七十二話 「社畜デビュー」
夜。
会社の窓には、まだ一部灯りがついていた。
「はあ〜」
「困ったなぁ」
優子と部長は、明日の上に出す資料を作るために残業中だ。
「優子さん、まだ残るんですか?」
稚陽も居るが、もう帰るつもりだ。
「うん......他の資料の優先度が高過ぎて、上司に見せる用の資料作ってなくてさ。部長はミスるし」
「どこにでもあっていろんな味のあるキャンディみたいな呼び方をするな。私は部長だ、お前の上司だ」
「はいはい、すごいすごい」
「殺すぞ」
「いっそ殺してください」
「よし、殺す」
「やめてください!優子さんは、頑張ってるんです!」
「じゃあお前も手伝え新入り」
「一票」
優子、突然の裏切り。
「優子さん!?」
「いいじゃないか、残業手当は入るぞ」
「う、うぅ」
「あぁ、ああぁあ............」
これが、稚陽の社畜デビューである。
「帰ったらお風呂どころじゃないね」
「は、ははははは。私は......誰からも愛されない」
「おい、壊れたぞこいつ」
「あはは、は、は......」
「こりゃ駄目っすね。私の方で家まで送ります」
「おい、残業はどうなるんだ?」
「働かないOLにでも責任を押し付けましょう」
「よし。私もあがる」
「お疲れ様でした」
優子は稚陽を背負って、エレベーターで降りた。
そのままおんぶで帰ったが、誰も街を歩いていなかったので、変に見られることはなかった。
「稚陽、着いたよ」
「............」
「寝たか」
仕方がないので、優子は自分の部屋に稚陽を入れて、ソファに寝かせた。
「あぁぁっ......あれ、どこ?」
稚陽が目覚めたとき、その部屋は見慣れないところだった。
「スゥー......スゥー」
「優子さん......え?」
辺りを見渡して、そこが優子の部屋だと察してきた。
「起きなきゃ......え?」
毛布を捲ると、自分が下着姿であることを知った。
「は......」
「おはよ」
「優子さん、私......」
「寝ちゃったからワイシャツとかシワにならならないように脱がしておいたよ」
「あ、は?」
「痛っ!殴らないでよ!」




