068. 高樹家を知る者
「話を戻すが、まぁ……このアーティファクトのおかげで、わたしは初めから被害を免れているわけだ」
お父様は、私がお返しした指輪を元の巾着に戻しながら言います。
「強盗の手口が判明したのも、三人目の被害者と共にいた時にわたしも襲われ、さらにそれを目撃した者がいたからなのだが――」
「待ってください! 昏睡強盗の情報は一般には公開されていないんですよね……何故今その話を――」
お父様は、晃生さんと私を交互に見ました。
「お前たちが無関係ではないとわかったからだ」
何故、どうして関係があるのでしょうか――?
「わたしが相対した昏睡強盗の犯人も狐の面をしていたのだ。
おそらく同一人物だろう」
「「――⁉︎――」」
私と晃生さんは、驚きのあまり目を見合わせました。
「聞かせてもらえるか? お前達が出会したという狐面の男のことを」
あの狐面の男は、高樹家のことをよく知っているようでしたし――お父様が共犯ではない証拠はありません。
晃生さんもそう考えているのか、躊躇うように言います。
「そうは言われましても――」
「身長とか雰囲気、奴の使うアーティファクトなど、なんでも良い。分かることを教えてもらえないだろうか――」
そう言って、お父様は頭を下げました。
「――!――」
目の端で晃生さんがビクリと身体を震わせました。
どうやらとても驚いているようで――おそらくお父様から頭を下げられたことなどないのだと察しがつきます。
「わかりました――」
晃生さんは少し震えた声でそう答えると、一呼吸置いて話し始めました。
「身長は俺と同じくらい、体格は――筋肉質ではなかったですね……。
狐面に関しては、昔資料で見たことがあると思うんですが、政府所蔵の神器じゃないかと――」
「やはり――」
お父様は神妙な顔をしてそう呟きます。
「あと――」
晃生さんはそう言うと机上の置物を指してお父様の方を見ました。
お父様は何かを察したのか、その置物に手を置きます。
すると――書斎全体に、何か膜のような物が広がっていくのがわかります。
これは――何か結界のような――?
「わたしにこれを使わせるということは……何か外部に漏れたらまずい情報か?」
「――俺には判断しかねます。が……父上が守りたいモノが何なのかは分かる気がするので……完全に同意はできませんが」
晃生さんは苦笑しながら言いました。
「狐面の男は、高樹家の内情をよく知る者のようです」
「それは――何故そう思う?」
「奴は俺のことも、母さんがトウマに貸したその装束の能力のことも、良く知っているようでした」
「――!――」
寝耳に水、だったのでしょう――かなり驚いた顔をして晃生さんを見るお父様。
「このことを知るのは――」
「……今のところは、俺たちしか知りません。
元々、父上と母上には話すつもりでしたが、他の者に話す気はありませんでしたし――」
「そうか……今はわたしだけで十分だろう。
母さんにはわたしから話しておく」
「そうですか……ではお任せします。
あとは――アーティファクトに関しては……ご存知の通り、俺には未使用の物の光は見えません――。
トウマ、何か気づいたことはあるか――?」
龍の巫女、かもしれないことはもうお父様も知っているので……分かっていることを全てお話ししても大丈夫そうです……よね?
そう考えながら見上げると、晃生さんは何も言わずに頷きます。
了解しました。では――
「私が気づいたこと、ですが――」




