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067. “霧守り”

「聖水の小瓶を……ですか――?」


 何故。キヨミズの裏へはもう昔と変わりないくらいの聖水が――


「その聖水は龍石から直接受け取ったものだろう?

 キヨミズに出てきている聖水より、効果が高いのだよ。

 そして――昏睡強盗の被害者達にはその聖水が必要なのだ」


 昏睡強盗の被害者達に――


「必要だというのならお渡しします。わたしのことに関しては、離れに……晃生さんの元に居ることを許可していただけるのであれば――」

「まぁそこは、世話になるとか気にせずに過ごせるってことで良いんじゃないか?」


 私の言葉を多少修正しつつ、晃生さんが言いました。


「ところで――昏睡強盗の被害者達、まだ回復していなかったのですね――?」

「手立てはある、はずだったのだがな――。

 回復に携わる予定だった者が他の者と同様に倒れてしまったのだ」

「それは――父上はよく……ご無事ですね?」


 その質問は……これまでにも誰かから言われていたのでしょう――少し苦い顔をしてお父様は言います。


「わたしが無事なのは……我が家に代々伝わる、当主が持つことを許されるアーティファクトのおかげなだけだ」


 そういうと懐から小さな巾着を取り出し、中からコロンと何か、指輪らしき物を出しました。


 彼の手のひらの上に乗せられたそれを見て、晃生さんの動きがとまりました。


「それは――」

「名は“霧守り”所有者の力を勝手に使い、発動するタイプのアーティファクトだ」

「歴史の教科書にも載っている、あの――⁉︎」

「そうだ。どんな高レベルのマスターもレプリカ化することができなかった、再生の日直後にしかなかったと言われている種の物だ。

 これはあらゆる危険から身を守る、蒸気タイプの結界を張る力がある。

 ただ、発動すると花の香りが漂うという妙な特徴もあるが」


 蒸気、花の香り――


「トウマ、ちょっと見てくれるか?」


 晃生さんの、その驚いた様子に胸の動悸は高鳴るばかりで。

 背中にヒヤリとしたものを感じながら、私は晃生さんの横に立ちました。


 お父様の手の上にあるそれは、私のポーチの中にある、水の力を持つというサフィレットライカの指輪によくにた物でした。


「すみません、少し……手に持ってみても――?」


 私の物との違いはというと、この指輪のカボションはサフィレット部分を主にしつつ、三日月型に別の手法が入っているということ――


 これは……ドラゴンブレスライカ完成後に試そうとしていた――――!


「――霧を発生させてるのはこの薄いピンクに青い光の見え隠れしている部分ですね。

 自動で発動するというのは……おそらく三日月部分が担っているようです――」


 私は何故かハッキリと、そう思いました。


「ただ――この子、相性が良くないと限りなく力が発揮できないみたいですね」


 お父様の手の上ではものすごく元気に輝いていたのに。わたしが手にした瞬間、しゅんっと光が引っ込んで。今は控えめにフヨフヨと光を纏っています。


 サフィレット部分やデザイン、入っている資材パーツからすると、おそらく作ったのは私だと思うんですけど……何故――


「見ただけで――自動発動の構造がわかるのか⁉︎」


 あ、もしかしなくても発言しすぎ――

 私はお父様の言葉に内心焦って固まってしまいます。


「――彼女はおそらく龍の巫女の力を持っています。そういう物事を視る力も相当なものなのでしょう」

「龍の巫女だと――⁉︎」

「はい。ですが――龍石が、彼女はいずれこの地から去る者だから……そのことを忘れずに相対せよと言ってました――」


 晃生さんの言葉に少し目を丸くしたものの、一応の納得をしてくれたのか、お父様は苦笑しながら言いました。


「……覚えておこう」


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