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4話
ドワーフは、いったん警戒を緩めた。
完全にではない。
だが、今すぐ斧を振るう必要はなさそうだと判断した。
手元にある自分の背丈ほどもあるリュックに手を伸ばす。
中から深底のカップを取り出し、焚き火にかけてある鍋から、夕食用に仕込んでいたごった煮のスープをすくった。
湯気が立ちのぼる。
それを無造作に差し出す。
「食べな」
少女は礼を言い、無言でそのスープを見つめている。
――それにしても。
赤髭を生やしたドワーフ男――ドアキン・ドルヴァルドは、目の前の少女をじっと見据えた。
年は、十六、七といったところだろう。
白銀の髪をおさげにまとめている。
漆黒の瞳。
白い肌は、泥と雨にまみれて汚れていた。
外套は灰色。
その下には丈の短い紺のローブ。
足元は革のブーツ。
そして――杖。
先端には、魔晶石が埋め込まれている。
見間違えるはずもない。魔法使いのそれだ。
だが。
ドアキンは、わずかに眉をひそめた。
何かが、引っかかる。
見た目の問題ではない。
もっと別の――説明のつかない違和感。
ただの年頃の娘ではない。
そう感じさせる“何か”が、確かにあった。
――そもそも、なぜこんな場所に一人でいる。
この廃墟に出るのは、追い剥ぎか、飢えた獣か、あるいはそれに類するものくらいだ。
――あるいは……
ドアキンは、何も言わず、ただリナの様子を見続けた。




