五十六話 「実はいますよ」
優子の布団の中で、稚陽は埋もれていた。
「野美子――」
野美子は、爛爛とした獲物を見るような目つきで、優子のことを見た。
(あ、明日終わった)
「優子」
「はい」
「優子は、将来はどうするの?」
「何も考えてないよ。だからここにいるんじゃん」
「私はね――」
(なんか話し出したし......)
「どうでもいいと思ってた。嫌な事思い出して、毎日嫌な思いして。これなら早く死にたいなって」
(うっ......)
優子に、大ダメージ。
(稚陽、私を癒してくれ稚陽)
優子は、稚陽のことをサワサワと触った。
「でもね――あなたとなら、生きていける」
野美子は、優子のことを真っ直ぐに見た。
「だからね、優しくしてくれる優子に、我儘聞いてほしい」
「な、なに?」
「ひとまず、その手を止めてほしいな」
「ムリ」
「......無理?」
「ムリ」
依然として、優子はその手を止めなかった。
「ん、んんっ。でね。私、最低な事したじゃん?昔、私がされたように、優子にも無理やりしたよね」
「うん、ほんとそう」
「うっ......でも、聞いてください」
野美子は、少し上半身を起こした。
「今度は、私のことめちゃくちゃにして」
「は?」
「怖いって思っちゃうかもしれないけど――」
野美子は、優子の上に四つん這いになった。
「思い出すのは、君がいい」
「あの......」
優子は、目線を下に逸らした。
「稚陽......」




