第107話 最愛の女性は弟のママ
平陽の廷臣はこぞって単于台に詰めかけると劉聡に対して帝位につくよう求めた。
しかし劉聡は――――――
「理由はどうであれボクは皇帝である兄上を害した身である。また浅慮であり徳もない故、其方らの要望には応えられぬ」
...................と言って辞退したのだ。
廷臣は涙を流して嘆願したが劉聡の意思は堅く、単于台から平陽に戻ることもなかった。
単于台・朝堂――――――
「ウフフ、楚王様は本当に甘えん坊さんなのですね」
「.............今は玄明って呼んでくれると、嬉しいかな」
劉聡はそういうと牀に寝ている単氏の胸に顔を埋めた。
単氏はそんな劉聡を抱き締めて慈しむように彼の頭を撫でていた。
これだけなら年上の女性に甘える少年(見た目だけ)と健全な響きだが、お互い一糸まとわぬ姿であった.............
「玄明様、良いのですか? 帝位が決まっていないのに私とこのようなコトをしていて」
「もう帝位は江都王と話して決めてるんだ。後は ”兄上を殺したのはボクが皇帝になりたかったから” っていう誤解を招かぬようにするだけさ」
「ねぇ 玄明様、私にだけ教えて下さらない? 次の皇帝がだ・れ・か♡」
蠱惑的でゾクゾクとさせるような物言いに劉聡は微笑んで彼女の耳元でソッと囁いた。
「君の子さ――――――ボクはあくまで中継ぎとして即位するつもりだよ」
「ウフフ 玄明様の粋なお計らい感謝致しますわ」
単氏は先帝・劉淵の後妻で北海王・劉乂の母であった。因みに父は単徴である。
劉淵が亡くなった後、劉聡は容姿端麗で包容力のある彼女にゾッコン惚れ込んでしまったのである。
つまり劉聡は腹違い弟の母と肉体関係を持ってしまったという事になる。
劉和との争いで他の兄弟が死んでいく中、劉乂だけ生き延びているのは劉聡が密かに彼の邸に兵を送り込んでいたからである。
劉聡が生涯最も愛したであろう女性の子である。劉聡はこの末弟を大いに可愛がっていた。
そして後日――――――
「我は帝位につくと共に先帝の大業を継ごう!! そして北海王を皇太弟とし、彼が成長した暁には帝位を譲る事とする!!」
廷臣からの3度目の即位要請に応えた劉聡は平陽に戻ると ”漢の3代皇帝” として即位した。
そして単氏を皇太后としたが、変わらず劉聡との関係は続いた...........
9月に入ると劉聡は父の亡骸を陵墓に葬り、永光陵と名付けた。そして諡号を「光文」、廟号を「高祖」とした。




