六十九話 「夜の田舎道」
「以前にも、こうやって夜道を歩いたっすよね」
安音がふと、そのような事を言う。
「あぁ、肉団子が流れてたやつ」
「ふぁっと、おあ、おいおーなんだよな」
「おい、殺すぞ」
みんなから言いたい放題されて、大家もとうとうキレた。
「あの自動販売機、ビールも売ってるんだよねー」
野美子がふと思い出して言うと、はっとした。
「いや、ノンアルだよ」
「本当?」
優子はすかさず反応した。
「こら、もう飲みすぎないんだろ?」
安音が水をさす。
自動販売機に着くと、各々飲み物を買った。
奈美子は、ただの水を買わされた。一番悲しいものである。
帰り道。
「なんだか、名残惜しいなぁ」
「何がですか?」
「この道も、もうこうやって歩けるかわからなちからさ」
「またこちらに遊びに来ればよいのでは?ほら、以前のように私と同じ部屋で寝れば、私は優子さんの掛け布団になるので、スペースはありますよ」
「......天才じゃん」
「あ、そうだ優子」
大家姉が、何やら思いついたらしい。
「この間は、弟が石につまずいたんだったな」
「それで、川に落ちたと」
「おい、俺は優子に蹴り飛ばされたんだぞ」
「今回もそうします?」
「やめろ――」
突然、優子の視界から大家が消えた。
優子は何が起こったかわならなかった。
しかし、ドボンと大きな音が鳴る。その時、察しがついた。
「あー、大家さん落ちたー」
「ざまあ、ジャンキーファット!」
「大丈夫なんですか!?」
「脂肪あるから」
「それもそうですね!」
本当に、言われたい放題である。
「やっぱり、優子に助けてもらっていた方がよかったんじゃないか?」
「............」
以前にも見た光景である。
無事、皆アパートに到着した。大家を除く。
歩き疲れていて、何か留まって話すこともなく、部屋に帰った。
優子も部屋に帰ろうとした時、安音がそこにいた
「あ、気まず」
安音は目を逸らした。
「どうして?」
「前、こんな感じの時に、姉さんと同じ部屋に入ってるのを見かけて、勘違いしてたんだよね」
「ん?」
「姉さん、優子のこと好きで、部屋に連れ込んでるのかと思ってて――」
ふと、優子の方に目線を直すと、そこには誰もいなかった。
安音は、頬に温かい雫が伝うのを感じた。




