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第75話 延津の戦い

 309年3月、滅晋(めつしん)大将軍(だいしょうぐん)大都督(だいととく)劉景(りゅうけい)は総勢5万の兵力を以て黎陽(れいよう)を強襲して攻め落とすと、敗走する晋将・王堪(おうたん)前鋒都督(ぜんぽうととく)朱誕(しゅたん)と副都督の趙固(ちょうこ)に追わせた。


然れど追撃戦は手こずりまくった。


 王堪は逃げ脚が早く、民を盾に逃亡を続けては行く先々で失った兵力を補填。追撃してくる趙固や朱誕を奇襲したりと大立ち回りをみせていたのだった。



延津(えんしん)――――――


「...............あのクソ野郎ッ どれだけ手こずらせれぱ気が済むんだッ!!」


劉景は延津の本陣にて駐屯していたが、味方の苦戦ぶりを耳にするや怒気を露わにした。


「大都督、王堪は遺棄された防塁、村落を使って巧みに我が軍の攻撃をかわしております。ここは非道でありますが延津から南の地域を灰にすべきかと。籠もれる場所が無くなれば王堪も抗戦を諦めるでしょう」


朱誕は跪きながらそう進言してくる。


「確かにアリだな............趙固はどう思う?」


「私も前鋒都督の策に賛成だ。だがその後の民の慰撫が面倒だな...........村を失った者は私達を恨んで晋に与するでしょうし」


趙固は朱誕の策に眉をひそめる。


そんな趙固を余所に劉景は少し考えるとある判断を下す。



――――――なら面倒なことは全て消しちゃえばいいじゃん!!



 この頃の劉景は将としては勇猛で頼りになる存在だったが、幼子が虫の脚をもいだり、アリの巣に熱湯を注ぎ込むような、純真無垢だからこその残虐性が現れ始めていた。



そして「純真無垢の(なた)」は容赦なく罪無き者らに振るわれた。



 延津から主力を南下させた劉景は手当たり次第に放火して略奪を行った。突然、村を灰にされた民は北へ逃げるも追ってきた漢兵に捕らえられ、王堪への見せしめとして黄河に沈められた..............


 肝心の防塁は劉景自らが攻め込み徹底的に破壊と略奪を行うことで王堪軍の士気を削いでいった。そして遂に王堪は食糧も兵も失い劉景の前に跪くに至った。



「おのれ.........夷狄(いてき)のガキにしてやられるとは思いもよらなかったぞ」


「所詮は王氏の貴族様だな。戦い方がお上品なんだよ 勝利の為ならば民さえも殺戮する..............それがこの景のやり方さ」



 縄で縛られた王堪は黄河まで連れてこられると生きたまま沈められた。

 しかし運良く対岸に流れ着いた王堪は縄を解いて北方に逃れたのだった。

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