あるものは、反発する。
店の中がバラバラになり,文句の言わない、店に従順な人が辞めていく。
残った人は勝ち誇ったように、だんだんわがままになっていく。
終わりには残った人もやる気を失くして辞めていく。
新しい女性を募集しても、この業界で×のレッテルを張られると店は営業できない。
名前を変えてみた所で、みんな知っている。
店が失敗する典型的なパターンである。
このようなことが起こらないように、経営者側は常に、目はり、口はりしている。
女性が店に不満を持てば、かわいい子ほど、引き抜かれる。
今までの苦労がパーになる。
店があかんようになるのは、簡単である。
これを明が一番気を付けなければいけないと常々言っていた。
明はみんなを控室から、隣の化粧室に案内した。
引き戸を開けると、左側一面のクローゼットがあり、たくさんの衣装が掛けられていた。
セーラー服、それもスカートの長いものから短い物まで。色も白、黒、紺色。
チャイナ服も長いのから短いのまで。色もいろいろ。
ウエディングドレスも長い物からミニまで。色も赤、青、白。
その他、ミニのドレスからロングのドレス。色もいろいろであるが、伸び縮の効く、ニットの服が目についた。
あと、メイド服、白衣、ミニスカート、着物、シスターの服などなどが掛けられていた。
正面には高さが70センチ、奥行き50センチ、長さが2メートルの机が2台横に並べられていた。
机の上には60センチ幅で4メートルの鏡が壁に取り付けられていた。椅子は8脚だったけど、譲り合えば11人が全員、化粧できそうである。
化粧室に入って右手、鏡の背面には、高さ1・8メートル、幅30センチ、奥行き50センチの濃いグレーのロッカーあった。ロッカーは11個あり、ネームホルダーには、11人の名前が書かれていた。
化粧室の右奥には引き戸があり、開けると、トイレとシャワールームの隣には脱衣所があった。
引き戸を開けた右手には、90センチ程のローカがあり、そこから8個ある個室に入れるようになっていた。控室からも台所の横の引き戸を開けるとローカに出ることが出来る。
ローカの向こうには、事務所兼フロントがあり、非常べルもあるが、何かあるとすぐに明が走って行けるようになっている。
女性の身に危険なことはあってはならないが、何が起こるか解らないのがこの商売である。
気持ちよく働いて貰うためにも、安心して仕事をして貰う環境を作ることが店側の仕事である。
人を見かけで、判断する理由ではないが酒に酔っている人や、フロントで対応したときに、動向がおかしい人。あと暴力団風の人は、角を立てないように断るようにしている。
明は自分が女性の立場でこの人は有りか,無しかを判断基準にしている。
これも女性に気持ちよく働いて貰うための常識である。
4000円を得るために、女性スタッフを失ったら、あほくさい。
「女性スタッフを嫌な思いから守る。」が安心して仕事してもらう為の、一丁目一番地だと明と良男は思っていた。
化粧室に入ると女性たちは「素敵。」と声を上げた。
先ほどの控室は、3・6メートル×4・5メートル。
化粧室は5・4メートル×4・5メートルのまっさらな部屋である。
控室に年配の女性11人が椅子に座ると、畳10畳ほどの部屋は狭く感じたが、畳15弱の化粧室は、11人いても狭くはなかった。
化粧室は真新しい壁に、床暖房が備え付けられている床。光っているスチール製のロッカーに、クローゼットに掛けられた、色とりどりの衣装。それに鏡の前に置かれている、たくさんの化粧品。ここには女性達のすべての武器がそろっていた。
ここで明が言った。
「みなさんちよっと聞いてください。」
「こちらが化粧室になります。」
「出勤すると先ほどの控室でタイムカードを押してください。そしてこちらの部屋で、クローゼットでこちらの指示がなければ衣装を選んでください。ただここからお客さんの指名が欲しければ、男が喜ぶような衣装を選んでください。そうすればあなたの人気があがり、指名が増え、給料に跳ね返ってきます。あなた達に高い給料が払えれば、払うほど、店の借金が減って行きますので、お客様に誠実に向き合ってください。お客さまのかゆい所に手が届く。お客様を喜ばす。これが私達の商売のもっとうです。」
「ちょっといいですか?どのような衣装がお客様が喜ぶんですか?」とまりが明に聞いた。
「簡単に言えば、刺激的なもの。露出の多いもの。パンツが見えるもの。ボインが見えるもの。身体の線が出るもの。セクターなもの。誘惑するもの。かっこいいもの。透けているもの。あとそのお客様個人の好みですね。」と明が言った。
「刺激的なものは、なんとなく解りますが、個人の好みは?と言われると・・・。」とまりが言うと。
「それをあなたが見定めるのです。どうすれば客が喜ぶか?。あなたがこういうふうな衣装を着て、どのような振る舞いをすれば、客が満足するかを考えて欲しい。これはここにいるすべての女性スタッフに考えて欲しいことです。女性スタッフみんなが客を満足させることが出来れば、出来るほど客が多く店は潤い。あなた達に見返りがあります。」と明が答えた。
「すいません。はっきり言えば、セーラー服を着て、サービスすればいいのですか?」とちえこが聞いた。
「いいですね。セーラー服のおねえちゃんにそんなことしてもらったら最高ですね。男の願望だ。」と明が手をたたきながら言った。
「私からのお願いを言わしてもらえれば、胸元の三角を取って、谷間を見せ、ミニスカートなら最高ですね。」と明が言った。
女性たちは口々に「エッチや」「いやらしい」「変態」と言ったが、この女性達は60才を超えているのであるが、頭の中では女の子になっていた。
「この店も求めているのはそこなんですよ。金を出してでも見たいもの。金を出してでもやって欲しいこと。」をサービスするのが、あなた達の仕事ですと明が言った。
「身体の線が写るニットミニ?」幸子が聞くと。
「いいですね。目が覚めますね。バン・キュー・バンでしょう。男は喜びますね。」明は親指を立てて「いいね。」と言う。
「ナース服?」とジュンが聞くと。
「私はミニスカートの看護婦さんに病気の時に介抱して欲しい。そんな病院に入院したい。」と明が言った。
「メイド服?」とさくらが聞くと。
「いいですよ。お客さんの中にも好きな人がいますよ。私も何回もメイド喫茶に行ったことありますし、かわいい女性にお帰りなさい御主人様と言われたい。」と明は親指を立てる。。
「タイトスカートで網タイツ?」とラブが聞くと。
「いいですね。胸元の開いた大きめの服で、前かがみになって、乳房が見え、お尻のラインがと・・・。想像するだけでエッチですね。欲を言えばガーターベルトが少しでも見えれば100点です。」と親指を立てた。
「スケスケのネグリジェで、ブラジャーとパンツが透けているのはありですか?」とあいが聞くと、
「いいですね。そういう男性を誘惑するような衣装は最高にいいですね。ただ、残念ながらスケスケのネグリジェは用意していませんね。」と明が言った。
「新婚の時は持っていたんやけど。」とあいが言うと、
「あんたそんなネグリジェ持ってたん?」と隣にいたゆかりが聞いた。
「新婚の時はラブラブでしょう!」とあいがゆかりに言った。
「旦那も直帰で帰ってくるし、夜になるとそわそわしていた。」あいはゆかりに友達のようにしゃべっていた。
「あのころは初夜の時はスケスケのネグリジェを着て旦那と初めての夜を過ごすもんやと思っていた。みんなも着ませんでした?カーテンのレースみたいなやつ。」と言うとあゆみとさちこが笑っていた。
「要はワクワクですよね。」マネージャーとあいが聞くと。
「そうですね。手を変え、品を変え、この店に来るようにすれば100点です。」と明が言った。
「あとどうするかは、みなさんの長年の経験と知識で、男の人をこの店に来るように、いっしょに、考えて欲しい。」
「みなさんも今までも話を聞いてどうすればお客を喜ばすことが出来るか?イメージ出来たと思います。」
「それは色仕掛けでもいいし、大阪のおばちゃんなら話術でもいいです。店に来てもらったらこちらの勝ちです。常連客になってもらうように、頑張ってください。」と明が笑いながらいった。
「おばちゃんに誘惑される男ってあほやね。」とあいが隣にいてるゆかりに言った。
「こんにちは。」と言って、二人の30過ぎ位の女性が化粧室に入って来た。
「こちらは美しい化粧のやり方を教えてくれる、ビューティーレディの優子さんと知子さんです。商店街にある浪花屋さんのスタッフです。今日は皆さんをより美しくするための化粧の仕方を教えてくれます。」と明が言った。
この店を作ると決まった時に、良男は明にこの商店街の中で使えるものがあれば、出来るだけ、商店街を利用してほしいと言っていた。長年、商店街で頑張っている仲間なんで、少しは売り上げに協力して行きたい。欲しい物があれば、地元優先ということで浪花屋さんから仕入れることになった。浪花屋さんも良男の気持ちが解っているので、化粧品の仕入れ値は勉強してくれていた。持ちつ持たれずや。仲ようやれれば良い。又、助けてくれる時もあるやろと良男は思っていた。
背の高い優子さんが11人を鏡の前に座らせた。
「まずはベースメイクです。肌を整えることです。これが最も重要な工程です。肌を均一に整えることで、そのあとの色が映えます。」
「洗顔・保湿 化粧水や乳液で肌を整えます。」
「日焼け止め・下地 化粧崩れを防ぎ、肌の凹凸を整える化粧下地を顔全体にうすくのばす。」
「ファンデーション 顔の中心から外側に向かってなじませます。」
「フェイスパウダー 最後にテカリを抑える粉をのせるとマスク崩れなどを防げます。」
「次はアイブロウ(眉毛) 眉毛は顔の印象を左右する重要なパーツです。」
「アイブロウペンシル 毛が足りない部分を1本ずつ描き足します。」
「パウダー 全体の色味をふんわりと整えます。眉頭は薄く、眉尻に向かって濃くすると自然です。」
「次はアイメイク 目元です。」
「アイシャドウ 明るい色をアイホール全体に、中間色を二重幅に、濃い色を目のキワにのせるが基本です。」
「アイライン まつ毛の隙間を埋めるように細く引きます。」
「マスカラ ビューラーでまつ毛を上げた後、根元からジグザグに動かしながら塗ります。」
「次はチーク 頬ですね。」
「ニコッと笑った時に一番高くなる位置から耳に向かって軽くぼかします。血色感を出すことで、明るい印象になります。」
「次はリップ 口元です。」
「口紅・グロス 唇の中央から外側に向かって塗り広げます。」
「基本はこういう事になります。ごめんなさいね。解りきったことから説明して。でも多いのよ。基本を間違っている人が多いのよ。」と解りやすく、教えてくれた。
「私の化粧の仕方なんて、高校の卒業式前にホームルームの時間に教えてもらっただけよ。それ以外教えてもらった事はなかった。その後、友達同士で口紅の塗り方や、ファンデーションの使い方、アイラインの入れ方を話したけど、私らの時代は学校へ化粧して行くと停学になったから、誰もやってなかった。化粧の知らない者同士が知らないままに学校へ来たビューラーレディの話を聞いても理解できないもの同士が話をするんやからそれは無理やね。」とさくらが後ろで立っている者同士のさちこに言った。
するとさちこは、
「私なんか化粧の先生は母親よ。まず、ファンデーションを顔に塗って、目にアイラインを入れて、頬紅塗って、口紅ははみ出さない様に塗る。これだけよ。化粧品は塗ったら綺麗に見えるやて。」と言った。
その頃は彼女らにとって、まだそんなに化粧は必要とされていなかったかもしれない。
「基本を踏まえて美人に見えるメイクの秘訣を次に説明します。」とビューティーレディの優子さんがみんなの顔を見ながら言った。
「美人に見えるメイクの秘訣は、ツヤ感のある薄付きベース、平行眉、目元・口元の引き締めの3点です。」
「コントロールカラーで肌悩みを補正し、厚塗りを避けて素肌感を活かすのがポイント。眉はふんわり描き。アイラインはまつ毛の隙間を埋めて自然な華やかさを演出してください。」
「美人顔をつくる具体的なメイク方法を説明します。」
「ベースメイク ツヤと透明感。」
「一つ目は、コントロールカラー(ラベンダーやピンク)でくすみを飛ばし、つやが出る下地を使用する」
「二つ目は、ファンデーションは薄く塗る。顔の中心から外側に伸ばし、厚塗りはNG。気になる部分のみコンシーラーでカバーする。」
「仕上げにハイライトをツヤ出したい箇所(鼻筋、Cドーン)にいれ、立体感を出す。」
「眉メイク 平行眉で洗練された印象。」
「一つ目にパウダーアイブロウを使用し、眉頭から眉尻までふんわりと描く。」
「二つ目は眉の輪郭はしっかり描かず、ぼかしてナチュラルにする。眉マスカラで毛流れを整える。」
「眉山は少し高めに設定すると、立体感が出る。」
「アイメイク ナチュラルな立体感。」
「一つ目にアイシャドウはベージュや淡いブラウン系を使用し、目元を自然な陰影をつける。」
「二つ目にアイラインは黒かダークブラウンのペンシルで、まつ毛の隙間を埋めるように細く引く。」
「最後にマスカラは上下のまつ毛に軽く塗布し、ぱっちりした目元に。」
「リップ・チーク 血色感とバランス」
「一つ目にリップはツヤ系を選び、ふっくらとした唇に見せる。」
「二つ目はチークは肌馴染みの良いオレンジやピンク系を、頬の高い位置から斜め上に向かってふんわり入れます。どうです。出来ましたか?」
「これらのポイントを押さえることで、大人っぽい綺麗系の印象に近づけます。あとは試行錯誤して自分に合ったお化粧を見つけてください。」
彼女たちが帰った後と、
「美人に見える化粧は解りましたか?」
「いっぺんには行かないと思いますので、ぼちぼちでいいので自分の物にして下さい。」
「予定より時間がかかりましたので今日はここまでとします。」
「明日は着替えて化粧をして、3時にホールに集まってください。」
「衣装は各々のロッカーに掛けて置きます。あと、オープンの時には何があるか解りませんので、着替えを用意して置いてください。」と言って、5000円の入った封筒をみんなに渡した。
時計を見ると午後5時を回っていて、外は暗かった。




