062. 龍の形をした光
「名前は“サフィレットライカ”略してサフィーちゃん、です」
チェコの“サフィレット”と呼ばれる変色ガラスがモデルの作品。
私はその子を晃生さんの前に置きました。
「もしかして、この子が――?」
「あぁ。そのようだ」
お茶を一口飲んでテーブルに置くと、晃生さんはじぃっとその指輪を覗き込みました。
「……そうか、そうなんだな。トウマに伝えても良いか?」
晃生さんが指輪の子と話をしています。なんでしょう、ちょっとドキドキしますね。
「トウマ、こいつの能力は水を呼ぶことらしい。しかも花の香り付きの水が呼べるんだと」
花の香り付き。
「それは……飲用なんでしょうか?」
香水なのでは? と、私は聞きます。
「飲用から香水まで、調整できるそうだ」
なんと。
「それはまた――すごいですね」
「本当に。香り付き水が出せるアーティファクトなんて、聞いたことがないぞ」
感心するようにそう言ったあと、晃生さんはブツブツと呟きます。
「いや……もしかしたら政府連中の嗜好品みたいな部類にあるかもしれない……か……?」
いつの時代も『特別な方々』というのは、そういうものなのでしょうか。
「ま、何はともあれ。コイツがいれば聖水はいつでも薄めることができる」
「ですね。聖水はこのまま持っておくことにします。と……じゃあ、お茶にでも混ぜて飲みます?」
聖水の小瓶を差し出して言うと、晃生さんは「そうだな、ありがとう」と言って受け取りました。
「では、この子達はちょっとここに置かせていただいて。ご飯の用意してきます。
晃生さんは、しっかりゆっくり休んでくださいね?」
「あぁ…そうさせてもらうよ」
湯呑へ一滴垂らすと、晃生さんはすぐに小瓶を返してきました。
受け取った小瓶をポーチの元の場所に戻し、私が立ち上がると、
「ん……? トウマ、ポーチにまだ何か入ってるのか?」
何かが気になったのか、晃生さんがポーチを指して言いました。
「あ、そうだ。お聞きしたい事があるんでした。
この石、多分水晶だと思うんですが――何故か光って視えるんですよ。資材のままでも力を持つことってあるんでしょうか?」
ポーチから水晶を取り出し手渡すと、晃生さんは訝しげな顔をしてそれを見つめました。
「どこで見つけたんだ?」
「あの子、咲ちゃんからいただいたんですが、あの廃村にくる道中で拾ったものだとか」
晃生さんは神妙な顔をして言いました。
「この水晶――どうやら神社かどこかで祀られていたことがあるようだな……いや、祀られていた水晶の一部分か……?」
「祀られて――?」
何故そんなことがわかるのですか? と口から言葉が出る前に、私は気付きました――
晃生さんがじぃっと水晶を見つめていることに。
「晃生さん、もしかして――声が聞こえるんですか……?」
「――あぁ」
「ではこの水晶は……アーティファクト――」
その時です、突然水晶の光が強くなり、何やら形を作り始めました。
光は細長く伸びていき、尾を引くように揺れながら……まるで龍のような形へと変化したのです。
「晃生さん――もしかしてこの子、龍の形になりたいと言ってませんか……?」
「トウマ、こいつの声が聞こえるのか⁉︎」
「いえ……その子から出た光が、龍の形になって――」
ふよふよと目の前で浮かんでいた光は、とぐろを巻いていたかと思うと晃生さんの後ろ、棚の上の方へと飛んでいきました。
そしてある場所でピタリと止まり、出たり入ったりして、また晃生さんの前でとぐろを巻く――というのを繰り返しています。
「あちらの棚の方と、晃生さんの前を行ったり来たりして……今は晃生さんの右手に巻きついて見えます」




