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涙と膿 25
もし新田香織が既に死んでいて、ロザリアの涙によって生ける死体と化していたとしたら・・・。
この無垢な青年(少年と言ってもいい風貌だ)に、そんな辛い思いをさせたくはなかった。
しかし自分は探偵。真実を明らかにし、依頼主に伝えるのが役割だ。
その後何が起きるかについては、あずかり知るところではない。
進之助は二リットルのコーラのペットボトルを大きく傾けて、ゴクゴク喉を鳴らして飲んだ。
やけ酒の勢いだなと十塚は思った。
進之助は口の周りを腕で拭って、
「どうだっていいや。今日はパーッとやろうぜ」
「第一に・・」。十塚は言った。「コーラじゃパーッとやれねぇ。ガキのパジャマパーティーじゃねぇんだ。第二に俺は仕事中で、第三にお前は俺のお友達じゃなくて、依頼主だ。依頼主は家に帰って俺からの連絡を待っていろ」
そう言っている間も十塚は新田香織のマンションに目を向けていたが、ちょうどそのドアの前に、人がやって来たのが見えた。
この暑いのに黒いコートを羽織り、黒い帽子をかぶった男だった。
見間違えるわけもない。
その男を見た瞬間、十塚は奥歯をギッと噛みしめた。
惧堂我磨・・・。
これで決まりだ。悪い予感が当たりやがった。




