七十三話 「心配の価値」
仕事の帰り道。
稚陽があの田舎に帰ると言い出した。
「ねぇ、なんで今になって......会社嫌になったの?」
「いえ、アネ......安音さんが顔見せてくれと」
「ああ、そういうこと」
「優子さんも来ますよね?」
「え、えぇ〜......。なんかなぁ」
優子は少し嫌だった。
移動にお金もかかるし、野美子がどうなっているかが不安なのだ。
「優子さん......?」
「......」
稚陽に失望されそうな感じがして、優子は「行く......」と言ってしまった。
稚陽の悪いところは、社会人として常識がないこと。週末すぐに行くと言って、優子の予定は崩れた。
大家が一部屋空けてくれているので、優子は泊まれる荷物をまとめて、稚陽と出発した。
近づくに連れ、優子は過去の自分が嫌になった。久々の風景に、抵抗感があった。
「大丈夫ですよ。みんなそう悪い人じゃないのは、優子さんの方がよく知っているでしょう」
「違くて、嫌なんだ......あそこに居た自分は駄目人間だった。その場の衝動的な感情で諦めたりキレたりするみたいにさ、それを何年もズルズルと引きずって。あそこに行けば、またあの頃に戻っちゃうかもしれない」
「優子さん......」
「高校時代はずっと学年一位で将来も期待されて、運動も出来てみんなの憧れでさ」
「自慢してます?」
「うん自慢」
「......心配を返してください」
「はい、お返しします」
「......」




