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第78話 新たな命

 演武場での出来事の後、劉景(りゅうけい)は態度を改めた。遠駆けはパタリと止め将兵と喧嘩することも無くなり、崔岳(さいがく)から学問を学ぶことで教養は勿論、自制を身につけていった。



平陽(へいよう)・崔岳邸――――――


「なに、汝陰王(じょいんおう)に見初められただと?」


“相談したいことがある“ そう崔岳からいわれた俺は彼女の邸を訪ねていた。

 何事かと思えばどうやら劉景から言い寄られたのだという..............


「うむ 私も最初は汝陰王の戯言かと思っていたのだが毎日のように豪華な反物や調度品が贈られてきてな...........どうやら本心とみえる」


(確かに質素倹約な崔岳にしては豪華な代物が増えたなという印象だったが、そういう事情があったのか)


「汝陰王は齢20前半 対して崔岳は30前半............か」


「君、少し失礼なことを考えてないかね?」


「いや気のせいだ。それで崔岳はどうしたいんだ? 汝陰王の誘いに乗るか、断るのか?」


その問いに崔岳は俯いた。


「無論、この歳で異性として見てくれるのは嬉しい限りだ。然れど汝陰王はまだ年若 此度の事は若さ故の勢いであろう」


――――――とは言ってるが、崔岳も同年代の女性と比べれば全然若い。20代だといっても通用するレベルではある。


 因みに朝鮮(ちょうせん)管涔山(かんしんざん)にいた頃、何度か誤って彼女の着替えや水浴びの最中に突撃してしまったことがある。


 白く引き締まった体躯でありながら、暴力的なまでに豊満な胸部と臀部。腰まである艶やかな黒髪に切れ長の瞳............これ程の美女をモノにして抱きたいと思うのは男なら普通の感性だろう。


 事実この俺も幾度となく娶りたいと思った。だが崔岳は俺にとって恩人であり師でもある。そのような劣情を彼女に向けるのは礼を失すると感じ諦めていたのだった。


この時も密かに劣情が込み上げてはいたが、鋼の意思で押し殺していた。


「断るならしっかり断った方がいいぞ その方が相手の為だ」


「............うむ、だがもし仮に私が汝陰王と結ばれた場合、君はどう思うか?」


「どう思うとは?」


「そ、その今まで通り接してもらえるだろうかと...........」


 半ば顔を赤らめながらそういう崔岳に、俺は複雑な心情ながらも “もちろん“ と顔を縦に振るのだった。


 後日、劉景と崔岳は婚姻に至り翌年には待望の男子が誕生し、名は「劉岳(りゅうがく)」と名付けられた。


 そして俺と卜翠(ぼくすい)との間にも男子が生まれ、名は「劉倹(りゅうけん)」と名付けた。

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