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好きな人を友人に紹介しました  作者: 天満月 六花


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アリオンの頬


 思いついた作戦を直前で怖気おじけづかないようにしっかり深呼吸をする。


「か、カリナ、スカーレット……わ、私……頑張ってくるわ……!」


「え、ローリー何をするの?」


「ローリー、それ大丈夫なこと……?」


 カリナとスカーレットが心配そうに聞いてくるのでこくこくとうなづく。


「だ、大丈夫、よ!」


 私の気合が入った言葉に二人は顔を見合わせる。なんだか信じてもらえてない気がする。


 ――で、でもでも!大丈夫、な……はずよ!


 大勢の目の前でやるのは恥ずかしいけれど、人々の記憶に残る衝撃的なことを起こすには仕方がないのだ。


「ローリー?何をやるつもりなんだい?」


 兄がまゆを寄せて聞いてくるのでふいっとそっぽを向く。


 ――お、お兄ちゃんの目の前……!は、恥ずかしいけど……頑張らなきゃ!


 そう、それだけアリオンの変なうわさが巻き起こるのは嫌だ。


「お兄ちゃんは解決策出してくれなかったから、言う必要ないもん。あと、私がやることだからアリオン怒ったりしないでよ」


 目だけで兄を見ながら言うと兄は難しい顔をした。


「本当に何をするつもりなんだい?」


「言わないもん。それやったら帰るから。お兄ちゃんも気をつけてよ」


 言わないことを悟ったのだろう。顔を片手でおおって大きく溜め息を吐く。


「わかった、気をつけるよ。ローリーも気をつけるようにね」


 そう言って頭を撫でてくるので頷きながらカリナとスカーレットに向き直る。


「そういうことだから、スカーレットも気をつけて頑張ってね。あとアリオン達にもそう伝えておいてもらえると嬉しいわ。あ、あとメリアのことは任せといてってシオンに言ってほしいの」


 任せ過ぎだろうかと心配になりながらスカーレットを見ると、眉を下げながらも頷いてくれる。


「ええ、それはもちろん伝えておくわ……。けれど……ローリー、変に思い詰めなくていいのよ?」


「お、思い詰めてないわよ!?」


 否定するけれど心配そうな顔のままだ。


「……カリナも、私たぶん走ってこの場をあとにするから……訓練場から出たら止まるから、ゆっくり来てくれたらいいからね?」


「ローリー?それほんとに変なことじゃないの?」


 困惑した表情で見てくるカリナから目をらす。……なんだかみんなにこんな風に言われると変なことのような気がしてきた。


 しかしやると決めているからやらない選択肢はない。


 アリオンがシオンの奥のポケットに手を突っ込む。ポケットの奥の方に入っているのか探しているような様子だ。


 ――そ、そろそろ……ね!お、お兄ちゃんに何をやるかバレたら止められそうだから、手早く素早くしないと……!


 すぅ、はぁ、と深呼吸をして心を整えようとするが、今からやることを考えただけで心臓が爆発しそうだ。


 ポケットを探っていたアリオンが止まる。どうやら物を見つけたらしい。


 私はぐるぐると今からする事を頭の中で想像する。ちょっと頭が沸騰ふっとうしそうだ。


 目の前ではシオンがバタバタと暴れたがっていたがユーヴェンとフューリーさんがそれを許さない。


「シオン、こんなに奥に入れやがって……一応は持ってきたくせに往生際おうじょうぎわ悪すぎだろ」


 文句を言うアリオンをシオンがにらむ。


「う、うっせぇな!……一応……メリア好きそうなもんだし……渡そうかなって一瞬考えたんだよ……。でもやっぱり気持ち悪いかもって……」


 ボソボソと言い訳をつむぐシオンにアリオンが溜め息を吐く。


「考えすぎなんだよ、お前。ゴート嬢に渡してからそういう事は考えろ。渡す前から考えてたって意味ねぇだろうが」


 アリオンの言葉にシオンは不貞ふてくされる。


「とりあえずこれはローリーに渡してもらうからな!観念して諦めろ」


 シオンは黙ったまま小さく頷いた。そうしてアリオンがこちらを向く。私の緊張が最大限にたっする。


 ――い、今!


 タッと走ってアリオンの側まで行く。


「ローリー、これ……」


 そう言ったアリオンをさえぎるようにメリアへのプレゼントを差し出してくれた手を取り、素早くプレゼントを抜き取る。

 そうしてから、ぎゅっと抱き着いてアリオンの腕を引っ張った。


「はっ!?ろ、ローリー!?」


 目を白黒させて顔を赤くしたアリオンは何故か私から顔を逸らした。


 ――ちょうどいいチャンスだわ!


「ローリー!」


 兄のとがめるような声が聞こえた。もう時間がない。

 アリオンの腕を下に引っ張って背伸びをして、アリオンの頬に自分の顔を近づける。


 そして。


 そのまま頬に口付けた。


 アリオンのなめらかな肌に自分の唇を当てたことに、自分自身で動揺しながら素早く離れる。


「じゃ、じゃ、じゃあ!また、ね!」


 声を裏返しながらすぐ後ろを向いて走り出す。兄の顔とか怖くて見れないので少し下を向いて走る。


「あっ!ローリー待って!ユーヴェン、行こう!」


 カリナがユーヴェンに声を掛けて追ってきてくれる。


「あ、え、あ、お、おう!」


 ユーヴェンも動揺しながら走り出す音が聞こえた。


 ドサリと何かが落ちたような音が聞こえたけれど振り向けない。


 しばらく私達のあわただしい音しか聞こえなかった。


 私が訓練場の入口に着く直前、今までの静寂せいじゃくが嘘のように周囲の人々がき上がる。


 ――あああぁぁぁ!!は、恥ずかしい……!!


 アリオンの頬は硬いけれど柔らかかった。自分の唇でその感触を確かめてしまうなんて、なんてとんでもないことをしているのだろう。


 その恥ずかしい勢いのまま訓練場から出る。カリナにここで止まると言っていたから入り口の脇に避けて止まった。

 壁に背をつけてから両手で顔を覆う。


 ――ひゃあぁぁ!!とっても大胆なことしちゃったわ!!


 羞恥しゅうちとトキメキで心臓が破裂しそうだ。


「ローリー!」


 カリナが焦った様子で訓練場から出てくる。出た所ですぐに周りを見渡し、私を見つけるとホッとしたように息を吐いた。


「ローリー、カリナ!大丈夫か!?」


 ユーヴェンも続けて来たのでコクリと頷く。たまらず走り出したけれど心配をかけてしまったようで、申し訳ない気持ちが湧く。


「ごめん、二人共……走り出しちゃって……。ちょっと……あのままいるのは……恥ずかしくて……」


 指をくるくるさせながら謝る。恥ずかしくて俯いたままだった。


「それは大丈夫だよ、ローリー。ふふふ、でも大胆なことしちゃったね」


「う……」


 思わず目を忙しなく動かす。


「あれはびっくりしたよ。アリオンも突然過ぎて何が起こったかわからない顔してたぞ」


「え、そうなの?やっぱりちょっと……やり過ぎた、かしら……」


 ユーヴェンの言葉に不安になると、カリナが私の肩をつかんでのぞき込んだ。


「大丈夫!ブライトさんは今頃頬にキスされたことを理解して、とっても嬉しくなってるよ」


 にこにこと笑って言うカリナにはなんだか圧がある。それに目をまたたかせながらも、カリナの言葉を信じたくて小さく頷く。


 それにほっとしたように笑みを浮かべたカリナはくるりと首を後ろに向けた。


「ユーヴェン。ユーヴェンならブライトさんが今どんな顔しているかわかってるよね?なのにローリーを不安にさせるような余計なことは言わない」


 カリナの声にとても圧がある。……ちょっと怖い。


 ユーヴェンの顔が少し青褪あおざめた。カリナの怒りが伝わったのだろう。


「ご、ごめん……。うん、ローリーを好きなアリオンなら……暫く思考停止したあと、すっげぇ嬉しくなって……リックさんに怒られてると思う……」


 ユーヴェンは兄の情報まで入れてきた。やはり兄の目の前であんな事をしてしまったのは失策しっさくだっただろうか。


「ユーヴェン?」


「はい!余計なことは言いません!」


 首をかし平坦へいたんな声で名を呼んだカリナに、ユーヴェンはビシッと背筋を伸ばしながら冷や汗をらす。

 そんなユーヴェンを見てカリナは満足そうに頷いた。私からは見えないけれど、カリナが満面の笑みを浮かべているであろうことが予想できた。


 ――カリナ……最初はユーヴェンに怖がられていることを気にしていたのに……。


 ユーヴェンがカリナの言う余計なことを言い過ぎるからだろうか。もうユーヴェンを調教しているようなやり取りだ。


 ――ちょっと、悪い気がしちゃうわ……。


「あ、あの……少し質問が……」


「うん、何?」


 ユーヴェンはカリナを気にしながら口を開く。カリナはとても優しく聞いた。けれど優しいのに圧がある気がする。……気のせいかしら?

 いや、ユーヴェンが少し顔を青褪めさせた。気のせいではないのだろう。


「その……なんで……ローリー、いきなりアリオンの頬にキスしたんだ?」


 ユーヴェンの全くわかっていない質問に、カリナの血管が切れた音が聞こえた気がした。


 魔導具部署への道中、そもそもの騒動を起こしたこと、ああいう距離感が周囲の誤解につながることをユーヴェンはカリナから懇々《こんこん》とかれていた。


 私は火照ほてる頬を抑えながら、後ろから二人をながめて魔導具部署へと向かった。



読んでいただきありがとうございます。

もっと更新速度を早められるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。


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