3話
夕暮れは、いつの間にか夜へと沈みかけていた。
旧市街を彷徨い続けるリナの視界に、遠く、小さな光が揺れた。
焚き火だった。
一瞬、足が止まる。
追っ手かもしれない。罠の可能性もある。
だが――喉の渇きと空腹は、そんな思考を押し流していた。
もう、敵でも追っ手でもかまわない。
リナはふらつく足取りのまま、その光へと近づいていった。
崩れた建物の陰を回り込み、焚き火の明かりがはっきりと見える位置まで出る。
焚火の前に座っている人影が見えた。
中年の男だった。
でっぷりと腹の出た体格。
低い背丈に、がっしりとした腕。
煤けた外套を羽織り、無造作に薪をくべている。
まるで、物語に出てくるドワーフのような男だった。
男はリナの気配に気づくと、ゆっくりと目線を上げた。
炎に照らされたその目が、じっとこちらの方向を見据える。
同時に、手元に置いてあった片手斧へと手をかけながら問いかける。
「……誰だ」
リナは答えようとした。
だが、言葉が喉に張りついて出てこない。
乾ききった唇をわずかに動かし、ようやく絞り出す。
「……食べ物を……分けて、ください……」
それだけで、精一杯だった。
ドワーフはしばらく何も言わず、じっとリナのいる方向を見据えていた。
どうやら炎の加減でこちらの姿はよく見えていないらしい。
炎の揺らぎが、その表情を断続的に照らす。
やがて、小さく息を吐く。
「……こいつはおったまげた。こんな場所にお嬢さんがいるとはな。」
顎で焚き火のそばを示した。
「とりあえず、こっちに来て座んな。」




