第27話 帰城命令
西河郡・離石――――――
劉曜率いる漢軍が大陵以東の平定に成功した その報せが離石の劉淵の元に届くと、彼は大いに喜んで家臣達に祝いの酒を振る舞った。
「流石はわしの千里駒 ようやりおるわ しかし30前半で、かような大功を立てるとは将来が楽しみでならん」
「いずれは晋を滅ぼす矛となりましょうな」
「漢王様 これで劉氏の未来は安泰ですな!!」
王として日々の重圧に鬱々としていた劉淵もこの時ばかりは気前よく振る舞い、王自ら家臣や客人に酒を注いでまわっていた。
「アハハ 確かにわしと漢の未来は安泰だな ただ1つ心配なのは千里駒の未来よ 彼奴にはまだ妻もなければ子もないのだ..........」
「そ、それは気の毒に」
「..............」
劉淵の言葉に家臣達はそろいも揃って曖昧な返答を見せる。
漢王・劉淵の血筋が途絶えては一大事だが、傍流にあたる劉曜の血筋がどうなろうと家臣達には知ったこっちゃないのだ。
(...........嫁でも探してやるか 彼奴の血筋は必ずや漢の運命を左右するであろう 仮にわしの血筋が途絶えた時、皇統を継ぐのは彼奴の子孫になるやもしれぬからな)
目の前で妖艶な舞を披露している美姫を見つつ、劉淵はそう決心するのだった...........父として、とびっきり良い嫁を見つけてやると――――――
太原郡・大陵――――――
「靳準と申します 此度は漢王のお言葉を伝えに参りました 漢王曰く “軍を束ねて直ちに都へ戻るべし” とのこと」
離石からわざわざ出向いてきた使者は世間話もせずに単刀直入にそういう。
「なに!? 離石に戻れと?」
「左様 漢王様は此度の戦果を殊の外お喜びになり、将軍に是非とも褒賞を受けてほしいとのこと」
「漢王の計らい感謝致します 然れど今は晋賊を追い払ったばかりで日も浅く、再びこの地を犯す可能性もございます 故に城を離れる訳にはいかないでしょう 褒賞は後日、太原を平定後、離石に戻った際に受け取りますと そう漢王様に伝えてくれまいか?」
「.........将軍 出された馳走は早めに食べなければ腐ってしまいますぞ」
靳準が突然、妙なことを言い出してきて俺は首を傾げた。
「?」
「此度の戦功によって貴殿の名声は他の古参の将軍共を凌ぐほどになりました。当然それを妬む者もおりましょう 故に漢王が変な讒言を真に受けて変心する前に、褒賞を受けるのが上策かと思います」
「なるほど だがこの城はどうなさる?」
「他の者がこの城を守る手筈になっております 貴殿は安心して配下を纏めてお引きなさいませ この靳準めも同行致しますゆえ」
ニッコリと笑う靳準..........コイツの顔の良さは宮中随一で、彼には2人の娘がいるらしいが2人共も絶世の美女と名高い 最近は女好きの義兄・劉聡に取り入っているとの噂があるみたいだが、まあ俺には関係のない話であった――――――




