3−18 繋ぐ魔女
防御壁越しに目では視認出来ない攻撃が振り注ぐ。
「決められた攻撃しか出来ないから。歯痒くて仕方ないんろうね」
その発言にオネットはリベルテが自身よりも魔女の知識が深い事を知る。
「リベルテさんも魔女について研究を?」
「経験則さ……」
少し低い声でそう発せられ、オネットは口を閉じた。
「視認出来ないほど細い……針?」
学園で現れた弟子も針の形状の攻撃をしてきた。魔女には特有の個性の様な物があるがオネットにはその基盤となる物がわからない。
例えば学園で相対した。弟子は針だけでなく地中から鉄の鎖や棘の様な物を出し。士団員を翻弄していた。
「あと一歩、後ろに下がって。僕から離れないでね」
思考に入ろうとした時リベルテからそう声をかけられ、オネットは目の前の魔女に集中する。
「余計な事をしないでね」
「そんなに釘を刺さないでください」
足でまといになる事はわかっているが、流石に気落ちしてしまいそうになったオネットは、しかし魔女の攻撃が激しくなりオネットは肩をすくめた。
ピキリと音がし防御壁にヒビが入った。リベルテはすぐに防御壁を展開し直し、風魔術の弾丸を魔女に放つ。
「リガール魔術を使用しないのですか?」
現在リベルテが使用しているのは一般的に使われる防御壁だ。黄金の防御壁より脆く。目に見えない攻撃が幾度も振り注ぐ現状、防御壁の状態を気にしながら魔女に追撃を繰り出すのは手間がかかるだろう。
「魔力の消費はリガール魔術の方が多い、あの程度の攻撃で僕の防御壁は使わない」
リベルテと魔女互いに追撃を繰り出し、防ぎを繰り返す。双方一歩も引かず眼前には幾重もの魔術陣が展開しては消えを繰り返す。
互いが互いに隙を探り、狙ってはハズレる。細い一本の廊下で逃げも隠れもできない戦いは。
単純な魔力量での持久戦。
眼前で巻き起こる膨大な魔術の構想戦にオネットは瞬き一つせず観た。
魔女の動作、その口元と一瞬の内に展開される魔術陣を見逃さないために。
弾け飛ぶ、切り裂き霧散する。そうして短く長い魔術の渦の中。オネットは魔女魔術、その一端を後少しで掴もうとした。
その瞬間オネットの視界は塞がれた。
「えっ」
「オネット!」
リガール魔術ほどでは無いにしろ防御壁を超えてそれはオネットを覆った。
リベルテとの距離は僅か三歩ほど、背後の異変に気づき片足と片手を同時に伸ばせばその手はオネットにその魔術に届く。
が、しかし、リベルテの手にあるのは無機質な毛糸の糸だった。背後に視線を向けた時にはオネットを覆い、繭の様な形をしたそれは役目を終え。僅かに魔女の痕跡を感じる程度でそれ以上の力は、オネットと共に消えた。それと同時に周囲の魔術構築が変化し。空間が断然された事に気づいた。
「器用だね」
「……」
手元の糸屑を床に払い捨て。魔女に向き直る、いや幾人もの分身体を作り出しているのだ。目の前の存在もまた切り捨てられる程度の存在なのだろう。
切り離話されたらゴミ箱の中。捨てられたこの空間で、長いは必要無い。
ヒビだらけの防御壁越しに敵を見据え。あと一撃で崩壊するであろう。防御壁を前にこちらを伺う敵はその役目を終えたんだろう。先ほどの憎々しげな表情は消え去り。能面の様に魔力生物らしい表情をしている。
……訪れた沈黙はどちらともなく破かれた。
魔女が攻撃を繰り返すと同時にリベルテも横に避け、崩壊する防御壁を尻目に床を踏み締め、壁を蹴り、敵との距離を詰める。
片手を伸ばし、狙いを定めるが、背後に守る物がいないリベルテは僅かな魔力で攻撃を繰り出し防ぎ、その首に狙いを定め。風の刃を放つ。
近距離で指先から生み出された刃は魔女の首を切り落とした。
頭部と共に舞う髪とそして赤。
倒れた体から漏れ出た血は広がらず。細い糸の様に血管から漏れ出ていた。
「魔力生物の癖に構造が人と同じなんて。つくづく矛盾しているよね君達は」
死体を眺める趣味は無い。体の生きる機能を失った魔力生物は体が動かなくなればその魔力はすぐに時放たれ。抜け殻と同じになる。
分身が殺された事に気づいたのか。こちらに迫る物をリベルテは確認した。
こちらに気づかれ無い様にか蜘蛛の糸の様な物がこの空間に垂れ下がってくる感覚に。気づかれないと思っているのかと笑ってしまいそうになる。
通常なら大気中の魔力に溶けその存在も認知できなくなるが。ここは魔女の魔術の中。切り離されたとはいえ魔女が魔力をみすみす逃す訳が無い。
その意地汚さが、魔女の首を絞める。
リベルテがその隙を逃す訳が無い。こちらが構築せずとも出口を用意してくれる様でリベルテは感謝した。




