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第18話 晋将・簫叡、出る

大陵(だいりょう)――――――



 「放てェェェェ!!!!!」

 


 早朝、耳を塞ぐような爆音が大陵の城中に轟く。発石車(はっせきしゃ)から放たれた巨石は城壁の楼閣や防衛用の井闌車(せいらんしゃ)を破壊するだけに飽き足らず、城中の幕舎や家屋をもなぎ倒した。


 そして開戦から僅か半日足らずで城中は瓦礫と屍で溢れてかえっていた..........



「将軍!! ここに居ては危のうございまする。どうか城中にお退き下され!!」


「いや私は退かぬ。ここを退けばあっと言う間に守りが崩れるであろう!!」


「し、しかし..............将軍は建武将軍(けんぶしょうぐん)の右腕にございまする。右腕を失っては建武将軍が困りましょうに」


「確かにそうだが、建武将軍は武勇の大将。その右腕が死を恐れて瓦礫に身を隠したと知られれば、建武将軍の勇名も地に墜ちよう。故にこの身を矢が貫こうとも、腕が落ちようとも逃げる訳にはいかぬ!! この地を死守するのだ」



 安西将軍(あんせいしょうぐん)劉雅(りゅうが)は城壁に立ち必死に自軍を鼓舞していた。

 彼自身、瓦礫による裂傷や矢傷を負いボロボロになっていたが、自分が退いては士気に関わると踏ん張っていたのだ。


 しかし晋軍による接近戦を受けると北壁の守りはあっと言う間に崩れた。

 井闌車や雲梯車(うんていしゃ)を渡って城内に雪崩れ込んだ晋兵は疲弊した漢兵を次々と殺していく。

 あくまで堕落しきっていたのは司馬一族と一部の寒門出身の官吏共で、国を憂う国士や末端の将兵はまだまだ強かったのだ。

 対する漢軍は漢人(かんじん)匈奴(きょうど)の混成軍で統率は至難の技とも云えた。


「くっ.........!! 城内に退けェ!!」


 結局、劉雅は全軍を外城から内城に退かせた..........が、追い詰められてからが本番と云わんばかりに城壁の上から丸太や岩、熱した糞尿を晋兵に浴びせて猛抵抗した。

 抵抗は5日間に及び晋軍は突撃の度に屍の山を築き士気も見る見るうちに下がっていった...............



北壁・晋軍本陣――――――


「連日の突撃により我が軍の損害は増えるばかりだ。兵糧も残り僅か............だ」


 さっさと大陵を落として離石(りせき)がある西河国(せいがこく)に侵攻しようと考えていた簫叡(しょうえい)にとってこの漢軍の粘りようは大誤算であった。


「漢軍の主力は晋陽(しんよう)に向かい、大陵に残っているのは調練の行き届いてない弱兵のみと聞いております。恐らくは連中にとって後が無いからこその猛抵抗なのでしょう..........簫殿、ここは後一押しかと思われます」


副将の言葉に簫叡は首を縦に振る。


「次の突撃は我が先陣を切ろう」


「えっ?」


「我が自ら得物を振るって血路を開いてやるっていうんだ。文句はないだろ?」


「御自ら突撃するなど危険にございます!! 万が一討ち死になされたらどうなさるのですか!?」


 いそいそと鎧を着て戦の支度を始める簫叡に副将は慌てて止めようと手を伸ばすも簫叡は払い除けるとこう言ってのけた。


「我は匈奴を統べる大単于(だいぜんう)だ!! 簡単にくたばるものか!! 劉淵(りゅうえん)をこの手で殺し、拓跋(たくばつ)慕容(ぼよう)を滅ぼすまで我は生き抜くのだ!!」


 趙王(ちょうおう)暗殺未遂事件の後、約3年に及ぶ放浪の末、精神は擦り切れ、瞳は淀んでいった........そして今の彼に大志は無くなり、ただ父への恨みと強大な野心に呑まれた生ける屍と成り果てていた..........



――――――そして今宵、彼の凶刃が漢軍を襲う!!

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