四十五話 「仏の四肢」
「「ごめんなさい」」
「......何のつもり」
安音と日和が、優子の部屋の前で土下座していた。
「何、わざわざ。来んなし」
「ほんとはそう思ったんだよ。でも、私ら近所でギスギスしたくないし」
「納得されないままは良くないですし、怒っているのなら、それなりの償いを」
「......ていうかさ、扉越しだからか何も見えないんだけど」
「それは、優子が出てきてよ」
優子は仕方なく扉を開けた。
ガン。
「いて」
安音が頭をぶつける。
「償いって何が出来るの。義手義足代払ったって、もう手足は元に戻らない」
「わかってます。でも――」
「過去に納得はしない。その過去から生まれた今にも納得しない。つまり納得しない」
「じゃ、じゃあ......」
「金?メンテの費用、電気代。それとも一生を捧げてくれるの?勿論仕事係として」
「うっ......」
安音は、優子の態度に納得いかず、顔を上げた。
「大人げないよ優子!」
「戦犯」
「うっ......」
二人は地に伏せたまま、何も言い返せなくなってしまった。
団子二つである。
優子の重い視線、溢れ出る圧倒する空気。
二人が怖気付くのも無理はない。
「どうすんだか。こう見下ろしてるのも滑稽だね」
「それは優子のせいでしょ」
「......安音さんは、私たちを彼女なりに考えてくれただけです。彼女に罪はないです」
「そうだね」
「手足を奪ったのは私です。トラウマを残してしまったのも私です。介護でも性処理でも、乱暴に使ってください」
「ちょっ、日和さん!」
「介護言うなし」
「いやそこじゃないでしょ......」
日和は解決の考えが浮かばず、何も言えなくなってしまった。
「......ごめん、なさい。ごめんなさい」
優子は、ただ日和が謝るのを見ていた。
「優子......」
「......テッテレー!ドッキリでした〜」
「は?」
突如の優子の言葉に、日和は理解出来なかった。
「元々怒り続けてるわけじゃないよ。恨んでるけどね!」
「優子が引っ張るからガチかとびびったじゃーん。それに、もっと他の言葉あったでしょ」
「は、安音さん?」
「安音もこれでいて常識人だから、いきなり来ることはないよ。だから事前に話した。危害が加わることはないって思ったから会ったまで」
「それで死ぬほど怒られたけどね......」
「私、世界一優しいからさ。仏の顔は三度まで、私の四肢も三本まで。あ、服奢って」
「えぇ」




