第31話 喬晞の処分
西河郡・介休――――――
県令や官吏を血祭りにあげ、多数の首級を得た喬晞はこの大戦果に満足していた。
介休の城外に陣を設営させると兵や民に酒や肉、県令や官吏が貯め込んでいた金銀財宝を分け与えて大宴会を催していたのだった。
「さぁ 飲めや歌え!! 今日は我らの祝勝会だぁ!! アハハ」
自らは美しい官女を両脇に侍らし、爵になみなみと注がれた酒を飲んでいた。
目の前の左右に座していた諸将も美酒を飲み、平時ならば生涯味わうことが無かったであろう美食に酔いしれていた。
「将軍 おめでとうございます これで介休は晋の魔の手から解放されました」
「漢王は此度の戦果をさぞお喜びになるでしょうなァ」
諸将や民はこぞって喬晞を褒め称えた そして喬晞もまたその賛辞を受けて上機嫌な様子であった。
そんなご機嫌な喬晞の元に副将の平先という者が飛び込んでくる。
「宴の最中申し訳ありません 漢王からの使いが陣前に来ております」
「ほぉ もう我の戦果が都に届いていたとは..........早いものだなァ して使いは誰が来たのだ?」
「建武将軍の劉曜殿と太尉の劉宏殿にございます」
「重臣を寄こすとは............恩賞ではなさそうだな のう平先」
「兵も3万おります お二方とも漢王の重臣ですので護衛の為かと思いますが、少し多すぎるような気がします」
「平先 万一に備えておけ」
平先の言葉に喬晞は自身の首を不安げに擦りながらそう言う。
そして――――――
「建武将軍・劉曜にございます」
「太尉・劉宏と申します」
2人は喬晞の前で拱手した。対する喬晞も席から立ち上がり拱手すると左右の諸将や官女を下がらせた。
「さぁ これで人はいなくなったぞ 漢王からの用件を聞こうじゃないか」
すっかり褒美を貰えるものだと思い込んでいた喬晞は嬉々として劉宏の前に平伏する。
「漢王からの命である!! 冠軍将軍は王の心中を忘れ、介休の県令を虐殺し、その妻を我が物にせんとした。天がこの悪行を知ることになれば、喬姓はそちの代で途絶えることだろう よって冠軍将軍の職を解くと共に入牢させる............とのことだ!!」
「な、何故 我が牢に入らなければならないのだ!! 晋の連中を殺すのは罪になるのか!?」
驚愕してわめき散らす喬晞だったが、突如として首筋に走った冷たい感覚に押し黙る。
劉曜が王剣を引き抜いて喬晞の首筋に切っ先を向けていたのだ。
「介休は盆地の入口で城で云う城門にあたる地だ その大事な要地で県令と官吏を虐殺した挙げ句、その妻ら凌辱しようとしたのだ この地が再び晋のモノになったら 貴様はどう責任をとるつもりだ!!」
「再び晋のモノになったら.............だと? そんなの決まってるだろ? 再び兵を率いて潰すまでのこと!!」
喬晞は首筋にあてたれた切っ先を掴むとグッと劉曜に顔を近づかせてそう啖呵切ったのだ。
灼眼を細めて睨む劉曜と真っ向から凄む喬晞..............そんな一触即発の2人を見かねた劉宏が手を叩く。
「喬晞殿も劉曜殿も止めなされ 今日は喧嘩をしに来たのではない これ衛兵、喬晞殿を連れていけ」
直ぐさま衛兵によって引き剥がされると、喬晞はそのまま幕舎の出口まで連れて行かれたのだった。
そして出口で立ち止まり振り返るとこう言い残していった。
「劉曜殿も漢王もそうだが、理想を追い求め過ぎだ。我も投降を呼びかけたが無駄だった..........奴らは我らを獣と呼んで嘲笑いやがった だから頭に血が上って殺戮したまでのこと。 劉姓でない限り、奴らは投降には応じないばかりか馬鹿にしてくる 少しは現実を見てみることだ」
その後、喬晞は官位を剥奪されて離石の地下牢に閉じ込められた。
そして喬晞が率いていた兵は漢軍最古参の将軍にして劉淵の弟である劉欽に預けられたのだった。




