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好きな人を友人に紹介しました  作者: 天満月 六花


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―鐘の音―


 鐘の音と同時にリックさんが姿勢を正し、俺は素早く起き上がる。


 リックさんの紺碧の瞳が鋭さを帯び、訓練場内全員を射抜く。


「正騎士及び今回動員されている見習い騎士、全員帯剣し大訓練場にて整列!上官が戻り次第出ると思え!」


「「「はっ!!」」」


 第一訓練場内に響き渡る明朗な声。


 リックさんは訓練場内を端から端まで確認すると、隊長の証である背中の中程まである群青色のマントを翻して出口へ向かう。


 先程の鐘の音は『隊長格以上の緊急召集』。緊急召集がかかった以上、すぐに部隊を出動させる事態になる可能性が高いということだ。


 正騎士と今回動員された見習い騎士である俺達はすぐ指示された通り武器を取りに動き出す。


 意識して息をゆっくりと吸って吐く。


 騎士の矜持を心の芯として、前を向いた。


 ***


 整然と群青色の騎士服並ぶ大訓練場に、一つの靴の音が響く。

 靡く群青色の長いマントは騎士団総団長である証だ。


 青みを帯びた銀髪が太陽の光を受けて輝く。


 演壇の真ん中で立ち止まると、総団長は剣を壇上に突き立てた。


 金の瞳に混じる銀色が煌めき、大訓練場に整列した全師団の面々を見渡し口を開く。


「我々が守る王都の民に不安を与える者共の拠点の情報を得た!先の作戦では蜥蜴の尻尾切りをされたが、今回は一人も逃す気はない!」


 空気を振動させる覇気が籠もった声に背筋が伸びる。


「これより犯罪組織の拠点に踏み込む!第一師団に拠点への踏み込みを命じる!第三師団、第八師団は拠点周囲の安全確保!第二師団、第五師団、第九師団は王城で待機!他の師団は街の巡回だ!各々の役割を深く理解し、自身の役割を果たせ!」


 総団長が突き立てていた剣を持ち、鞘から抜く。


「剣を持て!」


 その言葉に倣い、鞘から剣を抜き自分の正面に構える。


「我ら騎士はこの国の民の為にある!魔物や犯罪者共からこの国の民を守る為に結成された治安組織が我ら騎士団である!」


 総団長が剣を掲げ、俺達もそれに倣って剣を掲げる。


「無辜の民を守り抜く騎士の使命を果たす時だ!我ら騎士団の誇りにかけて、この作戦を成功させる!」 


「「「「はっ!!」」」」


 総団長の鼓舞に応える声が、大訓練場に響いた。 


 ***


 街中にある騎士団が所有している建物。そこの三階から今回の持ち場が見える。


 リックさんは周囲を紺碧の目で見回している。サラリとした栗色の髪が少し揺れた。


 今は作戦までの待機時間だ。


 もうすぐ作戦が始まるという緊張感に落ち着かない心臓を鎮めようと深く呼吸をする。

 シオンやカイン、キャリーも俺と同じような呼吸をしている。


 見習い騎士である俺達にとってここまで大きい作戦は初めてだ。


 そんな俺達を見ながら、リックさんが口を開いた。


「見習い騎士達はこれ程大きい作戦は初めてだろう。だが、気負うな。ここにいるのは僕が実力を認めた者しかいない。普段通りの動きをすればそれで事は成る」


 そう静かに言われ、喉が詰まった。


 リックさんが認めてくれているから自分がここにいる事。その事実がじわじわと心に染み渡って、自信となっていく。


 前を向く。落ち着かせる為の深い呼吸ではなく、普段通りの呼吸に皆戻っていた。


 リックさんはそんな俺達を見て満足そうに口端を上げた。


「ふふ。さーすが、ガールド隊長。これなら僕達の隊は心配ないね」


 片目をパチンと閉じて軽く言った先輩に目を向ける。癖っ毛の強いくるくるとしている少し緑がかった金髪。透き通るような大きな水色の目が面白そうな光を宿している。

 この前作戦が一緒だったルノー先輩達よりも二年先輩であり、伯爵家の嫡男であるランスロット・シュゲール先輩だ。


「うるさいよ、シュゲール」


 ギロリと睨むリックさんに怯むことなくシュゲール先輩は肩を竦めた。


「はい、すみません」


 謝罪の言葉でも笑顔のまま言うシュゲール先輩に思わず感心した目を向けてしまう。……いや、恐怖で隊を支配してるとか思っては…………思っていたけれど。


「ランスロット、減らず口を叩くな。お前は昔から緊張感が足りない」


 溜め息を吐きながら言ったのは、赤みが強い茶色の長い髪を後ろで一つに括り、焦げ茶色の鋭い目をしたメイザー・ガロン先輩だ。ガロン子爵家の嫡男でもある。

 確かシュゲール先輩の方が先輩で家格が上の貴族だが、昔から親交があるのか真面目そうなメイザー先輩にしては珍しく砕けた態度でシュゲール先輩と接している。


「そう言うなよー。この前の作戦はイフリータ副隊長と後方支援だったから、今回は張り切ってるんだぞ!」


 シュゲール先輩もイフリータ副隊長と同じで貴族の品格が隠せそうにない人である。

 ガタイのいいイフリータ副隊長とは違い、シュゲール先輩の体格はリックさんより少し大きいぐらいだが……なんだろう、すごくキラキラしているのだ。そのキラキラとした貴族の品格が隠せそうにないのでこの前の作戦では表には出ないようにしていたのだろう。


「シュゲールくんのそのキラキラがうるさくて隠せそうにないから、私がガロンくんと恋人設定の二人でやることになったんだよ。反省して」


 シュゲール先輩を明るいオレンジ色の目でジトリと見ながら注意したのは、淡いベージュ色の髪を肩につかないくらいで切り揃えているエミリー・ドール先輩だ。


「ドール先輩……すみません。僕が貴族としての品格を隠せないから……!」


 悔しそうな顔をするシュゲール先輩をドール先輩が下から睨む。……ドール先輩は平民だった筈だけれど、そこはやはり先輩だからか貴族相手だとかの気遣いなどないようだ。


「メイザーも貴族なのに完璧に貴族の品格隠せるなんて……流石メイザー」


 何故かシュゲール先輩は得意気にガロン先輩を褒めた。……褒めているんだろうか、これ。


「ランスロット、それは嫌味か?」


「嫌味?なんで?すごいって言っただけだぞ?」


 ガロン先輩の問いに心底不思議そうに首を傾げるシュゲール先輩。


「はあー……。そうだな、お前はそういう奴だった」


「メイザーが僕のことをよくわかっているようでなによりだ!」


 ガロン先輩が盛大に溜め息を吐いて仕方なさそうに言うと、シュゲール先輩が胸を張って応える。


「はあ……うるさい……」


 ムスッとした顔でドール先輩が呟くが、シュゲール先輩とガロン先輩は素知らぬ顔だ。


 なんだかやり取りが漫才みたいに思える。緊張感がなくて少し落ち着いてきた。


 そこで白金の髪が翻る。持ち主であるルーリー副隊長が振り返り、淡い緑の瞳が先輩たちを捉えた。


「そろそろ口を慎みなさい。いくら待機時間とはいえ、作戦前よ」


「はは。緊張し過ぎるよりいいじゃないか」


 厳しい口調で苦言を呈したルーリー副隊長に、隣に居たイフリータ副隊長が大きな体を揺らしながら言う。淡い紫色の短髪を掻き上げ、青と紫が混じる目が楽しそうに弧を描いている。


「貴方もそっちのタイプよね……」


 イフリータ副隊長の言葉にルーリー副隊長が溜め息を吐く。


「ふっ。お前らもあの人達の様子見てたら緊張解けたんじゃねぇか?」


 小麦色の髪を持つルノー先輩が振り返り、俺達を見て茶色の大きな目を細める。先輩達も俺達が緊張していたから心配してくれていたのだろう。


「あの人達はいつもああよね……」


 ポニーテールで纏めている長い青みがかった黒髪を振り払うように手で払いながら言うジュード先輩。濃い紫の瞳には呆れを滲ませている。

 そんなジュード先輩を、ピンク味が強いベージュ色の短い髪を傾けてコーズ先輩が覗き込む。


「ふふ。でも私達もお陰で気が楽よ?どうしたって作戦前は緊張するもの。ね、ギートもそう思わない?」


 優しい金の瞳で微笑んだコーズ先輩が黒髪のギート先輩に話を振る。


「そうだな。俺達も正騎士になってまだ二年だ。そこまで経験豊富ではないからな。先輩方の変わらぬ姿を見ていると心強いよ」


 ギート先輩の黒い目が俺達を見つめて笑みを漏らした。


 先輩達も緊張していた事実に目を瞬かせる。ギート先輩達は俺達から見ると何もかもできるように見えていた。けれどそんな先輩達でもまだ経験が足りないと言うのだ。


 ――俺達より経験積んでるギート先輩達も緊張すんなら、見習い騎士である俺達も緊張すんの当たり前だよな。


 その事実がなんだか心強い。


 この作戦はローリーの平穏に繋がるはずだ。


 そう考えて、騎士服の中にあるローリーからもらった魔石を握る。


 ローリーの兄であるリックさんを見ると、鋭い紺碧の瞳で懐中時計を見つめていた。



読んでいただきありがとうございます。

少し遅くなりましたが更新しました。

これからも読んでもらえると嬉しいです。


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