六十八話 「大家死す」
前回のあらすじ。
優子が少しばかり大きな声で、謎の言葉を言った。
「一メートルの襖」
その言葉に、大家も女子も困惑した。
しかし、大家姉だけは理解した。一メートルの意味を。
「先上がる」
「え?」
「どうしたんですか?」
「用事ができた。暫くしたら戻る、ここでくつろいでいてくれ。のぼせるなよ」
「おい?」
大家は、襖という言葉に焦っていた。
「はぁ〜すっきりした」
「どういう事だ?」
「意味不明なように言えば、誰にも伝わらないでしょ。それに、外に言えば響かない」
「そういうことか、焦らせるなよ」
大家姉は着替えて車に乗った。
行き先は大家の部屋だ。
一メートルの襖の意味。それは、一メートルだけ間取りが広い部屋の襖に何かがあるということ。
優子は大家関係者にしか伝わらないように言った。そして、大家姉は自分に言われているのだと状況から判断した。
現地に着いた大家姉は、自身の持つ鍵を使って大家の部屋に入った。
そして襖を開ける。
「......」
「優子さん......腕がぁ!!」
稚陽は崩れていた。
「......」
「おい、稚陽、大丈夫だよ」
安音がフォローする。
「なんで?ゆうござんのうでぐぁ」
「なんて?」
「義手だよ」
「へ、義手なんですか?でも、そんなの一回も」
「言ってないよ」
「......私が馬鹿みたいにじゃないですか」
「銭湯に腕切れる要素ないよ」
「でも、どうして義手に?」
「......」
「あ、お姉さん遅いなぁ〜」
「姉さんは?」
「用事ができたと言って出て行きました」
「でも、またすぐ戻るって」
「大家さん、姉さんちょっと早く出たみたいで、暫くして戻るそうっす」
「そうか......コーヒー牛乳とか、マッサージ機もあるしな、ゆっくりするか」
稚陽はマッサージ機に座った。しかし、小さすぎて肩に何も当たらなかった。
「あれ、君パパとママはいる?」
今度は店員だ。
「えっ......」
「あ、あの、何か?」
今回は、優子が近くにいた。
「あなたがこの子のパパですか?」
「はい」
「は......」
「そうですか、すみません」
「いえいえ」
店員は去った。
「......優子さん」
「ごめん、この場凌ぎ」
「......」
稚陽は立ち上がり、優子の胸ぐらを掴んで、耳に口を寄せる。
「そんなんなら、パパになりますか?」
「え?」
「私がママで、あなたがパパ。それだったら、そう言えますよね?」
「のぼせてる?」
「え」
「顔赤いし、なんか暑そうだよ」
「へ、は、ひ?」
稚陽はのぼせていた。今になって、顔の近さに驚いた。
優子は外に連れていった。
「はぁ、ごめんなさい」
「少し風に当たりな」
「はい」
そこに、先程の車が戻る。
「姉さんの車だ」
「あれ、お姉さん、二人います?」
助手席にも、似た人が一人座っていた。
「あ......」
あれは大家のラ○ドールだった。
「おい、優子、どうした?」
「いや、稚陽がのぼせて」
後ろには、ちょうど出てきた大家。
大家姉は車の窓を開ける。
「弟、ちょっと来い」
「お......は?」
大家は裏へ連れてかれた。
「この烏賊臭い人形はなんだ?」
「ね、姉さん、これは......」
「大家さんも隠し事はありますから」
そう、ちょろっと言った優子の発言を、大家姉は覚えていた。意味深に感じたのだ。
優子が浴場で言った事と、関連性があると思った。
最初はお金を隠しているのだと思った。貯金するくらいなら、搾取してやろうと思っていた。
しかし、中から出てきたのは予想外だった。
「姉さん、それは......!?」
「弟、これは何だ」
「これは」
「優子が喋ってたんだよ他のやつと、大家だって隠し事はあるってな」
「優子が......喋ったのか?それを」
「っんなんじゃない。金か何かだと思ってたよ。で、さっき聞こえたんだよ。優子の、襖って声が。金隠してる場所かと思ったわ......」
「うっ」
「何だこれは?まさか、優子もグルか?」
「っ......!優子は違う!稚陽もいる中でバレそうになったが、それを誤魔化してくれたんだ」
「そうか。では死ね」
「あれー?大家さんは?」
「......さあ」
大家は縛られ、そのまま川に人形ごと捨てられるが、それはまた別の話。




