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第77話 劉曜と劉景

平陽(へいよう)演武場(えんぶじょう)――――――



「こうも次々と問題を起こしてくれるたァ その度胸、認めてやってもいいぜ 汝陰王(じょいんおう)よ」



案の定、劉景(りゅうけい)は我が軍に入ってきてから僅か2日目でやらかした。



 彼には遠駆けをする癖があるらしく、早朝から居なくなって邸に帰ってくるのは夜中であった。

 流石にこの有様では軍務に支障がでることから曹恂(そうじゅん)が叱ったのだが叱り方不味かったのか、劉景は大怒して剣を抜き2人は殺し合いに発展。幸い騒ぎを聞きつけた兵士10人が止めに入って事無きを得た。



「遠駆けだけでそんな怒るなよ アンタもこの景と同じく王ならば寛大にいこうぜ」


お互い完全武装して演武場の中央に立っていた。


 騒動の後、俺は劉景をしばく..........躾けるべく彼を演武場に呼び出したのだ。


「そうはいかねぇよ 今までは遊軍のような立ち位置で好き勝手出来たかもしれねぇが、今は俺の麾下に入ったんだ。今まで通りにされちゃ困るんだよ」


この2日間、彼は遠駆けのみならず酒乱、喧嘩、略奪、新兵いじめ、婦女への陵辱と問題行為が多すぎたのだ。


「ふぅ 堅苦しいのは嫌いでね。乱世には乱世の生き方ってのがある。景はそれをやっているだけのこと。人だって所詮は獣 それが百家の思想やらで縛られているに過ぎない そうは思わないか始安王(しあんおう)?」



(............この野郎 やはり力尽くで分からせる他ないな)



「テメェみたいな考えが乱世を加速させんだよ馬鹿野郎!!」



偃月刀を片手に右足を踏み込むと一気に加速。



「――――――ッ!」



劉景の眼前にまで迫ると大きく横に一閃、しかし奴は間一髪のところでバックステップを踏んで大きく跳ねるようにして退いた。


「へぇ~ 見た目に似合わず鋭い一撃だなァ」


そういってセラセラと笑う劉景だったが、右の肩鎧には僅かに亀裂が入っていた。



(切っ先が僅かに触れた程度か..............)



スチャ



「................俺は宗室の爪牙(そうが)。如何なる時でもこの偃月刀を振るえるよう鍛錬してるんだ。侮られては困る!!」


「ふ~ん、先の戦いで無謀にも突っ込んでいって負傷した者の言葉とは思えねぇ なァ!!」


戟を前に繰り出して放たれるは一撃必殺の突き。


ガキンッ!!


戟の()と偃月刀の刃が激しくぶつかり火花を散らす。



「――――――うッ、オラッァ!!」



“このままじゃ押し負ける“ 戟の重みからそう感じ柄を持つ力をわざと弱める。すると劉景は案の定、前につんのめった。


すかさず偃月刀の腹で戟を薙ぎ払うと向きを変えて刀背で劉景の腹部に打撃を与えた。


その際、力の入れ方を間違えたらしく劉景は演武場の端に飛ばされて柱に衝突した。



「ごほッ! ごほッ..............ぺッ」



 頑丈というべきか、打たれ強いというべきか................劉景は衝突後に床に崩れ落ちるも、数秒でフラフラしながらも立ち上がった。

 そして口に溜まった血を吐き捨てると俺の顔を真っ直ぐ睨んでくる。



「これで少しは殺された民の痛みが分かっただろう? 汝陰王は乱世の申し子、然れど漢の将でもある。陛下は仁と徳を以て天下を治めようとしてる。陛下の将である以上、俺らも仁と徳を以て事に当たらなければ矛盾が生じるだろ..............その気性を直さないというのなら俺が今、ここでお前を殺す」


眼光鋭く脅しをかけると劉景は睨むのを止めて口元を緩める。


「フッ、ハハハ! 馬鹿みてぇに真っ直ぐだな。羨ましいもんだよ」


「.................」


「うむ 分かった。この気性は直すとしよう..............だがこの今受けた傷は返さないとケリがつかないな」  


そういった刹那、劉景は手にしていた戟を薙ぎ払った。



「――――――ッ!!」



ピリッ



戟の切っ先が俺の右腹を切り裂く。



鋭い痛みと血が体外に流れ出るも幸い傷は浅いと感じた。



 当然ここから第2戦が始まったことは云うまでもないだろう。


 結局、夜明けまで激戦を繰り広げ、なかなか戻ってこない主を心配して駆けつけてきた崔岳(さいがく)曹恂(そうじゅん)趙固(ちょうこ)によって止められるまで続いたのだった。

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