七十五話 「地味に危機」
安音は広報車で帰ってきた。広報車は安音を下ろすとどっかに行った。
「お、優子やん。久しぶりやな。稚陽もおるんか、元気そうやなー」
「......誰の影響?」
「政治には人を惹きつける力、お笑い力がないといけんねん!」
「フッ......」
「あーっ!!それ絶対馬鹿にしてる笑いだ!」
「野美子は?」
「おお、野美子か、もう帰ってきとらんか?」
「まだ続けるの?」
「アネキ」
「まあアレだ、久しぶりの優子たちを歓迎したいんだろ」
「おおやあぁ!」
大家の部屋が謎に一番大きいので、ご飯は大家の部屋で集まった。
「お酒、飲んでいい?あ、でも少しだよ。みんなと話したいからね」
野美子は優子の前でも躊躇いなく酒を手にした。
今の野美子は酒に溺れず、酒を楽しみの一部としている。今では、お酒はテンションを上げるもので、それで人と話すのを楽しんでいる。
以前と違う野美子を前に、優子は驚いたし、安心したわけではないが、気を緩めることが出来るとホッとした。
「優子も飲む?」
「まだいいや。あとでもらう」
「あ、私もらう」
安音は飲んだ。大家はまだ飲まない。
「稚陽は?」
「優子さんと同じタイミングで......あんまりお酒飲まないので」
「......実輝、空気薄い?」
「そんな事ないですもん!」
「言葉の感じが稚陽と似てて、使われなく――」
「あ!そういえば、実輝は最近配信してるか?」
「配信途中に、通行人にスマホ叩き割られました......」
「へーっ。べろべろばー」
「配信は出来ますよ」
実輝は、割れつつも動くスマホを取り出した。
「私の一発芸見せたろか!」
「いや安音ステイ」
「あ、出来ました。ども〜、緊急配信でーす」
「えぇ?私初めてですけどこういうの」
「ん?」
稚陽が映った瞬間、実輝のアカウントが凍結された。
「あ、稚陽とお酒が映ったからじゃない?ほら、運営から警戒されてるでしょ」
「......ロリがぁ」
話は、会社の事、会社での優子の様子、田舎での値上げや、大家が畑に突っ込んだときの事など、お互いが知らなさそうな話題で盛り上がった。
全員に酒が入り、話は少し火照る。
「優子は彼女できたの?」
「いや、できてない」
「そっかぁ。稚陽ちゃんは?」
「まだです」
「じゃあ、二人とも、昔の私たちみたいに三人で暮らそうよ」
「会社は捨て置けないよ」
「じゃあ働きなよ」
「えー、養ってー」
「そういや、短髪の優子はかっこいいな。短髪ってほどじゃないが」
「そうっすか?」
「大家さんが気がある」
「誰がぁ」
「あ、そういえば大家さんね......」
「......っ」
「何でもない」




