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第19話 王弥、乱入

 大陵(だいりょう)攻城から6日目の夜、武器兵糧の枯渇を恐れた晋軍は内城への総攻撃を開始。

 晋将・簫叡(しょうえい)は偃月刀を手に馬に跨がると自ら軍の先頭に立つ。



「全軍 我の後に続け!!」


 

 「簫」「晋」と描かれた旗を掲げた一隊は内城に近づくと漢軍からの一斉射撃を浴びる。無数の矢が弧を描いて流星のように晋兵らに降り注ぐ。



「うがっ!!」


「ギャァ!!」


「盾をもっと上に上げろォ!!! てぇめぇら死にてぇのか!!」


「こっちも撃ちかえせ!!」



 右手に盾、左手に剣や矛を持った晋兵が盾で己の身を守りながら進むも完全に矢を防ぎきれてる訳ではなく、ボコスカと兵士の体を矢が貫いていく。



「怯むな! 止まれば死ぬぞ!! ただ前だけを見て進めェ!!」



 先頭を駆ける簫叡はここが正念場だと偃月刀で降り注ぐ矢を払い落としながら進んでいく。

 総大将が文字通り矢面に立っているのだ。兵士達は総大将を討たせまいと必死に戦っていた。


 簫叡は復讐鬼ではあるが、根は気っ風のいい性格で、たとえ戦で大手柄を挙げたとしても部下のお陰だといい、恩賞は全て部下に分け与えていた。



――――――だからこそ兵は命を捨ててまでも簫叡を守ろうと奮戦していたのだ。



 対する漢軍も城壁を破られまいと奮戦はするものの、総大将・劉曜(りゅうよう)の不在、漢族と胡族の隔たり、女子供や老人といった非戦闘員の存在............これらの要因が重なり統率がとれず、内城での籠城戦は精彩さを欠いたものになっていた。



そしてそんな最中、悲劇が起こった――――――



 籠城に耐えられなくなった一部の群衆が蜂起して城門を守っていた漢軍を背後から奇襲したのだ。

 突如として味方の裏切りに遭った漢軍は総崩れを起こして城門を放棄、城内へ下がってしまったのだ。



内城・漢軍本陣――――――


「老人や女子供を西門から西河(せいか)に避難させろ!! 守衛は私と共に晋軍を迎撃する 付いて参れ!!」


「御意!!」


 城門が陥落して晋軍が侵入してくると劉雅は戦の足手まといになる老人や女子供、負傷兵を西門から脱出させた。


 そして残った守衛千余りと共に劉雅は晋軍の前衛と衝突。自ら戟を片手に負傷中とは思えない程の動きをみせる。



「者ども!! 前衛を外城まで押し込めば我らの勝利ぞ!!」


「「「うぉぉぉぉ!!!!」」」



劉雅は街の大通りを進む晋軍の中に斬り込む。



安西将軍(あんせいしょうぐん)・劉雅ここにあり!! 討ち取って手柄にしたい奴はかかってくるがいい!!」





「おう ならばお望み通り討ち取ってくれるわァ!!」




挑発に乗せられた敵の将が偃月刀を振りかざして劉雅に襲いかかる。





カッ カッ カッ!!





スチャ!!




劉雅は手綱を握り、戟を持ち直す。




「くたばれェ!! 賊がァァ!!!!」



ガキンッ!!




「.................:ッ!!」



「ぐっ.....!!!」



戟と偃月刀が激しく火花を散らしてぶつかり合う。

 


ギリギリッ!!



「そのなりを見るに貴様が賊どもの総大将か?」


「..........ふっ そうだと言ったらどうする?」


「無論 首を叩き落として劉淵に贈ってやる!!」



バキッ!!



 顔スレスレまで迫った偃月刀を間一髪ではじき飛ばすも劉雅は馬上でバランスを崩して落馬する。


(一撃が重すぎる...........これでは身がもたん。だが落ち目の晋にこれ程の将がいるとは思わなかったな)


「ハァ ハァハァ.............貴殿は何者か」


「ふっ 我が名は簫叡!! この晋軍を御する将だ。貴様には我が覇道の犠牲となってもらおう」



そう言うと簫叡は馬から降りると(かち)にも関わらず間合いを一気に詰めるや片手で偃月刀を振り上げる。



全てを叩っ斬る上段の構え............



劉雅は再び戟を握ろうとするも手は痺れ、足も落馬の際の痛みのせいか動かない............



「もはや これまでとは...........なんと情けないことか」


「己の運命を........呪うんだな――――――ッ!!」



振り下ろされる凶刃、目を瞑る劉雅。



――――――しかしその刃は劉雅の首を落とさなかった..........



 野生の勘か 偃月刀を劉雅の首筋ギリギリのところで背後に只ならぬ気配を感じ取った簫叡は振り向きざまに勢いつけて刃を振るう。



バキッン!!!



「............ッ!! 誰だ貴様ァ 我の邪魔をするなら只では済まぬぞ」





「デカイ口を叩く暇があったら周りを見たらどうだ? おしゃべりに夢中で背後を疎かにする..........将として失格だぞ若造よ」





 声の主は軽口をたたきながら向けられていた偃月刀の切っ先を熊の如き手で鷲掴みにする。手からは血が滴り落ちるも、そんなことお構いなしと云った様子であった。


 そして簫叡はこの時、初めて自分の視野の狭さに恥じいった。


 この将の言うとおり、新手の漢兵が次々と内城に攻め込んできていた。晋兵は必死に抵抗するも内と外で挟撃されて崩れるのは時間の問題であった.............



「き、貴様 何者だ...........?」


「ふん オレの名は王弥(おうび)(けん)の県令・劉柏根(りゅうはくこん)の参軍だ」



 得物である方天画戟(ほうてんがげき)を肩に担ぎ得意満面な表情を浮かべる王弥..........そしてそれを聞いて愕然とする劉雅と額に冷や汗をかく簫叡............

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