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公爵家

 

 公爵家に来てから何故か令嬢教育始まりましたよ。

 テーブルマナーにお茶の入れ方、姿勢等々………礼を習うだけで筋肉痛ってなるんだね………。

 王宮で王妃様のお友達の伯爵家奥様に習ったことは一時間程で習い終わって、伯爵家奥様とやってたことはおままごとみたいなものだったんだと再認識した。

 よくそんな人に講師なんてさせようとしたな、王宮の人も。


 王宮にいた時は異世界や貴族なんてこんなもんか、ってぶっちゃけ思ってたけど、プロはいた。

 公爵家で働いている人達は皆プロだ。感激した。

 国の中枢の残念さが更に浮き彫りになったけど、まぁ、今の私にはもう関係ない。

 公爵家奥様にもいつまでも居ていいと言って貰えたし、公爵家奥様のバックを得た今、私はもう王宮と関わり合う必要はないのだ。

 もちろん王宮に帰りたい気持ちは一ミリもない。




 私が公爵家に来て二週間が立った頃、私と騎士様の婚約が正式になった、と言われたんだけど??

 はっ!もしやこの為の令嬢教育か。


 や、ていうか、婚約??

 チョットマテヤ。


 そもそも騎士様は私との婚約を視野に入れての世話役だったらしい。

 世話役をしながら親交を深め、その後結婚アンド爵位、ということだったらしい。


 まぢか異世界。

 勝手に結婚相手決めてくるとか。


 ただ、結婚相手は私が騎士様以外で気になる人がいればその人と、という有余はあったらしい。

 あったらしいけども。基本は引きこもり、部屋から出るときは護衛という監視つき。

 その護衛も騎士様か見習い二人のどっちか。

 他に会うのは聖女教の頭の狂った残念な人達のみ。

 魔法の先生も一応男だけど、あの人はナイし。


 どこに出会いの時間あった?


 どうやら私が騎士様に嫌がらせをするつもりで引っ付いていたのも、私が騎士様に気があると勘違いさせてしまったらしい。

 そこに騎士様に付けられた首のキスマー………じゃなくて、傷ね!傷!

 が追い討ちとなって私と騎士様の婚約が正式なものとしてなってしまった。



 私の率直な感想は、騎士様カワイソー、である。

 将来有望な騎士様なのに私みたいな厄介者の世話役やらされているだけでも可哀想なのに、結婚相手も自由に選べないなんて。貧乏くじすぎる。


 だけど、私だってこの国で生きていく術が必要である。騎士様には私の為に尊い犠牲となってもらおう。

 公爵家奥様は騎士様との結婚が嫌なら公爵家に養女として迎え入れることも出来ると言ってくれたけれど、公爵家の養女になると公爵家の娘として嫁に行かないといけないし、もしかしたら聖女教の信者の嫁になる可能性があるので、それよりもまだ騎士様の方が安心であると判断した。



 騎士様と婚約が決まったとしてもそれから騎士様とは会うことはなかった。なんか実感ない。

 どうせ私と騎士様だから今までと変わらないだろうけど。

 愚痴聞き係が政略結婚の相手になっただけだ。多分。


 そもそも、私と婚約する可能性を知っていたなら騎士様が私に服とかプレゼントしてくれても良かったはずだよね?

 それがなかったということは、騎士様それだけ私に興味ないってことだろ。

 アノヤロウ………

 ちょっとムカついてきたかも。





 公爵家に来てから夜はメイドさん達とお茶会をするのが日課となっていた。

 あれ、お酒も入ってるけど、これってお茶会って言う?

 まぁ、細かいことはいいか。


 日本にいる時はまだ二十歳前だったからお酒は飲んだことはなかったけれど、この世界ではとっくに成人過ぎてるのでお酒飲んじゃってますよ、フフフ。

 そして私は、とってもお酒に弱かった。残念!


 お酒に流されるまま、王宮での生活の細かいことも喋っていたし、嫌がらせされていたことも、あのトラウマになった箱のことも気が付いたら喋っていた。


 っていか実はメイドさん達に尋問されてた………?


 王宮での生活以外に収まらず、私は前の世界でのことも喋ってしまっていた。

 ぶっちゃけ何を喋ったのか覚えてないんだけど、けっこうボロボロ出したよ。

 よくメイドさん達も聞いていてくれたものだと思う。絶対下らない話ばっかり喋っていたはずだ。


 今まで誰にも喋ったことなかった、前任の愚痴聞き係の友人にも喋ったことないことまで出てたし。


 まだ私が小学生の時、父が仕事を辞めた理由を私のせいにしてきたことがあって、まだピュアガールだった私はとってもショックを受けて、何年もその事を引きずっていた。

 開き直るまで父の言葉に素直に傷付いていたんだけど、高校生になってからやっと気付いた。

 私のせいで仕事を辞めたと言われたけれど、それまでも何回か仕事を辞めている父は、ただ仕事を辞めた理由を自分が根性なしだからではなく、私のせいにして逃げたかっただけではないかと。

 そう、父はただのクズだったのである。

 父をそう結論付けれるまでけっこう苦しんできたんだけど、この話はあの友人にも言ったことはなかった。

 人は本気で傷付いていることは言わなかったりするものなのだ。


 他にも家事をしなくなった母のこと、喋ってくれなくなった妹のこととか、たっくさん愚痴ってしまっていた。




 けれど、愚痴っといて何だけれど、この愚痴の無駄さも日に日に強くなってくる。


 父にも母にもとっくに見切りを付けていた。

 でも私はまだ学生で、生活していく為には親に頼るしかなくて。


 でも心はとっくに離れていたから、愚痴を言うことでしか、見切りを付けた親に対しての関心を保つことが出来なかった。んだと思う。


 いつか、ひっそりと消えてやろう。いつの間にか私が居なくなって、地味にでも洗い物をする人間が居なくなって困ればいい。

 そして十年とか、二十年は連絡を絶つ。

 それが私の目指す復讐だった。



 この世界に来ることで、私の復讐は完成された。


 残された家族がどうなったのか分からないけれど、まあもう会うこともないし、どうでもいい。


 この淡泊な性格は、血だと思う。

 何せ父も母も子供に対して興味の薄い淡泊な人達なのだから。


 あんな人達でも親なんだから子供を愛していて当たり前だろう、とか言うんだよ。

 随分と薄っぺらい愛情だね?

 父とはもう何年もまともな会話もしてないんだけど。



 でも、もう私にはあの人達の愚痴を言う必要なんてないんだ。

 それに、恵まれた日本での生活の愚痴を言う度に無駄な気持ちが積もり積もっていく。

 バイトと家の家事が大変だったって言っても、多分こっちの世界では私の歳ならそれくらい当たり前とか思われてそうだし。

 もう結婚して子育てしてる人だっているのに、大変だった、なんて言う度にアホなこと言ってる気がしてくるんだよ。

 私もそろそろ愚痴ばかり女卒業かな?



 まあ、心はそんなに上手く切り替えられないけれど、でも両親に対する心はほぼ残っていない。

 妹のことは気になるし心配だし、私が唯一愛情を向けてきた子だけど、一緒に戦ってくれるどころか私の重荷の一つにしかならなかった妹に対する愛情は薄れてしまっていた。


 両親に対する気持ちよりも、私に『性格悪い』と言ってきた友人や、隣の席のオタマザコンに対する気持ちの方がまだ昇華出来てないかもしれない。

 所詮は当たり前に受け取るだけでいい甘ったれには苦労人の気持ちなんて分かるまいよ。

 フンッ。私はこっちであいつらが経験することもなかろう異次元な経験してやるからいいんだ。

 もうしてる気もするけど。

 やーい、羨ましいだろ、こっちの世界は魔法があるんだぜ。


 愛理に対する嫉妬の気持ちはこっちに来てからほとんど無くなった。

 生活の苦労が無くなると私の心も大分穏やかになっていた。

 王宮での生活は公爵家の人達には不評だったけど、何もしなくてもご飯が食べれるだけましである。

 と言ったら公爵家奥様に泣かれた。






 なんて私の心の葛藤も全てメイドさん達にただ漏れの日々も、私が王宮を出てから一ヶ月立った。


 公爵家三男からとか、王宮の情報は公爵家に漏れまくってますよ。

 王宮で私の部屋に来ていた中で唯一ちゃんと働いてくれていたメイドさんと公爵家のメイドさんに姉妹がいるらしく、そこからも情報が入ってくる。

 王宮のメイドさんもけっこうひどい勤務状況らしく、公爵家のメイドさん達もかなり怒ってる。



 愛理もかーなーりー自由にしているようだ。

 魔力酔いの聖女狂いに「仕事なんて辞めちゃえば?仕事しない方が一緒にもっといられるじゃん」と甘い言葉を掛けて、その言葉通りに仕事を辞めてしまった人に「仕事もないのに何しに来たの?仕事しない人はここ(王宮)に来ちゃ駄目でしょ?」

 と会うのを拒否してるらしい。

 これにより何人もの国の上層部の人が辞めてしまった為、王宮の仕事がちゃんと回ってないらしい。



 正気を保っている人が聖女を注意してもらおうと私を訪ねて公爵家に来ているようだけれど、

 知 る か っ。

 一応公爵夫人に戻りたいかと聞かれたけれど、全く戻りたくないと返事はしておいた。


 愛理を聖女として崇めているのはそちらなので、聖女の行動の責任はちゃんとそっちで取って欲しい。

 宰相さんが今や真っ白な頭になっていようが私には関係無い。

 宰相さんにはハゲの呪いは効かなかったようだけれど、白髪の呪いが掛かったらしい。

 しかも宰相さん、奥さんに離婚を迫られているらしくて今は仕事も家も大変らしい。ウケる。


 他にも第二王子の婚約解消騒動とか、隣国に留学してた公爵家末っ子のお嬢様の婚約破棄騒動とか色々あったけど、たった一ヶ月で問題起こり過ぎじゃない?



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