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少女と王  作者: 咲夜
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12/13

二つの魂とわかれた刻印

長い間お待たせしてすみませんでしたorz

「久しぶりですね、里桜…いえ、葉月と呼ぶべきですね」


真っ暗闇の中で淡い光を纏って佇む生命の女神ミリアを、葉月は気を失っている里桜を抱えて見つめた。


「久しぶり…で正しいのか?夢で何度も会ったはずだけど?」


「そうですね。貴方は里桜よりも覚醒が早かったですから…」


小さい頃に高熱を出して生死をさ迷った時、葉月は前世で里桜だった頃の記憶を思い出した。


はじめは酷く混乱したけれど、まだ頭の柔らかい子供の時期だったからか、落ち着きを取り戻したら「そうなんだ」と受け入れることが出来た。


それ以降何度か夢で会い、里桜の事や身近に起きた事などを話していたが、その時にはどうしても聞けなかった事があった。


「なんで、里桜を二つに分けたんだ?」


記憶を取り戻してから、ずっと不思議に思っていた。


何故、魂を分けて葉月という人物を作り出したのか。


何故、里桜一人では駄目だったのか。


何の為に葉月は生まれたのか。


ミリアは一度深く深呼吸してから、真っ直ぐに葉月を見つめ言った。


「里桜一人では、また同じ事を繰り返すと思ったのです」


「繰り返す?」


首を傾げた葉月に、ミリアは頷いた。


「里桜は、生まれ変わったとしても、怪我をした人や病気の人を放っておく事は出来ないでしょう。たとえ自然治癒するものでも、きっと力を使ってしまう。だから…」


ミリアは、そっと里桜の手をとった。


その手の甲にある刻印に触れると、それはフワリと空中に浮かび上がった。


驚いて硬直している葉月の手を片方の手でとり、ミリアは「ごめんなさい」と囁くように謝った。


そして…。


「刻印を、分ける事にしたのです」


パリンッと目の前に浮かんでいた刻印が割れるのと同時に、手の甲が焼けるような熱をもった。


まるで熱に引き寄せられるかのように、片方の印が手の甲に吸い込まれて行く。


完全に納まったと同時に痛みは消え、視線を落とすとくっきりと半分になった印が刻まれていた。


「これで、里桜一人では癒しの力を使えません。貴方と二人、手をあわせて初めて力が使えます」


「簡単に言うと、俺は里桜の監視役ってところか」


あっけらかんと言われた言葉に、ミリアは瞳を伏せた。


「…それだけではありません。力を使うとき、里桜の失われる生命力の半分を肩代わりすることになります」


「つまり今まで里桜一人で請け負っていたものが半分になるってことか……いいじゃん」


明るい声に、ミリアはハッとして顔を上げた。


「二人で努力すれば長生き出来るって事だろ?そもそも里桜一人じゃ頼りないし、ちょうど良かった。あんた、頭いいじゃん」


怒られるのを覚悟していたミリアは、全く逆に褒められポカンと口を開けた。


「…怒らないのですか?刻印を分けなければ、貴方はそれ以上に長生き出来るのに…」


「でも、里桜は早く死ぬんだろ?それに、特別長生きしたい訳でもないし。逆に里桜一人で背負う方が、申し訳なさで早死にする」


俺が、と笑う葉月を、信じられないようにミリアは凝視した。


死期が早まるのを、疎まれこそすれ笑顔で受け止められた事など一度とてなかった。


胸に温かい気持ちが込み上げ、ミリアは我慢することなく涙を溢した。


そして、異世界への扉を開く。


「ありがとう、葉月。里桜の事、お願いします」


「頼まれるまでもないよ。俺の方こそ、ありがとう。今も昔も…、ミリアには本当に感謝してる。…だから、これからも宜しく。俺の女神様」


つっと顔を寄せて頬に柔らかな口づけを落とし、葉月は里桜を抱え直して開かれた扉をくぐり抜けた。


パタンと扉が閉じても、女神は頬を真っ赤に染めてしばらくその場を動けなかった。

後少しで完結です。今しばらく、お付き合いください。

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