第40話 喬晞の死
西河郡・東谷関――――――
「やはり簡単には抜かせてくれないか..........」
兵車の上から東谷関を見ていた司馬瑜が呟く。
臨汾や平陽から北進してきた晋軍10万は東谷関の南道に備えとして2万を置き、残り8万は南道を通り抜けて平野に布陣していた。
編成は以下のとおり――――――
大都督・司馬瑜............5千
副都督・司馬虞............1万
前鋒都督・簫叡............5千
平陽太守・宋抽............1万
幽州刺史・石尟.............1万
左将軍・周宋(周良の子)......2万
右将軍・石宇慶(石鮮の子)......2万
前将軍・李惲............1万
後将軍・薄盛............1万
攻撃の中核を担うのは魏郡や趙郡の兵を率いている宋抽と石尟であり、宋抽にいたっては平陽から井闌車や霹靂車を解体して持ち込んでいた。
――――――「進めェ!!」
宋抽の掛け声と共に巨大な2基の井闌車がゆっくりと前に押し出される。
周囲の歩兵も槍を前面に突き出して行軍していく.............
東谷関・喬晞軍――――――
「今こそ介休での汚名を返上する時だァ!! 進めェ!!」
「「「うぉォォォォォォォォ!!!!」」」
喬晞は自ら槍を片手に先鋒2千と共に宋抽軍に突っ込んでいく。
(もはや世継ぎなど残せぬ身..........ならば我の勇姿を後世に残す遺すまでのことよ!!)
「ハァ!!!」
ドカッ!!
露払いと云わんばかりに喬晞軍は暴れまわる。宋抽軍を突破分断しようという腹積もりであった。
しかしそうはさせるかと宋抽軍の隣に陣していた周宋軍が動き始める。
「憎き胡賊め!! 亡き父の恨み晴らしてくれるわ!!」
激情に駆られた周宋は数百騎で宋抽軍の前面に進出すると一直線に伸びている喬晞軍の横腹を突く。
普通ならこれで敵軍は前後に寸断され混乱するはずだが、喬晞軍は乱れることなく寧ろ後方にいた歩騎千人を差し向ける。
カウンター食らわそうとしたら逆襲されたのだ。数的劣勢に周宋軍はずこずこと引き下がることになった。
周宋軍を撤退させた喬晞は開けた傷口を更に拡げるべく強攻に強攻を重ねる。
喬晞軍の兵は返り血を浴びながら武器を振るい、宋抽軍の兵は倒れゆく味方の血吹雪によって紅く染まる。
「退けェ!! 退けぇェ!!」
先に音を上げたのは宋抽軍であった。
戦線を支えきれなくなった宋抽軍は攻城兵器を守りながら後続の司馬虞軍と合流することで軍の壊滅を逃れた。
また喬晞もこれ以上深追いしても大した戦果を得られないと判断するや攻勢を停止、その場に陣を設営して兵を休めるのであった。
そしてその夜――――――
喬晞は宋抽軍が司馬虞と合流したことを知ると自軍の不利を悟った。
「平先、お前は急ぎ劉曜のもとへ奔れ。あの御仁ならお前を大切にしてくれるだろうよ」
「し、将軍はどうなさるのです!?」
「我はもうダメだ。軍を突出させすぎた..........このまま包囲されてすり潰されるだろうな」
「ならぱ包囲される前にお逃げを!! 逃げれば再起も図れましょう!!」
必死に説得を試みる平先に喬晞は童子さながらの笑みをこぼす。
「平先、やっぱり我は普通には戻れねぇみてぇだ。このまま生きながらえたとしても碌な人生にはならないだろうよ。漢王に仕えてから山賊気質が抜けたかと思った矢先に介休でのやらかし...........今度も突撃しすぎて孤軍になっちまった まったく自制が効かない己がイヤになる」
――――――この地を我の墓場としよう
平先と別れの酒を酌み交わした後、喬晞は自分のワガママに長年付き合ってくれた配下をここで死なすのは忍びないと、率いていた将兵を全て後ろに下がらせた。
そして陣にたった1人残った。
「我は元山賊の漢将、喬晞だ!! 手柄を立てたい奴はかかってきやがれェ!!!」
翌未明、宋抽軍6千によって包囲された陣は焼け落ちた。そんな中、喬晞は傷を負いながらも単騎で敵将5人を討ち取った。
しかし数に押され、遂に両脇腹を槍で貫かれて落馬、そのまま首を斬られて亡くなった............
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