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063. 水晶が選んだ形

「巻きついて⁉︎」


 晃生さんが驚いたように手を振るも、光る龍は離れず。


「ふふふ、離れませんねぇ」


 諦めて手をテーブルに置くと、ようやく離れて。再び棚の方へと行きました。


「晃生さん、あそこには何が入ってるんですか?」


 光る龍が何度も向かっている所を指して、私は聞きました。


「あそこか……あそこには随分と昔に彫った木彫りの龍の置物があるんだが――」


 言いながら、水晶をじっと見つめる晃生さん。


「お前、ああいう形になりたいの……か……?」


 すると――光る龍は再び晃生さんのところへやってきて、グネグネととぐろを巻きます。


「多分……ですが。めちゃくちゃ嬉しそうにしてます」

「まじでか――」

「難しい……ですか?」


 木と水晶では、削る工程が全く違うでしょう。彫刻の知識がない私でも、そのことは容易に想像ができます。


「いや……レプリカの技術を応用すればそう難しくはないんだがな……」


 あまり乗り気ではないのか、湯呑みの聖水入りのお茶を一口飲んでから微妙な苦笑いをして言いました。


「見るか……?」

「はい」


 すみません、多分見られたくないのでしょうけど、私は即答しました。


 晃生さんは苦笑しながら棚の方へ行き、件の木彫りの龍を出してきました。


「これだ」


 晃生さんの手のひらに乗せられたそれは。

 ゴツゴツとした見た目で、パッと見た感じ龍には見えませんでしたが――


「これは……もしかしてクロ、龍石の形を模して……?」


 私は龍石、御神体を直接は見ていませんが……。ようく見ると、龍の体がうねっているような形状にも見えます。


「大正解だ。ただまぁ……幼い頃の物なんでな、色々未熟で……」


 歯切れの悪い物言いな晃生さん。


「未熟なのかもしれませんが――私には淡く輝いて見えます。この子も立派なアーティファクトですよ」


 私は見たままの事実を言いました。


「――そうか――」

「この水晶が昔、神社とかに祀られていたのなら……単体で力を持っている可能性はありますよね。この状態で晃生さんと会話ができているし、私に光も見えるから」


 そうするともしかしたら――クロのように、一人で動くことも可能かもしれない。

 そんな期待が沸いてきますが、これを伝えてしまうと、緊張してしまうかもしれない。そう思って私は控えめな言葉で伝えます。


「晃生さんが手を入れることで立派なアーティファクトになりそうですね」

「――そうだといいんだが……」


 よし、もうひと押し!


「そうしたらこの子、クロに預けませんか?」

「クロに……?」

「はい。人がなかなか来れなくても、この子がいれば寂しくはないと思うんですけど……」


 クロが寂しいと感じているかはわからないけれど――


 晃生さんは、水晶と木彫りの龍を並べてじっと見つめながら言いました。


「この形を採用するかどうかはともかくとして、試してみるか……」


 そして、私はお昼ご飯用意の続きを。

 晃生さんは休憩しながら水晶と話し合いを進めていきました。


 盛り付けを終えて、呼びに行くと――


「じゃあな、作業するが……。

 形は本当に同じでいいんだな?」


 晃生さんは水晶を手に話しかけていました。


「力もどう出るようになるか、わからないからな?」


 光る龍はこくこくと頷くように首を上下に振り、晃生さんの手に巻きついていきます。


 なんというか、すっかり懐いて……。


「お昼ご飯、できましたよ」

「おぉ、ありがとう!」

「水晶の形、どうするか決まったんですね?」

「あぁ。どうしてもこの木彫りと同じ形が良いんだと」


 晃生さんの言葉に、光る龍だけでなく――水晶そのものの光までもが、嬉しそうに揺れました――

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