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田舎カスの日々  作者: 月鏡水バケツ
田舎編

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78/90

六十八話 「大家死す」

 前回のあらすじ。

 優子が少しばかり大きな声で、謎の言葉を言った。

「一メートルの襖」

 その言葉に、大家も女子も困惑した。

 しかし、大家姉だけは理解した。一メートルの意味を。


「先上がる」

「え?」

「どうしたんですか?」

「用事ができた。暫くしたら戻る、ここでくつろいでいてくれ。のぼせるなよ」


「おい?」

 大家は、襖という言葉に焦っていた。

「はぁ〜すっきりした」

「どういう事だ?」

「意味不明なように言えば、誰にも伝わらないでしょ。それに、外に言えば響かない」

「そういうことか、焦らせるなよ」


 大家姉は着替えて車に乗った。

 行き先は大家の部屋だ。

 一メートルの襖の意味。それは、一メートルだけ間取りが広い部屋の襖に何かがあるということ。

 優子は大家関係者にしか伝わらないように言った。そして、大家姉は自分に言われているのだと状況から判断した。

 現地に着いた大家姉は、自身の持つ鍵を使って大家の部屋に入った。

 そして襖を開ける。

「......」


「優子さん......腕がぁ!!」

 稚陽は崩れていた。

「......」

「おい、稚陽、大丈夫だよ」

 安音がフォローする。

「なんで?ゆうござんのうでぐぁ」

「なんて?」

「義手だよ」

「へ、義手なんですか?でも、そんなの一回も」

「言ってないよ」

「......私が馬鹿みたいにじゃないですか」

「銭湯に腕切れる要素ないよ」

「でも、どうして義手に?」

「......」

「あ、お姉さん遅いなぁ〜」

「姉さんは?」

「用事ができたと言って出て行きました」

「でも、またすぐ戻るって」

「大家さん、姉さんちょっと早く出たみたいで、暫くして戻るそうっす」

「そうか......コーヒー牛乳とか、マッサージ機もあるしな、ゆっくりするか」

 稚陽はマッサージ機に座った。しかし、小さすぎて肩に何も当たらなかった。

「あれ、君パパとママはいる?」

 今度は店員だ。

「えっ......」

「あ、あの、何か?」

 今回は、優子が近くにいた。

「あなたがこの子のパパですか?」

「はい」

「は......」

「そうですか、すみません」

「いえいえ」

 店員は去った。

「......優子さん」

「ごめん、この場凌(しの)ぎ」

「......」

 稚陽は立ち上がり、優子の胸ぐらを掴んで、耳に口を寄せる。

「そんなんなら、パパになりますか?」

「え?」

「私がママで、あなたがパパ。それだったら、そう言えますよね?」

「のぼせてる?」

「え」

「顔赤いし、なんか暑そうだよ」

「へ、は、ひ?」

 稚陽はのぼせていた。今になって、顔の近さに驚いた。

 優子は外に連れていった。

「はぁ、ごめんなさい」

「少し風に当たりな」

「はい」

 そこに、先程の車が戻る。

「姉さんの車だ」

「あれ、お姉さん、二人います?」

 助手席にも、似た人が一人座っていた。

「あ......」

 あれは大家のラ○ドールだった。

「おい、優子、どうした?」

「いや、稚陽がのぼせて」

 後ろには、ちょうど出てきた大家。

 大家姉は車の窓を開ける。

「弟、ちょっと来い」

「お......は?」

 大家は裏へ連れてかれた。

「この烏賊《イカ》臭い人形はなんだ?」

「ね、姉さん、これは......」


「大家さんも隠し事はありますから」

 そう、ちょろっと言った優子の発言を、大家姉は覚えていた。意味深に感じたのだ。

 優子が浴場で言った事と、関連性があると思った。

 最初はお金を隠しているのだと思った。貯金するくらいなら、搾取してやろうと思っていた。

 しかし、中から出てきたのは予想外だった。

「姉さん、それは......!?」

「弟、これは何だ」

「これは」

「優子が喋ってたんだよ他のやつと、大家だって隠し事はあるってな」

「優子が......喋ったのか?それを」

「っんなんじゃない。金か何かだと思ってたよ。で、さっき聞こえたんだよ。優子の、襖って声が。金隠してる場所かと思ったわ......」

「うっ」

「何だこれは?まさか、優子もグルか?」

「っ......!優子は違う!稚陽もいる中でバレそうになったが、それを誤魔化してくれたんだ」

「そうか。では死ね」


「あれー?大家さんは?」

「......さあ」

 大家は縛られ、そのまま川に人形ごと捨てられるが、それはまた別の話。

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