2話
気づくと、日は暮れていた。
どうやら眠ってしまっていたらしい。
あれほど全神経を尖らせていたはずなのに、その糸がどこで切れたのか、まるで覚えていなかった。
リナはしばらく、寝起きのぼんやりとした頭で周囲の様子を探った。
崩れた壁。
濡れた石畳。
遠くで風が廃墟の隙間を抜けていく音。
雨は止んでいる。
追っ手の気配はない。
どうやら、やり過ごせたらしい。
リナはようやく大きく息を吐いた。
胸の奥に詰まっていたものが、少しだけほどける。
だが、危機が去ったと分かった途端、今度は喉の渇きと空腹が同時に襲ってきた。
無理もなかった。
水筒はとうに底をついている。
ここ二、三日、まともな食べ物も口にしていない。
最後に食べたのは、たしか鞄の底に残っていた、パンの破片だった。
それを思い出した途端、胃がきゅっと縮む。
唾を飲み込もうとしても、喉は乾ききっていてうまく動かなかった。
そのうえ、眠ってしまったせいで、体は芯まで冷え切っていた。
濡れた外套が肌に張り付き体温を奪う。指先は冷たいという感覚すら通り越して、ほとんど自分のものではないようだった。
このままでは、動けなくなる。
そう思った瞬間、反射的に立ち上がろうとした。
立ち上がろうとした瞬間、激痛が足に走り、視界がぐらりと揺れた。
リナは膝から力が抜け、その場に尻もちをつく。
しばらく動けなかった。追われる最中、転んだ拍子に足を捻ったらしい。
足首に手を当て、痛みの波が収まるまでじっと待つ。
それから両手で杖を握りしめ、ようやく、ゆっくりと立ち上がった。
さて、どうしよう。
こんな廃墟の真ん中で、食べ物にありつけるとは思えない。
まして、偶然誰かが助けてくれるなどと期待するには、
あまりにも都合が良すぎた。
ここは人が営みを諦めた場所。
捨てられた土地。恐ろしい魔女の住処なのだから。




