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第35話 屯留・長子

305年5月上旬 上党郡(じょうとうぐん)――――――


 壷関(こかん)の守将・司馬瑜(しばゆ)は自ら晋陽(しんよう)に赴くと、主君である東嬴公(とうえいこう)司馬騰(しばとう)に漢軍討伐の許可を要求、そして許可が得られると早速漢軍に奪われていた長子(ちょうし)屯留(とんりゅう)の2城を包囲した。


 2城へ繋がる間道は全て封鎖され、鼠1匹すら入り込むことが出来ない包囲が敷かれた。


 屯留には劉曜(りゅうよう)の配下・曹恂(そうじゅん)が、長子には司馬騰から寝返って漢軍についた乞活(きつかつ)の将軍が籠もっていた。



――――――後詰めのない籠城に勝利はない



 例え離石(りせき)大陵(だいりょう)からの援軍が来たとしても間道を塞がれている為2城に辿り着くことは不可能であった。


「曹恂殿 各城門、奮戦しておりますが限界にございます ここはお退き下され!!」


「馬鹿を申すな!! 私は劉曜の家臣だ 劉曜殿は勇猛な将軍 その家臣が敵に背を向けて逃げれば劉曜殿の顔に泥を塗ることになるんだぞ そもそもこの分厚い包囲を突破出来ると思うておるのか!!」


 曹恂の話している通り、晋軍は屯留を2万の兵力で分厚く囲っており長子との連絡路も断たれている状況にあった。


 そしてこの屯留攻めは前鋒都督(ぜんぽうととく)簫叡(しょうえい)が行っており、前の大陵攻めの失態を挽回すべく猛攻を仕掛けていたのだった.............


「逃げ道は我々がつくります 曹恂殿はそこからお逃げ下され もし貴殿が討ち死にすれば劉曜殿は取り乱しますぞ 主君を悲しませないのも家臣の役目ですぞ」


「............わ、分かった」



屯留・南門――――――


「晋兵を城内に入れるな!! 押し返せェ!!」


 各城門の中で南門は最も激しく攻め立てられていた。何故かといえば簫叡自ら梯子を登り、偃月刀を振るって攻めていたからだった。この行動に晋兵の士気は高まり我先にと南門を攻めていたのだった。


「さぁ 曹恂殿こちらへ」 


「うむ..........」


 血みどろの争いを繰り広げている漢晋の両軍を余所に曹恂とその衛兵らは南門にある食糧庫の床下から城壁下をくぐり抜け、城外に脱出したのだ。


 その後、闇夜に紛れて山林を彷徨いながら上党郡をひたすら西に進み、5日後に大陵へ帰還したのだった。


 将軍がいなくなった屯留では取り残された1万5千の兵が抗戦を諦めて晋軍に投降、更に長子でも将軍が討たれたことによって2万5千もの兵が投降した。


 後日、投降した兵は全員が谷底に突き落とされて生き埋めにされた。何せ晋軍に投降兵を養えるだけの食糧が無かったからであった............

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