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五十九話 「優子と野美子」
「ねぇ、やっぱり良くないよ」
「なんで?」
「病み系嫌い」
「......」
優子は、野美子の誘いを断るのに必死だ。
それは、優しさからくるものではなく、単にタイプではないのだ。
「ま、ここに滞在するのもあとちょっとだし、責任は取れないからね」
「それって?」
「お引越し」
優子は、別のところに引っ越す予定だった。
既に準備は出来ているので、あとは荷物だけである。
ちなみに、大家と安音は知っているが、その他は知らない。
「え!いつ?」
「すぐ。あと半年とか」
「え〜。お別れ会しよ」
「いいよ、そんなの」
「するから!」
いきなり強気な野美子に、優子は引いた。
「引っ越すところはどんなところなの?」
「海があって――」
ハッ、と優子は気づいた。
しかし、もう半分住所を言ったようなものだ。
日本一周すれば、いずれ見つかる。
「......山があって」
「嘘つき」
優子は内心、終わったと思っていた。
「でもね、いいよ、追わないから。新しい土地で頑張ってね」
「いいよっていうか、それが普通だけどね」
「うん。私は一人で頑張れるから」
「一人ではないでしょ。大家さんもいるし、他の人もいる」
「うん。そうだね」




