雨
「雨か~」
朝、雨の音で目を覚ましカーテンを開けるとそこには梅雨の訪れを告げるように雨が降っていた。
あの日、先輩に誰かを愛したことがあるかを聞いてから何週間か経っていた。
あの後、花村先輩は考え込み頭から湯気を出して倒れた。
その後、部室にやって来た鳥海先輩に介抱を任せて帰りそれからずっと茶道部を訪れていない。
身支度を整え充電器からスマホを取り外すと画面には花村先輩からのメッセージが届いていた。
なんだろうと思いながら内容を確認すると今日の放課後茶道部へ来てほしいとのことだった。
「…めんどくさいな~」
本当にめんどくさい。
雨も…自分の…も
放課後、1日雨は降り続け少しはこの雨と一緒にめんどくさい気持ちもどこかへ流してくれれば良いのに気分は下がる一方だ。
少し教室の机で伏せて気持ちを落ち着かせるつもりだったが気がつけば下校時刻間際だった。
「うわっ、急がないと」
鞄を持ち階段を降りて昇降口に向かい傘立てから自分の傘を探すが明らかに自分の傘がなかった。
「だから雨は嫌なんだ…」
幸い小雨になってきてはいたがそれでも傘がないとキツいぐらいの雨量ではあった。
「しょうがない…」
鞄を頭に乗せて部室まで走る。
水溜まりを踏み靴の中が濡れ最悪だ。
「すみません、遅くなりました!」
ようやく部室に着いた時にはYシャツが透けていた。
「わぁ、美花ちゃん。傘はどうしたの?びしょ濡れじゃない。」
花村先輩が奥からタオルを持って来てくれる。
「いやー、傘が盗むれてしまいまして」
内心、腸が煮え繰り返りそうなのを堪えて笑顔で答える。
「それは災難だったわね…」
拭いたタオルを先輩が預かってくれ中に通される。
「あれからね、色々と考えたの。」
出された温かいお茶を飲んでいるときに先輩が切り出してきた。
「私は過去に様々な人と付き合って来たわ。先輩に後輩に同級生に本当に多く。その全ては求められたから。私が求めたことはなかった。だから毎回私じゃなくてもいいんでしょ?と言われてフラれて来た。確かにそうだと思った。」
先輩がお茶を飲み干し何かを決意したような顔をした。
「その言葉に私が傷つき疲れた時に貴方が現れた。私を必要とせず好意を示さずいつしか貴方に引かれていった。」
「だからね…その…」
待って
「私と…」
その言葉を
「ねえ、美花ちゃん。私と付き合わない?」
聞きたくはなかった。
その言葉は外から聞こえる再び強まった雨の音にも負けないくらい大きく聞こえた。




