果実は噛むほど甘くなる
「私、告白されちゃった!」
退屈な退屈な数学の授業を終え、昼を一緒に食べていた佑果がなんの前触れもなくカミングアウトしてきた。
いや、正確には午前中ずっとそわそわしてたのは、おそらく言うタイミングを見計らっていたのだろう。
「誰から?」
正直心底興味はないが聞かないのもウザそうなのでしょうがなく聞く。
「部活の先輩!」
この高校は女子校だから中学のだろうか。
「中学の?」
「高校の」
「そっか~」
あまりにも普通に述べるものだから流してしまったが
「え?女子?」
「女子校なんだから当たり前じゃん~」
私が頭がおかしい風に言われるので芽衣に視線で助けを求める。
「美花、別に女子校では女子同士が付き合うのは珍しくないのよ」
鳥海先輩の時も思ったがこの学校は私の知らない価値観があるみたいだった。
「それで、佑果。付き合うの?」
私の理解を差し置いて話を進めていく。
「うーん、少し悩んでるんだけど付き合うかな~」
「え、佑果はその先輩の事は好きなの?」
あまりにも軽いノリだったのでつい聞いてしまった。
「好きか嫌いかで聞かれたら好きかな~。私のこと可愛いって言ってくれたし!」
その後の二人の会話にはついては行けなかった。
好きではないのに付き合うのか?
付き合っているうちに好きになる?
私はそんな風には考えられないな…
気がつくと放課後、私は茶道部へ足を運んでいた。
人を好きになるという疑問を解消するのに一番適当な人がここにいると思ったからだ。
「こんにちは、花村先輩」
「こんにちは、美花ちゃん」
そこにはいつもと変わらない優しい雰囲気の先輩が立っていた。
中に入れて貰い率直に聞く。
「先輩は告白されたことあるんですよね?」
「ええ、何度もあるわよ」
「その人たちとは付き合ったんですか?」
「ええ、私は愛を求められたら返したいもの。」
「その人の事は好きなんですか?」
「みんな等しく好きよ。だから愛を与えるの」
「その好きはloveの好きですか?」
その質問には先輩はただ笑うだけだった。
きっとこの人は誰かを特別好きになることはないのだろう。
そして…きっと…
「ねえ、先輩?先輩は誰かを愛したことはありますか?」




