第99話 見舞いの品
王弥は劉聡と別れた後、兵糧を補填すべく轘轅関を出て東南の穎川郡に進出した。
しかし穎川郡には乞活の李惲と薄盛がおり、王弥は穎川の東端にある新汲で両将を屠ろうとしたが大敗を喫してしまった。
「此度の戦、貴殿にしてはらしくない戦いぶりであったな」
「................」
敗残兵をかき集めた曹嶷は王弥の元に戻ってくると項垂れていた主にそう吐いた。
普段であれば何かしら言い返す王弥もこの時ばかりは口をつぐんでいた。
「いつもであれば貴殿と騎兵が先行して敵陣を切り裂き、後から歩兵が傷口を押し広げて突き崩すはず それが此度は騎兵を動かさず、歩兵を前面に立たせて騎兵は下げてしまった..............」
「――――――ッ すまねぇな曹嶷 オレは今頭が全然まわらねぇ 本来であればオレは友として元海の元にいかなくちゃならねぇ なのに............こんな場所で」
轘轅関から北上して平陽に退こうとしていた彼らだったが、大将軍・司馬晏の軍勢に阻まれてしまい、南に退くしか他なかった。
「王弥将軍、ここはひとまず穎川にて英気を養われては如何か? 今の状況で兵を指揮して北に進むなど無理にございます」
もう1人の参謀である張嵩が王弥にそう進言する。
「だがこの地に長居すれば再び乞活共に襲われるぞ」
「乞活など所詮はイナゴの群れに過ぎません。王弥将軍は洛陽や轘轅関で連戦して疲弊していた為に敗れたのです。これが万全の態勢であったならば、李惲や薄盛の如き虫ケラなど今頃、屍と化していたでしょう」
「そうだな オレは疲れているようだ...........だがどこへ退けばよい? この新汲に留まっていては危うかろう」
「調べました処、ここから西に襄城という地があるのですが、かの地は并州からの避難民と原住民が対立しており、避難民はこぞって漢への帰順を望んでいると聞き及んでおります。故に漢将たる王弥将軍が旗を掲げて入城されれば、城は簡単に落ちるでしょう」
「うむ」
王弥は直ぐさま曹嶷が集めてきた敗残兵2千と共に新汲から撤退、襄城に入城したのだった。
そして張嵩の言うとおり王弥が襄城に入ると避難民は自分達を虐げてきた原住民や官吏を殺戮して投降した。
更にこれだけでは終わらず、汝南、南陽、河南にいた避難民までも王弥に投降して漢の支配下に入ったのだ。
「ふふふ ガハハッ!! 我が友よ、これで漢の民は大いに増えたぞ 生憎会うことは叶わぬが、この民を以て見舞いとさせてもらうぞォ!!」
すっかり覇気を取り戻した王弥は襄城の壁に登って天に向かい豹の如く咆哮した。




