六十八話 「売れないファミレス」
送迎会の後、そのまま解散するのも気まずいので、どこかの飲食店へ立ち寄ることにした。
「あ、近くにあと二日で潰れるファミレスがあったっすよ」
安音が、もう店長もやる気がないであろう店を言った。
「なにそこ、逆に行ってみたい」
なぜだかみんな乗り気で、結局そこへ行くことになった。
扉を開けるとベルがチリンと鳴り、席へ案内される。人は居ない。いかにも潰れそうだ。
席は四人テーブルだったので、三人ずつで座ることにした。
メニュー表を渡された稚陽はメニューを見たが、珍しく彼女らしくなく、テンションが低かった。
「どうしたの?」
「いや」
「ちょっと覗き見――」
お腹が空いた優子は、稚陽の耳に齧りつきながらメニューを見た。
「やっ、優子さん!?」
「え、なんか......売れないのがよくわかる」
「ちょっ、くすぐった......っ」
途中、野美子の視線が爛々としていたが、優子は勇気ある選択をした。あろうことか、さらに耳を食べ始めた。
優子たちは、それぞれのものを頼んだ。
実際に食べてみるが、どれもチープすぎる味で、満足感もなかった。
「......大家さん」
優子が呼ぶ。
「ん......なんだ?」
「この後、あの安い自動販売機で口直しでもしません?」
「めっちゃ失礼だな」
そこに安音が反応する。
「いや、私賛成」
続いて、皆同意見を述べる。
「私も」
「私ジュース飲みたい!」
「私もだ。優子の意見を尊重する」
「姉さん、尊重とか大層に言っちゃって」
「あ?なんだぁ弟」
稚陽は、今の会話で、「ああ、大家さん、死んだかな」と思った。




