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第101話 陰謀の始まり

太極殿(たいきょくでん)・西堂――――――


 劉淵(りゅうえん)が没したという報せを受けた皇太子で嫡子の劉和(りゅうか)は日が昇ると共に帝位を継承、漢の2代皇帝として即位した。


 そして即位したその晩、劉和は叔父の呼延攸と一族の侍中(じちゅう)劉乗(りゅうじょう)衛尉(えいい)劉鋭(りゅうえい)を西堂に集めた。


さっそく呼延攸が口を開く。


「先帝は天才ではありましたが、1つだけ大きな失態を犯しましたなァ」


「ん? どのような失態だ?」


「失態とは(せい)()北海(ほっかい)の3王に強兵を預けられたことです。この状況で二心を抱かれでもすればお飾り同然の陛下は為す術もなく落命するでしょうな」


「ならば兵権を取り上げるか?」


この提案に呼延攸は首を横に振る。


「兵権を取り上げられれば、次は自身のお命が危うくなると封地へ逃げます。斉王と魯王の背後には王弥(おうび)がおり、北海王の背後には楚王(そおう)がおります故、大事になる前にここで殺してしまうのが上策です」


「うむ 仕方がないな」


 呼延攸を信頼しきっている劉和は迷うことなく兄弟を殺すことを決めるのだった。

 そして同席していた劉乗も賛同すると同時にもう一人排除すべき人間を挙げた。


「陛下よ 太尉(たいい)殿の申されることも重要であるが、楚王を殺すのが優先でござる。彼奴は10万の兵を擁して都の近郊におりまする。先ずはこの大軍を手中に収めるべきかと..........」


 劉乗は放蕩癖がある楚王・劉聡(りゅうそう)を嫌っており、更に劉淵が残した遺詔(いしょう)によって親族が次々と昇進する中、劉乗は侍中に留め置かれた...............

 その事を深く恨んでいた劉乗は、同じく劉淵から疎まれていた呼延攸と手を結び、劉和を支える事で自身の栄達を目論んでいたのだ。



劉乗の言葉に劉和はそっと目を瞑る



――――――それならボクを頼ってくれればいいのに、兄上が呼んでくれれば直ぐに駆けつけるよ。


――――――兄上が即位したら片腕として身を粉にして働くつもりだから安心してくれ。



脳裏に去来するのは劉聡がかつて口にしていたこと.............



 弟を信じるか、叔父を信じるか――――――劉和の中で大きな迷いが生じていた。



そんな中、ずっと黙っていた劉鋭が口を開いた。


「太尉殿、侍中殿 楚王を除くには我らだけの兵力では到底敵いませぬ 逆に返り討ちに遭いますぞ」


「どうした衛尉殿、怖じ気づいたのか?」


呼延攸は劉鋭を睨む。


「楚王を甘く見てはなりませぬ 遺詔によって車騎(しゃき)大将軍(だいしょうぐん)から大司馬(だいしば)大単于(だいぜんう)となられた今、我らが事を起こした途端、全軍を投じてきますぞ!!」


「なら――――――ッ」


「.............お、叔父上、もう何も言うな それで衛尉はどうせよというのだ」


 2人の険悪な雰囲気を見た劉和は苦しげに胸を押さえて顔を歪ませた。それを見た呼延攸がそっと背中を擦ってやる。

 この頃、劉和は過度なストレスに見舞われると胸痛を起こすのが常であった。


両者のやり取りを見た劉鋭は嘆息してこう言った。


 始安王(しあんおう)を味方に引き入れることで戦力は互角になるかと思いまする。実力も経歴も唯一楚王に対抗できるのは始安王の他おりませぬ.................と

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