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「はい、レン。プレゼント」
「わー、ありがとう!」
白い壁に囲まれた個室で、僕とレンは向かい合って座っていた。僕たちが幼い頃からよく来ているこの料理店は、ユコおばさんの行きつけでもある。
品のいい机の上には、花が飾られている。
「何かな、何かな」
レンが嬉しそうに、小さな箱を包んでいる光沢のある紙を丁寧に剥がしている。
いつも僕たちは一緒に買いに行くのだけど、「今回が最後だから」と、お互い別々に用意して、食事の際にお披露目しようということになった。
レンは喜んでくれるだろうか、どんな顔をするだろうか。
レンがその包みを開けるのに苦戦しているその間も、僕の胸は温かくドキドキと心地よく高鳴っていて、こういうのも悪くないなと密かに思った。
「……あ!」
レンはようやく、やけに念入りに包まれていた紙を剥がせたらしい。小さな箱を開けて、僕を見つめている。
店の中を淡く照らし出している照明が映り込んで、僕を見る金色の瞳がきらりと揺れた。
「……これ」
「気に入った?」
僕がレンに選んだプレゼントは、首飾りだ。
細い金色のチェーンに、小さな銀灰色の石が付いている。その石は、お守りとして持ち主を護ってくれる効果があるらしい。
「綺麗でしょ?」
レンと一緒に見た、あの雪景色と重なって、僕は直ぐにその首飾りの購入を決めた。
「……私のも、見てみて」
「うん」
そう言われて、僕は目の前に置かれているレンからのプレゼントの包みを手に取った。
濃い青色に包まれた小さな箱の包装をゆっくりと剥がす。出てきたのは、レンにプレゼントしたものと同じくらいの大きさの箱で、僕はそっとそれを開けた。
「……え、これ」
中に入っていたのは、銀灰色に輝く石が付いた銀色のチェーンだった。
僕は思わず、レンを見つめた。僕を見る彼女は微笑んでいて、レンはまた大人っぽくなったような気がした。
「リトがくれたものと一緒だね」
「あそこのお店?」
「うん。男の人も、首飾りしてもおかしくないってお店の人が言ってたから」
まさか、レンも僕と同じことを考えていたなんて。
「リトもこれからきっと、大変なことが沢山あるだろうから」
レンが琥珀色の瞳を細めて、僕を見つめる。
「リトを、護ってくれますようにって」
僕の胸は、痛いくらいに、ぎゅうと締め付けられる。
僕が、レンのことを愛しくて愛しくて仕方無くなるのは、こういう時だ。
僕がレンのことを想うみたいに、レンも僕のことを想って、選んでくれたのだろう。
レンのことが馬鹿みたいに愛しくて、どうにかなりそうになる。
「まさか、同じものを選んでるとは思わなかったね!」
レンが嬉しそうな、切なそうな、色んな感情がごちゃ混ぜになったような表情を僕に向ける。
きっと僕も、レンと同じような顔をしているんだろう。
欲望のまま、レンの手を取って、誰も僕たちのことを知らない世界にふたり飛んでいけたなら、僕の頭の片隅でそんなことが過る。
「リト」
不意に、壁に掛けられている時計の針の、カチリと時を刻む音が響いた。
「ありがとう」
「…僕も、ありがとう」
「うん!家に帰ったら、付けっこしよう」
「そうだね」
僕は滲む視界の意味するものを理解したくなくて、無理矢理に頬を緩ませた。
目の前で笑うレンの輪郭がぼやける。
これは今生の別れじゃない。僕とレンの新しい未来への一歩だ。
僕は自分にそう言い聞かせて、タイミング良く運ばれてきた前菜に手を付けた。




