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七色と、光る。  作者:
19/27

18

 白いカーテンの隙間からは、未だ光は見えない。


 僕はそっと、隣で眠るレンの頬を撫でた。白くて柔らかな頬に、閉じられた瞼に並ぶ長い睫毛、少し開いた唇からは規則正しい呼吸が聞こえる。


 僕が社長という肩書きを引き継いでから、屋敷に帰ることが出来る日は極端に少なくなった。大学に行ったあとに本社に行くこともあったりして、本当に目が回るようだった。


 僕はレンを起こさないようにそっと、息をつく。


 夜のしじまに包まれる屋敷に帰ってくると、僕はひどくさみしくなった。


 誰も居ない、その現実が僕に追いつく前に、僕は泥のように眠った。そうしたなら、僕はひとりなのだと感じなくて済むから。


 いつだっただろう、そんなに前では無い筈だけど、レンが作っておいてくれたスープを見つけたときは驚いた。


 レンが何度か屋敷に来ていることは知っていたけれど、いつもその顔を見ることは出来なかった。そのスープを食べながら、泣きそうになってしまったなんて誰にも言えない。


 ただただ、会いたかった。レンの声を聞いて、レンの笑顔が見たかった。


 あんなに、ずっと一緒に居たのに。


 だから、自分でも無意識だった。レンの顔を見た途端、その腕の中に仕舞い込んだこと。


 ふわり、とレンの匂いがして、更に強く抱き締めた。


『リトのことが好き』


 僕は短くなったレンの前髪をかき上げて、額に唇を落とす。


「……僕も、好きだよ」


 レンの言う好きの意味の先にあるものを、無理矢理に考えないようにして僕はそっと布団から抜け出した。


 僕たちは兄妹だ。今までだって呆れるほどに繰り返した、その答えを何度だって心に刻んで。


『リト、明日は休み?』

『…うん』

『じゃあ、今日だけ一緒に寝てもいい?話したいこと沢山あるの!』


 少し赤くなった大きな瞳を下げてレンが笑って、僕は嘘をついた。本当は早朝に屋敷を出なくてはいけないけれど、少しでも長くレンと一緒に居たかった。


 ふたり、布団を並べて横になって、レンが嬉しそうに僕を見る。


 大学のことや、こっそり始めていたアルバイトには心底驚いたけれど、その店には密かに様子を見に行くことにして、楽しそうに話すレンを僕はずっと見ていた。


「これからも、守るよ」


 離れていても、ずっと。レンのことだけを。


 誰かに奪われてしまう、その日まで。


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