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好きな人を友人に紹介しました  作者: 天満月 六花


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―頬の感触―


 ――?今……?


 頬に何か当たった。

 そっと頬に手をやる。温かくて柔らかい感触が俺の頬に触れた。


 さっきローリーが何故かぎゅっと抱き着いてきた。その抱き着き方は騎士服だからかまた何も気にしていないので俺の腕を胸で……。

 いや、それより顔をらしたあと腕を引っ張られてそれで不思議な感触が頬に……。


 今、ローリーはまたねと言ってすぐに走り出した。


 走り出す前に見たローリーは顔を赤くして可愛かった。

 そう、あの時は何故かローリーの唇が近くて驚いたらすぐに離れていって……。


「え……」


 思考が答えを出す前に気づいた俺は、力が抜けてドサリと尻もちを着いた。


 俺は、今。


 ――ローリーに、キスされた?


 ローリーの走り去る後ろ姿を呆然と眺める。ローリーの後をメーベルさんとユーヴェンが追っていることに安心する。


 頬を手で柔らかくおおう。

 柔らかくて温かい、そして少しだけ湿った感触を思い出してカッと顔に熱が集まる。


 ――はあ!?な、な、なん、なんで!?


 混乱しながらもローリーの後ろ姿をずっと眺める。


 ――やっべぇ。可愛い。いや、頬に……キス?あー!!やっべ、今なんにも考えらんねぇ!!


 ごちゃごちゃな頭の中でも走って逃げるローリーを見つめていると、すぐに訓練場から出て行った。メーベルさんとユーヴェンも出て行く。

 ローリーの姿が見えなくなったことを残念に思いながら、もう一度頬に触れたものの感触を思い出す。


 ――あー……すっげぇやわら……。


 ガンッ!!


 頭に強い衝撃を受けて地面に倒れた。その瞬間、立ち上がるより先に守護魔法をいつもより多めの魔力で展開する。特に守る場所は頬。そこに魔力を集中させる。


 バキィ゙ンッ!! 


 次の衝撃で守護魔法にひびが入る。ギリギリ耐えられたが、集中して守ってなかったら耐えられていないだろう。


「ちっ」


 リックさんの舌打ちが聞こえた。


 もう一度守護魔法を張り直す。


 ――さっきの蹴り、魔法で強化されてた……。守護魔法で耐え切れてなかったら骨折は確実だったな……。


 更にガンッと踏まれるが、今度は強化されていない。たぶん今はメーベル医務官に魔力を渡さないといけない事態になる可能性がある以上、使う魔力を最低限にしたいのだろう。


 だっていつもだったら絶対さっきの一回では終わらない。


 この前もメーベル医務官に魔力渡す予定だったからか、魔法を使っても魔力を多く使わないものばかりだった。……まあとんでもない精度で鋭くおそってくるので、その対応に俺は目一杯魔力を使ったけれど。


 ――たぶん総団長が間に入ってくれたから大丈夫だろうけど……。


 慎重なリックさんのことだ。念には念を入れたいのだろう。


 あと一応緊急事態体制というのもあるかもしれない。……いや、やっぱりメーベル医務官の事が大きそうだ。たぶんそうじゃなかったらもう何回か本気の攻撃を加えられていると思う。


 ガンガンと踏みつけられながらも頬から手は離さない。


 ――あー!やっぱキスしたんだな、ローリー!!こんだけリックさん怒ってるってことはやっぱ頬にキスしたんだな!?


 事実を更に補強され、夢見心地だったのが現実に重なる。


 ニヤけそうになるのを必死に抑える。この状態でニヤけるとあとが怖い。


「……ブライト……」


 ちらりとリックさんを伺いながらキャリーが俺に話しかけてくる。

 リックさんは俺を無表情で見たまま踏みつけ続けている。


 キャリーが俺に話し掛けても止めないという事はしばらくこのままだろう。油断したら守護魔法を割られそうなので気をつけながらキャリーの方へと意識を向ける。


「なんだ、キャリー?」


 そのまま返事をしたらキャリーが引いたような顔をした。


 ――呼ばれたから返事しただけなんだが……。


 少し納得がいかないが、まあはたから見たらとんでもない光景だとも思う。


 キャリーは恐る恐るといった感じで少しこちらに近寄る。そしてリックさんを見た。リックさんは無表情のまま俺を踏み続けている。


 今の内にさっき衝撃を受けた頭を治癒する。治癒魔法を展開する時のすきを狙ったか、その時かなり強めに踏まれたので俺の頬を砕く事は諦めていないようだ。


 ――あー……でもわかるなぁ……。俺もエーフィがこんな事したら相手の頬を殴り砕いて感覚をなくしてやるもんなぁ……。


 ローリーからの頬への……き、キス……はめちゃくちゃ嬉しいのだが、リックさんの立場で考えると複雑だ。こんな事をエーフィがやったら俺もリックさんと同じ事をすると断言できる。


「おい……なんかこいつ納得したような顔してねぇか?」


「え……うわ、マジだ……。なんで納得してんだよ、アリオン……」


 カインとシオンから突っ込まれるが、実際に納得しているんだから仕方ないだろう。


「いや……俺も妹がやったらこうなるなぁって」


 そう答えると二人共に信じられないような顔でドン引きされた。


「……あんたもユリアさん達とおんなじね……」


 少し溜め息を吐きながら言ったキャリーに確かにそうかもしれないと思ってリックさんを見る。

 さっきの無表情に少し優しげな眼差まなざしが加わった。メーベル医務官の話が出たからだろうか。……それでもガンガン踏みつけてくるのは変わらないんだが。


「仕方ないだろ。エーフィはすっげぇ可愛いんだ。それでなんだよ、キャリー。なんか言いたいことあんだろ?」


 とりあえずキャリーの話を聞こうと話を断ち切る。ローリーからの伝言があるかもしれない。


「ええ。ローリーからみんな気をつけて頑張ってねって伝言よ」


 ローリーからの伝言に頬がゆるむ。


 ――あー、これ……何よりの激励げきれいだな……!頬にき、キスをされて頑張ってね、なんて……これはもう、りょ、りょうおも……。


 ガァンッ!


 危ない。

 気が緩んで守護魔法を割られるところだった。もう一度しっかり守護魔法を掛け直す。


「それとケープ、メリアのことは任せといてとローリーが言っていたわ」


 キャリーのその言葉でハッとする。そういえばゴート嬢へのプレゼントは……と考えて、ローリーが腕に抱き着いてきた時にスルッと取っていった事を思い出す。

 ローリーはあんな事をしながらも抜け目がなくて可愛い。


 ――いや、あの抱き着き方は……ダメなんだけどな!


 だからローリーから顔を逸らしてしまった。……ローリーにき、キスされるとこを見れなかったのは残念だ。きっととんでもなく可愛かっただろうに。

 でも流石に俺の腕を…………ぎゅっとしている様子を視界に入れることはできなかったので仕方ない。


 ガンッ!


 少し強めの踏みつけが入った。顔に出ていただろうか。気をつけよう。


 気を引き締めたところでリックさんから地をうような低い声が漏れてきた。


「アリオンくん、勘違いしないでくれる?アレはあくまでも君とシオンくんの噂を防ごうとしたローリーの策だよ。君が頭を使うより先にシオンくんの服をいだから変な噂が出ないようにってローリーがわざわざあんな事をしたんだ。友人であるシオンくんの彼女に気をつかってね」


 リックさんの言葉に目を見開く。


 そうだ、確かにシオンの上着を剥ぐなんて俺達が散々遠ざけてきた噂の元には十分ではないか。


 顔をしかめる。ローリーに悪い事をしてしまった。ユーヴェンのせいで勝手な噂を立てられても、それをローリーがいつも収めてくれていたのに俺自身が原因を作るなんて。


「やっとその見せかけの頭でも理解した?」


 リックさんの怒りが突き刺さる。


 確かに考えなしに行動して、ローリーにしなくてもいい事をさせてしまった。しかもこんな大勢の前だ。羞恥しゅうちでいっぱいだっただろう。


 ――くそ……。なんで深く考えずに行動しちまったんだ……。


 罪悪感が胸に広がったところでリックさんが更に言葉を重ねる。


「ほら、わかったなら早く頬を差し出しなよ?しっかり砕いてあげるから」


 噛み砕くように言われた言葉でに落ちる。

 流石リックさん。俺の責任を追及して頬を差し出すことが当然だと考えるように誘導している。


 俺は深く息を吸ってリックさんに伝える言葉をつむぐ。


「……俺が深く考えずに行動したのは悪かったです。……ローリー、きっと悩んだだろうと思います。それでも行動してくれた。それをなかったことにはしたくないですし……俺は……とても嬉しかったんです。だから頬は差し出せません」


「……ちっ」


 やはり目的は俺に頬を差し出させて砕くことだったらしい。


 ――まぁ当然だよな。目の前で溺愛してる妹が男に……ほ、頬にキス、するなんて……。


「なあ、なんかすっげぇ真剣な顔でお前話してるけど、ガールド隊長に踏まれたまんまだからな?傍から見た構図考えろ?」


 カインにそう言われる。

 ……いや、さっきのは真剣に返さないと駄目だろう。

 それにここから起き上がろうとしたら守護魔法に隙がしょうじそうなのだ。その隙をリックさんは確実に突いてくる。


 ――しかし……んな事リックさんの前で言ったら……。


 リックさんがすっと目を細めてカインを見た。


「ちょ、ちょっとカイン……」


 キャリーが青い顔でカインの名を呼ぶ。リックさんの冷気に気づいたようだ。


「……それはそうだね。カインくんもコレ、やってみるかい?守護魔法をしっかり張らないと僕が割るから、とてもいい魔法の特訓になると思うよ?」


 にっこりとした笑顔でカインに話し掛けるリックさん。その笑みと言葉にカインは一気に顔の色をなくした。


「あ……あの……」


「ほら、遠慮しないで。君もアリオンくんと同じで魔法は雑なところがあるからね。僕がしっかりきたえてあげるよ」


 カインは少し後ろに下がる。悪いが俺はリックさんに未だガンガン踏まれているので助けには入れない。

 というかカインの失言のせいなので自業自得だ。大人しく俺と同じ状態になればいいと思う。


 キャリーとシオンもカインからすっと目を逸らした。

 そんな二人を見て絶望した顔になるカイン。


 カインに許されているのは肯定の言葉だけだ。カインは観念したようにゆっくりと口を開いた。


「…………は、はい……。お願いし」


 【カァーン!カァーン!】


 カインの言葉が終わる前に、喧騒けんそうを割る鐘の音が第一訓練場に響き渡った。



読んでいただきありがとうございます。

今回は少し早めに更新できました。

この調子で更新できるよう頑張ります。


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