少女と王
お待たせしました!
ヴェルグラス視点+αです。
出会った時は、面倒なヤツ。
言葉を交わして、いけすかないヤツ。
他人に向ける笑顔を見て、腹立つヤツ。
時を重ねて、様々な想いが深まり。
初めて己に向けられた笑顔に、自分の気持ちを知った。
だが、知ったところで時既に遅く…。
ポッカリと空いた胸の隙間を抱えたまま、それから目を背ける様に只がむしゃらに剣を振るった。
一つ、また一つと死体が重なる。
気づけば周りには誰もいなくなり、また生き残ってしまったことに絶望し、目を伏せた。
誰か、誰か、誰か…。
どうか、頼む。
私を…………。
「私を、殺してくれ……」
「バカ!何言ってるのよ!そんなの、絶対に許さないからっ!」
突如、聴こえた鈴の音の様な声に、私は驚いて顔を上げた。
そして、目を見張る。
艶やかな長い黒髪。
透き通るような白い肌。
小柄でとても華奢なのに、私を恐れもせずに睨み付ける、強く輝く黒曜石の瞳。
それは、なくして尚、焦がれた……。
「そんな…、馬鹿な………」
「死ぬ為に戦場に出るなんて、必死に生きるために戦ってる人に失礼でしょう!!」
それに!と彼女は続けた。
「私はどうか幸せにって言ったのに!貴方の幸せを望んだのに!何で望んでもいない苦痛を勝手に背負って勝手に苦しむの!!」
胸の内を出し切ったのか、ハアッと息を吐いて肩で呼吸する彼女。
私は呆然としながらも、頭の中で彼女の言葉を噛み砕く。
どうか、幸せに。
私にその言葉を贈った女性は、唯一人……。
「………リ、オ……………?」
「…片仮名でしか、呼んでくれないの?」
悲しげに顔を歪めた少女に、私は手を伸ばした。
抱き締めた温もりに、感触に、匂いに。
少女が、確かにここにいると実感する。
死んだ筈の彼女が、何故生きているのか。
何故ここにいるのかなどは、どうでもいい。
ただ、この憎らしくも愛しい少女が腕の中にいる。
それだけで十分だった。
「…里……桜…。里、桜。里桜!」
溢れる感情のまま、彼女を強く抱き締める。
初めは硬直し、苦しそうに身動ぎしたけれど、離さない私に諦めたのか、力を抜いて背に手をまわした。
それが嬉しくて、さらに強く抱き締める。
「…里桜。お前が私の幸せを望むと言うのなら…、どうか側にいてくれ」
「…はい」
背にまわされた腕に力が入り、ぎゅっと抱き締められる。
その温もりと幸せを噛み締めるように、私は瞳を閉じた。
「…俺の存在、忘れないで欲しいんだけどな……。ま、いいか。少女と王が、幸せなら」
きっと、二人は大丈夫…。
幸せそうな二人を苦笑いで見つめた葉月の目には、確かな慈しみの念が宿っていた。
これにて、少女と王完結です!
読んで下さってありがとうございました!




