第13話 異なる容姿
漢王・劉淵は拠点を左国城から南方の離石に移すと太原・上党への本格的な侵攻―――いや平定戦を開始した。
大陵―――
いくら正義の漢軍と云えども略奪暴行する可能性は充分にあり得る為、兵卒1万は城中に入れず外に築かせた土城を根拠地とした。
将軍である俺も兵士達と同じく寒風に晒されながら寝食を共にしつつ後続の軍勢を待っていたのだ。
―――そんな中、1人の少年が本陣に訪ねてきた
「お久しぶりにございまする 改めて名を曹恂と申しまする。此度は漢王より建武将軍を支えよとの命により参上いたしました」
「......随分と若いようだが齢は?」
「30に御座いまする。将軍のご高名は予々伺っております。劉家の千里駒として漢王様から期待されているとか」
艶やかな黒髪を後頭部で束ねた少年は瞳を輝かせながら俺を見上げてくる。
(あァ........なんと純粋な瞳か 俺もかつてはこんな瞳をしていたのだろうか)
青年を見ながら己の瞳に手をやる。
鮮血を思わせる紅い瞳、俺は普通ではないこの瞳が嫌いだった。道行く人々から怪異でも見たかのような視線を向けられるのがイヤだった。だから俺は管涔山に隠ったのだ。
崔岳から性根を叩き直されて今の俺があるのを思い出した......崔岳が居なければ俺は今も山に隠り、そしてこの生を終えていたかもしれない。
「曹恂 俺はこの通り余人とは違った容色をしてる。白銀の髪に紅の瞳......その俺に仕えるということはお主まで奇異の目で見られることになるのだ。それでも良いのか?」
その言葉に曹恂は首を横に振った。
「それの何が問題になりましょうや 古今東西、余人と異なる者には英雄の資質がございます。漢の高祖や蜀漢の昭烈帝は余人と異なる容色をしていたと史書にあります。その記述に基づけば将軍も英雄の才気ありということになりましょう。未来の英雄に仕えることが出来る......これ以上の幸福が何処にありましょうや それに将軍とお会いするのはこれで2度目にございます。これも何かの縁、そう思っております」
「そ、そうだったな あの時は世話になった。改めて礼を申し上げる......さて俺に仕えるならば呉漢や鄧禹の如き働きを期待してるぞ。曹恂よ」
「ハッ!! 御期待に添えるよう励みまする」
(こうして見ると性格がなんか犬......? みたいな奴だな。尻尾があったら全力でブンブン振ってそう)
曹恂が出て行ったのと同時に今度は2人の老将軍が入ってくる。
「王忠にございます お久しぶりですな劉曜どの!!」
「劉綏にございます。御立派になれて......楽浪に逃がした甲斐がありました」
(ん? この2人......俺の記憶が確かなら何処かで会ってるよな 薄ら顔だけ憶えてるような気が)
―――あっ!?
ここでようやく思い出したのだ。
この2人は俺を楽浪の朝鮮県に逃がしてくれた大恩人だということを―――




