四十九話 「五段アイス」
「......なんでここにいるの......?」
優子は、以前日和と行ったショッピングモールにいた。
「優子さーん!」
遠くから、稚陽が呼ぶ。
「うんぅ」
優子は、いつもより元気がない。というよりいつも元気ない。
「暇すぎて死んじゃいますか?」
「いや、毎日暇だよ」
「元気ないですね」
「まあ、買い出しに付き合っても、特にないからね」
「じゃあ......私に考えがあります!」
稚陽は、まるで子どものように、優子の手を引いた。
暫くの間、優子は稚陽に振り回された。
「はい!全部買い終えました!ということで......」
最後に連れられたところは、アイス屋だった。
「ここは......?」
優子は、もはや前を見る力すら残されていなかった。
「あー、ここで待っててください!すぐに戻ってきます!」
稚陽は、アイス屋に走って行った。
沢山指を差して、あれこれと頼む。
少々待って、二人分のアイスを貰った稚陽は、優子のもとに戻ってきた。
「ゆ、優子さん。右手......」
稚陽が、優子にアイスを渡す。
「あ、ありがとう」
「へへ。見てくださいこれ!!五段!!!初めてですよこれ〜」
「私も初めて見たよ......」
「何ですか?分けませんよこれは!」
稚陽はキッと背を向けた。
「いや今貰ったのがあるよ」
「へへ。子どもの頃の夢だったんだぁ。お母さんもお父さんも、私にはこういうの買ってくれなかったから」
優子は、稚陽が一人で田舎に来たことを思い出した。
「両親は?」
「......高校を卒業したら、家を追い出されました、いらないって。大学のお金も出してくれなくて、進学も出来なくて」
「そ、そう......」
「ともあれ!今は独り身です!何でも好きな事しますよ!!」
稚陽は、思いっきり空いた手を挙げた。
グラッ――。
その反動で、根元からアイスが落ちた。
「あ」
「あっ」
残されるは、潰れたアイスと虚無なコーンだけ。
「うぅ......子どもの頃の夢だったんだぁ。やっと、初めて......」
「さっきも聞いた」
鬼である。
「うえええええ!!」
優子は確信した。
安音の方が、まだマシな泣き方だと。
その後、優子の財布から重さが消え去ったのは、また別の話。




