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11章 人生を楽しむ

 最近、彼女達があることに気が付いた。

 それは今まで、店に出勤する前に、仲間内でランチを食べて、喫茶店でおしゃべりした後、出勤するスタイルであった。週に2,3回ランチをした。それはそれで楽しいけれど、服を選んで、時間を合わせ、店を選び、周りにお客がいないかを確認した後でないと話をすることは出来ない。それに決して美味しいとは言えないランチに2,3千円のお金を出すことに、もったいないと思っていた。

 それなら十二時過ぎに、スーパーの惣菜、200円程度の物を2個ほど持って出勤すれば、5人集まれば惣菜10個になる。長机に惣菜10個乗せて、周りを囲めば立食パーティーである。仲間と楽しく食事ができる。服を選ばなくていいし、時間も決めなくていい。店選びもないし。周りに気の使う人がいないので、気を使わなくていい。何よりここでは惣菜2個分のお金で腹一杯食べられるし、好きなだけしゃべれる。これはおばちゃんたちに取って納得の値段であった。

 そのことに気が付いたおばちゃん達の出勤時間がだんだん早くなった。

 みんなと会いたいから、少しでもしゃべりたいから、営業中はどうしても決まった時間が取れないので、ゆっくりしゃべることが出来ない。勤務後も上がりの時間が人によって違うので、合わすことは難しい。それにおばちゃんは朝は早いが、夜は苦手てある。

 それでどうしても、みんなと集まれる時間は営業前になる。3時のオープンの用意さえできていればおもっきりしゃべれる。今までお金を節約することだけを考え、家でじっとしていたが、金銭的な余裕が少しできたことによって、今、朝起きて、店に来ることが生きがいになっていた。控室はおたっしゃクラブになっていた。

「さゆりさん、彼氏とどこまでいったん?」あいが直球で聞いてくる。

 おばちゃんはこういう話が大好きである。

「何もしてません。」とさゆりは事実を言った。

 付き合って数回デートをしたがキスはおろか、手も握ったことはなかった。さゆりは男の人が年を取ると性欲がなくなり、そのような欲求がないものと思っていた。さゆり自身も健太郎とドライブして、一緒にいるだけで満足した。だからこれが普通だと思っていた。

「ええ年やのに、ぶりっこせんでもええやん。」とあいが言うと、

「手も握ったことないし、キスもしたことはない。」と真顔で言うと、

「でもちんちんなめてるでな。」とジュンにいわれた。

 さゆりは何も言えなかった。

 長机の上には薄皮まんじゅうが置かれていた。

 机の周りにはピンクレディーのラブに、セーラームーンのあいとオフショルダーのピンクのミニのワンピースを着ているさゆりに、伝説のスカイマークのCA制服もどきのジュンに、青いバドガールのあけみが折りたたみのパイプ椅子で長机を囲んで、一番楽しい時間を過ごしていた。これがあるからやめられない。

「ラブさん、串本へ行ってきたん?」とさゆりが聞いた。

 この薄皮まんじゅうは紀南地方では有名であった。和歌山出身のさゆりにとっては懐かしかった。

「土曜日に休みをもらって、金曜の勤務後、神倉神社へ車で走った。朝一でないと神倉神社の538段の石の階段上るの大変じゃん。いつも恐々上ってる。それから熊野速玉大社に行って、熊野那智大社と青岸渡寺を土曜日に参拝して串本の道の駅で車中泊して、日曜日に熊野本宮大社に行って帰って来た。まだ寒いから凍結すると怖いから、どうしても南の海岸線になるのよ。」とラブが言った。

 ラブの趣味はソロキャンプである。でもテントは張らない。めんどくさいから。彼女の箱バンの後部打席は取られて、畳が引かれてフラットになっている。車には寝袋と女性でも持てる小型のインバーターの発電機、カセットコンロ、なべ、米、包丁、食料調達のための釣竿と着替えの入ったスーツケースが積まれていた。米が炊ければ、その土地、土地の名物を地元の人に聞いて、スーパーで買う。又、海が近ければ釣りをし、すぐに釣り人と友達になり、楽しい語らいをする。ラブはどこでも友達が出来る。

「ラブさん活動的ね。」とあいが言うと。

「私、義理母の介護もしたし。旦那も見取ったし。息子も結婚した。もう私の仕事は終わったやん。これからは自分の好きなように生きようと決めたの。私旅行が好きなの。気の向くままにおんぼろ車で行くの。私の好きなところへ。年も60超えているのよ。身体が動くのも後10年がいいところ。後の人生自分のために使いたい。だから今の私が一番幸せ。」とラブは淡々と言った。

「そうよ。ずっと苦労してきたんだから、最後ぐらい好きなことを思いっきりしたい。だから私も、手芸教室に習い始めたの。以前は通っていたけど生活が苦しくなって辞めていた。この店に勤めるようになって、少し余裕ができたから材料も買えるようになった。作品は自分の考えたことを形にすることが面白く、完成したときの達成感は最高にうれしい。世界でたった一つのオリジナル作品を自分の手で作り出せたことに喜びを感じる。人に見せて誉めてもらったり、プレゼントして喜んでもらった時は最高にうれしい。今ね、スニカーに刺し子しているの。」とあいが笑いながら言った。

「ジュンさんはめめ推しやもんね。」とあいが言うと、

「先月京セラドームへ行ってきました。目黒連君と目が合って、「バキュン」と私のハートが打たれたの。楽しかった。娘がスノーマンの大ファンで、家でじっとしているのは身体に良くないから、コンサートに行こうと誘ってくれたのよ。始めはそんなにノリ気ではなかったんやけど、プラチナチケット当たったから行こうと言われていったのよ。チケットまで用意してくれて、断るの悪いから行ったのよ。そしたら私の上を気球で飛んだ時に、目が合ったのよ。私の推しはめめ。コンサートのことはあまり覚えてないけど、迫力あるのある音楽の中で、めめの歌やダンスに目が離せなくなったの。めめと一緒にいる時間は生きる楽しみと希望を与えてくれた。嬉しくて帰りに娘に二人分のチケット代を渡たすと、お母さん又行こねと言われた。娘には仕事の事はまだ言っていない。」とジュンは言った。

「あけみさんは?」とあいが聞くと、

「私も先月にさちこさんとかにとアワビとホタテの食べ放題のバスツアーに行ってきた。正月すぎの平日のバスツアーやから安かったよ。」あけみが言うと、

「いくら?」あいが間髪入れずに言った。

「10000円。お手頃でしょ。さちこさんと何か美味しい物食べたいねと話をしたら、カニを食べようになって、平日二人で休みを合わせて、バスツアーで湯村行ったの。日曜日なら高いし、人も一杯でしょ。私、ぎゅうぎゅうのバスは苦手なので空いていたのは良かった。のんびりさちこさんとバスに揺られながら世間話をした。ほとんど寝ていたけどね。おいしいかに食べて、アワビ食べて、ホタテ食べた。美味しかった。3月どこへ行こうとさちこさんと計画たててんねん。」とあけみが言うと、

 すぐに、

「次、どこへ行くんと?」とあいが聞きに来る。

「まだ決めていないけど、桜見るか?イチゴ食べるかやね。」とあけみが言った。

 するとラブが、

「イチゴのパックを持って、吉野へ行ったらええやん。」といった。

「あゆみさんの趣味は?」とあいが聞くと、

「あゆみさんは年が明けると、今年の優勝はタイガース。タイガースよ。言ってる。今年は外野席の年間予約席を買うと言っていたけど、レフトスタンドにしか空きはないと怒っていた。あゆみさんにこの仕事していると、年間予約席があっても試合を見に行けないやんと言えば、六甲おろしだけ歌えれば良いといった。今も週末は近所の阪神ファンの居酒屋で六甲おろしを歌ってるんやて。すきやね。」とラブが言った。

「さくらさんとゆかりさんはやっぱり一人はさみしいやんと言って、婚活パーティに頑張ってる。一応参加資格は男性は50才から70才になっているんやけど、五〇才はないけど七〇才以上はあると言っていた。

「あんた元気かと聞かれたので、健康です。」と答えると、

「わしの嫁になれへんか?」と言われた。

「私はあなたを介護をするために結婚するんじゃない。意味間違っているおじちゃんがいる。それも上から目線で言われる。最悪や。」とさくらさんが言っていた。

 でも二人は星の王子にいつかは会えると思っている。

「まりさんは愛犬のハッピーがすべてやの。その犬な病気やねん。大学病院でがんの手術して、100万円かかったって。凄くない、犬に100万円掛けるなんて。年金60000円で、やちん30000円でよ。術後通院しないといけないんよ。犬に国民健康はないから10割負担よ。大変よ。普通だったら愛犬の寿命が尽きるまで見て、新しい元気な犬を飼うという判断はなかったんかな?自分の生活まであぶないやん。」とあいが言った。

「それは無理よ。まりさん、ハッピーとずっと二人暮らしでしょ。ハッピーは犬じゃないもん。子どもよ。子どもだから、出来るだけことはなんでもしようと思うのよ。自分の子どもだから冷静な判断は出来なくなっている。」ラブが言った。

「まりさん、それで良かったらええやん。まりさんにとってハッピーの変わりはないのよ。とさゆりがいった。

「そんなもんなんかな?私、犬飼ったことないからわかんない。」とあいが言った。

 スピーカーから明の声で、1号室にラブさん、2号室にあいさん、3号室にさゆりさん、4号室にあゆみさん、5号室にさちこさんで用意するように指示があった。また、今日も始まる。


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