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第10話 三県委譲

太原国(たいげんこく)大陵(だいりょう)――――――


 漢軍と晋軍はお互いに使者を使わして和議の条件を話し合った。しかし和議の条件を巡って交渉が難航したことから、和議ではなく一時的な停戦協定を結ぶということで合致した。


劉宏(りゅうこう)殿、此度の停戦.......我らにとっても貴殿にとっても幸あらんことを」


「うむ」


 城の正殿で劉宏と周良(しゅうりょう)は酒を酌み交わしていた。

 両軍の兵士達は掠奪や放火を起こす可能性も視野に入れて城内には入れず外での待機させていた。


「周良殿 中都(ちゅうと)京陵(けいりょう)()の民を宜しく頼みまする」


「ご安心なされよ劉宏殿。3県の民はこの周良が責任を持って統治致す所存。もし変事あらば........停戦を受け入れてくれた貴殿の顔に泥を塗ることになる。それは何としても避けねばならぬ」


「果たして民が納得してくれるか否か..........」


 3県を晋に引き渡すという条件のもと停戦協定は結ばれた。

 2日間の酒宴の後、漢軍は左国城(さこくじょう)へ、晋軍は壷関(こかん)へとそれぞれの地に引き揚げていった。



――――――西河国(せいがこく)・左国城


 城に戻った劉宏、劉景(りゅうけい)劉欽(りゅうきん)らは鎧姿のまま広間に通された。

 広間には百官が左右に勢揃いしており皆、険しい表情を浮かべていた。そんな中、漢王・劉淵(りゅうえん)が口を開いた。


太尉(たいい)・劉宏 ただ今役目を果たして帰還致しました」


「先ずはご苦労であったな太尉殿。貴殿が寄越してきた書簡は既に読んだぞ。独断で3県を晋にくれてやったそうだな」


「.........古来より “将、軍に在りては君命をも受けざるところにあり” と申します。もしあのまま敵と対峙していれば敵の増援が来る可能性がありました故、態勢を立て直す為にやむを得ず盟約を結んだ次第に御座りまする」


「なるほど それで失った3県を取り戻す策はあるのか?」


「いえ........後程考えます」


 3県を晋に渡したことは劉宏にとって苦渋の決断とも云えた。その為彼は跪きながら決して顔を上げることはない。

 なにせ合わせる顔が無いのだから........



「漢王の顔に泥を塗りおって!! この不忠者!!」


「この一件で漢軍は弱いと思われたも同然ではないか!! もしこれで東方の鮮卑(せんぴ)烏桓(うがん)が攻めてきたら如何するおつもりか!!」


「漢王様 私が兵を率いて3県を奪還して参ります!!」


 

文官のみならず味方の筈の武官からも非難の声が上がる。



「静まれッ!! 太尉殿 褒賞は後日貴殿の屋敷に贈るよう手配致した故に当分の間出仕には及ばぬ。傷付いた心身を癒やすと良いぞ。劉景、劉欽も同様である!!」


「ご厚意感謝致します .........ではこれにて失礼致します」



 騒ぎ立てる連中を一喝で黙らせると劉宏らを下がらせた。



カッ カッ カッ



(..........何故分からぬのだ 今我らが為すべきことは支配地を増やすことではなく、無益な戦を避けて兵を養生させることなのだ。今攻勢に出ても無駄死にでしかない)


 今から4ヶ月前、予てより敵対していた并州刺史(へいしゅうしし)司馬騰(しばとう)鮮卑拓跋氏(せんぴたくばつし)大人(たいじん)拓跋猗㐌(たくばついい)が指揮する10万の大軍を相手に劉淵率いる漢軍は大敗してしまった............


 その日以来、漢軍は雪辱を晴らすべく鍛錬を積み重ねていた。しかしまだ武器も兵糧も事欠く有様でとても晋との本格的な戦争に出られる状態にはない。


――――――にも関わらず外戚(がいせき)呼延氏(こえんし)を始めとする強硬派はその事を理解せずに晋が憎いという感情のみで劉宏を非難していたのだ。

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