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第92話 洛陽の戦い 後篇

洛陽(らくよう)西明門(せいめいもん)付近――――――



「西明門はこの呼延顥(こえんこう)が落としたぞ!! テメェら皇帝の首はすぐそこだァ このまま一気に攻め込むぞ!!」



 呼延顥は西明門を呼延翼(こえんよく)に任せて自らは先鋒の騎兵2千を率いて城内に侵攻していった。



――――――これで我らの勝ちだ。



 攻め込んだ漢兵の皆がそう思っていた。当然ながら呼延顥も勝利を信じて疑わなかった。



しかしここでちょっとした誤算が生じた..........



 呼延顥は太極殿(たいきょくでん)がある南宮に攻め寄せたものの、直ぐに崩せると思っていた晋軍が頑強な抵抗をみせたのだ。

 更に北宮からも晋軍がやって来た為、先鋒は北と東から攻撃を受ける格好となってしまった。


 南宮には “東海(とうかい)“ と描かれた牙旗が翻り、北宮から駆けつけてきた晋軍は “()“ と描かれた牙旗を掲げていた。



(いよいよ敵の主力が出っ張ってきたか)



 次々と北宮から銅駝大街(どうだだいがい)を通って押し寄せてくる晋兵に呼延顥は馬上で冷や汗をかいていた。



南宮――――――


 皇帝・司馬熾(しばし)を南宮の太極殿から北宮に避難させた後、司馬越(しばえつ)は封国の東海から連れてきた私兵3千を防戦に当たらせていた。


 私兵は黒い鎧に白いマントを羽織り顔も面頬によって隠れていることから篝火で照らされた彼らの姿は威圧感が凄まじかった。

 更に皆がエリートで練度MAXという精鋭の中の精鋭であり漢軍が簡単に突き崩せるような相手ではなかった。



そんな中、1人の男が司馬越の前に現れた...........



「...........東海王 あの屠各(とかく)の将、吾が狩る―――――」



 他の兵と同じく黒い鎧に面頬、白いマントを着けているが、一点違う箇所と云えば兜の上から馬の尾の如く白い房が腰まで垂れていることだ。

 そして両腰には値千金はするだろう栁葉刀(りゅうようとう)をそれぞれ佩いていた。



北宮純(ほくきゅうじゅん)か...............昨年、洛陽にて王弥(おうび)河東(かとう)にて劉聡(りゅうそう)を破ったのも其方であったな 此度もやってくれるというのか」


「....................」


司馬越の問いに北宮純は無言で頷く。


 北宮純と精兵千人は闇夜に紛れて南宮の裏手から抜け出すと銅駝大街で立ち往生していた漢軍の先鋒に襲いかかった。



「吾、単騎で屠各の将を狙う...............ッ」



 栁葉刀を両手に持ち、手綱を胴に括りつけた北宮純は疾風の如く駆け抜けて敵を斬っていく。

 夜目がきく北宮純は正確に首や腕を狙い、次々と漢兵を戦闘不能に追いやっていった。



「――――――ッ ここにきて夜襲とは!!」



 呼延顥は槍を手に戦うも、乱戦となっては槍など使い物にならない。

 そして不幸にも彼は北宮純を間合いに入れてしまったのである。



「屠各の将、見つけたり――――――」



ドカッ



呼延顥は声を上げる間もなく斬り殺された。



 総大将を失った先鋒は瓦解して西明門に逃走を開始。

 その西明門すら守将・呼延翼は司馬越が放った刺客(漢兵を装った晋兵)によって暗殺された事によって奪い返されてしまったのである。


 この有様を見た劉聡(りゅうそう)は全軍に洛陽の南・洛水(らくすい)の付近まで後退を命じたのだった。

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