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第106話 兄弟喧嘩の末路 後篇

太極殿(たいきょくでん)・西堂――――――



「うぐッ...............」



ドサッ



「ハァ ハァ.............ハァ」



劉和(りゅうか)の躰が膝から崩れ落ちた。



 お互い一歩も譲らず激しい死闘を繰り広げたが、途中で劉和が吐血しその隙を突いた劉聡(りゅうそう)に胸を斬り裂かれたのだった。


 動かなくなった兄を余所に劉聡は長剣に付いた血を払うと鞘に収めた。

 そして集まってきた自軍の兵達の方を向いた。


「兄はこの玄明(げんめい)が成敗致した!! 残るは劉鋭(りゅうえい)劉乗(りゅうじょう)だ 直ぐに探し出して首を刎ねろ」


「「「御意」」」


 その翌日、両将は平陽の北側で捕らえられた。そして劉聡の前で首を刎ねられたのだった。

 そして2人の首と呼延攸(こえんゆう)、劉和とその妻子の首は平陽の市中に晒された.............



単于台(ぜんうだい)――――――


楚王(そおう)様、おめでとうございます」


「ふん なに目出度い。これから大変なのだぞ」


 単于台に帰ってきた劉聡を出迎えるた王沈(おうしん)は祝いの言葉を投げかけるも彼はムッとした。


「アァ、次期皇帝の件で御座りますか」


魯王(ろおう)斉王(せいおう)も兄上に殺されてしまったんだ。まあ順当に考えれば次の皇帝は玄門(げんもん)の兄上ではあるが...........」


 玄門の兄上とは先帝・劉淵(りゅうえん)の次男である劉恭(りゅうきょう)のことである。

 だが彼は表舞台に立つことを嫌う性格で、この兄弟喧嘩にもどっちつかずで参戦していない。


「今現状、実績は楚王様の方が他のご兄弟と比べてズバ抜けております。勿論、諸将も楚王様を皇帝に推すでしょうな」


「兄上が皇帝になっても傀儡(くぐつ)と見なされるだけか..............のう王沈 いっその事、父上の兄に帝位を渡してはどうか?」


江都王(こうとおう)ですか...........なるほどそれも手の1つかもしれませんね 分かりました。後日、江都王を単于台に召し出しましょう」


「宜しく頼む」



翌日――――――


 江都王・劉延年(りゅうえんねん)は劉聡の呼びつけに応じて単于台に入った。

 先日の劉聡による容赦ない処刑ぶりを見た彼は密かに自害用の匕首(あいくち)を懐に忍ばせて劉聡と向き合った。


「これはよくぞ参られた」


「今更この年寄りに何用かな.............」


劉聡は茶を勧めるが劉延年は手をつけない。


「単刀直入に申しますと帝位を継いでは下さらんか? 劉和とその妻子を処した今、継ぐ者がいないのだ」


「玄門が居るではないか」


「彼は内気な性格、次代を継ぐ者として些か能力に欠けます。傀儡となり再び混乱するのがオチかと思われます」


「..............それはならぬ。皇統を乱せば今は良くても未来に禍根を遺す。それにわしが次いだとしても、この老体では激務に耐えられぬ。秦の孝文王(こうぶんおう)荘襄王(そうじょうおう)のような例もあろう」


 秦の孝文王(こうぶんおう)は即位してから3日、後を継いだ荘襄王(そうじょうおう)も3年で亡くなっている。

 前者は年齢で、後者は病で亡くなっている。劉延年も歳であり病も得ていることから自分が継いでも大した事は出来ないと分かっていた。


「ならば、一族の長老として何か助言を頂けぬか?」


「ふぅ ならば、これからわしが申す事は年寄りの妄言としてお聞きなされよ わしがどうこう申しても結局は貴殿らが決めることであるからな」


茶を飲み干した劉延年は淡々と事後策を語り出した。

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