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無口な少年の描いたセカイ  作者: 遥野 凪
プロローグ
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18/26

昼休み委員会

こちらのクラスの体育委員、麥瀬は、隣のクラスの体育委員、鴉野と口論になりかけ……臨戦宣言?

巻き込まれる主人公、汐宮は、気にかけながらも手作りお弁当を食すが…………。

(麥瀬と隣のクラス体育委員……)

おかずのきんぴらごぼうを口に運びながら、ぼんやりと思索する。

(互いの因縁関係は、競技別で分かれた時の会話で明白だった……)

周りでは相変わらず小島が出来ており、自分を含めた数人だけが孤島状態。打破方法は、既に分かっているが、実行するかはまた違う。

(だが、あくまでその時点では普通の友人…みたいな関係に映った)

そう思いながら、ミートボールを箸で(つま)む。

(やっぱり、『あの言葉』が直接的だろうな……)

『それにしても、その湿気たメンバー。明らかに人選ミスだな』

(けど、妙に違和感がある)

6人組のグループに属する麥瀬の様子をチラリと、見てみる。

(すえ)(まつ)は、違うって何度言えば……」

「まあまあ、そこは話し合いで決めようではないか!!」

「お前は何かと、話し合いしようとするな」

(やっぱり……そうだよな)

相も変わらず、リーダー含めグループの面々に向かってこの口の悪さ。

程よい声量と、昼休みといえば恒例の放送によって周りには聞こえてないが、彼の口の悪さはクラスメイトなら誰もが既に周知している事実だ。

と、ここまで考えたことを整理すると矛盾にどうしてもぶつかる。

(麥瀬は、ああいうタイプならあの言葉は実に反りに合わない……)

考えながらも手持ち無沙汰な右手で、二段弁当のおかずの方に蓋をし、その右手を置き去りにされている、3分の1ぐらいのご飯が入った方を持つ。

真っ白でぺったんこになった白米には、炊きたての温かみも艶やかさも、微塵とも感じないが、咀嚼することによって最後の美味しさを放つ。

(もしかしたら、思っているよりもずっと良心的善意の持ち主……なのか)

首を少し傾げながら、彼の方をまた見てみる。

「なんかまーくんって大昔の暴君みたいだよねー」

「暴君スエ?」

「暴君というよりかは独裁者じゃね……?」

好き勝手に言われてるので少しいたたまれなくなり、目を逸らす。

(傍若無人に振る舞う姿は、彼らが比喩するような悪者だ……だが)

麥瀬というクラスメイトは、簡単にそう言いくるめてはいけないような気がする。

(なんとなく、隅に置けないという感じがある気がする)




「汐宮君」

ずっと彼のことを考えていたら片思いの女子みたいなので、毎日と同じように、無心になり、普段通り(そこは、今もなお最長記録を更新中)黙々と昼食を摂り、いつもするように静かに手を合わしていると、名前を呼ばれた。

(本当は必要以上に他人と関わりたくないのに……)

そんな愚痴を心の隅っこに置き、顔を上げる。

先生以外から名前を呼ばれる行為自体、事多くない訳で、必然的にクラス内で名前を呼ばれることなんて皆無なので、自分の名前を耳にしても、気のせいと割り切っている。

しかし、今回はハッキリと名前が呼ばれた……気がした。

(この人は確か、もう1人の……)

目に映ったものといえば、焦げた茶短髪の女子が腕を組んでいた。

「図書委員会」

そう言いながら、瞬きする。どこかわざと、愛想悪くしてる感じが伝わってくる。

(図書委員の人。……自分の後に立候補してきた)

流石に同じ委員の人ぐらいは覚えておかないと。と思い、一応覚えていた。顔までは一致しないが、この流れで、私は文化委員なんだけどね♪とか言われても困る。

「図書館で、13時から集まるんだけど」

…………。

(何それ、聞いてない話なんだが)

委員会の仕事ぐらい普通、2人共に伝えるものだろう。何故、彼女にだけ伝えられているのか……1ミリも理解出来ない、意味が分からない。

「その様子だと、貴方には伝えられてもないみたいね……」

全くもってその通りだ。かなり悪意のある苛めを受けている。……先生から。

「となると、担任が伝言を兼ねて、(あたし)に言っていたのね……ごめんなさい」

彼女はというと、こちらの気持ちを察したらしく、謝罪の言葉を述べつつ、頭を下げる。

彼女の声は無機質ながらも、申し訳程度の気持ちはこもっていた。

「いや、担任が悪いだけ……だろ」

ただ、苛立ちなどの不快感が残ることなく納得出来たのは、彼女の話し方が、無意識的にか、相手を思いやるような口調だからだろうか。

「むしろ、言ってくれて、ありがと……」

ならば矛は向けない。そんな人に怒る資格なんて不必要だ。そう思い、単語を繋ぎ、お礼を述べる。

(悪人ではないだろうし、多少は仲良くしとかないとだし)

クラスメイト達の会話のざわめきの中で、彼女は、聞き取れるギリギリの声で話した自分の声を聞いて、少しだけ口角を上げて、微笑む。

「汐宮君も行くでしょう?」

口角をすぐに戻すと、先程の伝言の回答を投げかけてきた。だが、この状況では、答えは選ぶべきではない。

無言で微かに頷くと、その返事を待っていたように呟いた。

「……なら、私も行くわ」

目元を少し細め、くるりと後ろを向きそのまま、スタスタと入口に向かって歩いてく。

(……なら?サボる気だったのか、この人)

「何してるの。早く、行きましょう?」

そんな言葉が飛んできた頃には、教室の入口に手をかけていた。

「あ、はい……」

お茶を一口飲んで、慌てて彼女の元に急いだ。うかうかしてるといつの間にか放っていかれそうな勢いが秘められている気がしたからだ。




(袖だの腕だの掴むのは、普通じゃないんだな。ちょっと前までは当たり前だったことだけど )

そんなことを思うのは、間違いなく今までこの学校で関わってきた女子と今、共に向かっている彼女の歴然とした行動のせいだ。

(当たり前って、本当は凄いことなんだな…………)

クラスの面々も、以前の誘拐女先輩の1件みたく、彼女なのか!?と疑惑の目を向けず、委員会活動かと常識的な視線で見てもらえた訳で(一部からは勘違いされていたが)、比較的、何も厄介事なく向かえている。

(そもそも、まるでここのやりとりはないみたいに意識も向けてもない人もいた訳だし)

そして、あわよく出来れば、こんな具合にモブキャラとして、影の薄いクラスメイトJぐらいになるのが希望。

「あの、九条?」

「ん……何か、汐宮君?」

振り返ることもせず、さっさと行く彼女は、背筋もぴしりと伸びていて、毅然(きぜん)とした風格を持っている。

「いや、なんでもない……」

「そう」

(さて……)

さっきも言ったことだが、彼女は、このクラスのもう1人の図書委員……であり、少し訳ありの生徒。

(……九条(くじょう)灯穂(ひすい)さんな訳なんだが)

どれぐらい訳ありなのかというと、かなりやばいと思う。

(今から8年前、『模擬戦』を引き起こし、たった3年で『特待制度』の廃止を余儀なくさせた主犯格)

図書棟までの長い廊下で、その事件のことを考えてしまう。

かつて、とある宗教団体が、毒ガスを使った大事件があったのは、歴史的大事件で、今もなお取り上げられることもあるが、内容はそれよりも酷いものではないかと思う。

(父の書類にも、主犯格の家族構成までは分からなかったけど……)

ただ、名字が同じだから、もしかしたら親族なのではないかと思っている。

(結構、あの事件自体風化しつつあるからな…………)

それほどの事件なのにも関わらず、彼女が注目されないのは、学校側が手を回しているのか、それとも、全くの他人なのか……。

「そういえば、汐宮君」

「えっ……」

不意に声をかけられて驚く。

「汐宮君?」

「あぁ……いや、ちょっと考え事してた」

「ふぅん……」

なんのこと?と聞かれなかったので、内心ではホッとしていた。聞かれても、実は君のことを考えてた。なんて言わないが。

「何かあったのか……」

彼女がこちらに聞いてくるということは、何か気になることがあるのだろう。

白虎棟側の廊下には人1人いない静けさで、本当に昼間なのかと疑いたくなる。

「うん。今日、ずっと思ってたことがあって……」

「……」

体育祭の競技のことか。と寸前まで出かけたが、グッとこらえる。あのことは、文句は聞けても、それをどうすることも出来ないからだ。

(いや、今までの女子の流れで、急にラブコールというのも否めない)

今日だけなら、体育祭の線の方が濃いが――

「体育の時間に、何かあった?」

「…………え」

つい、素で驚いてしまう。さっきからこの人は、唐突かつ予想外の変化球といえる言葉を吐き出すから困る。正直に言うと、苦手タイプだ。

(っていうか、なんで女子のこの人は知っているのだ?)

「麥瀬君を見てたらなんとなくそう思ったから、聞いてみたの」

(見てたらって、それって好意的な意味なのか?それともあくまで人間観察の域なのか?)

雰囲気からは察しにくいので、分からないが、どちらとも取れるし、どちらとも取れない。

そもそも、何故この人は、ほぼ他人と話してない(少なくとも、自分は見たことがない)のに、そんなことが分かるのか。

(彼女は、心理学者かメンタリストなのか……?)

「ご名答?」

振り返りこちらに、ニヤリと見てくる。猫みたいに目を細めて。

「……あったよ」

ここで、隠したところで何か得する訳では無いので、正直に自白する。何かをした訳でもないが、何故か少しためってしまった。

彼女はというと、フフッと鼻で笑うと、駆け出して行ってしまった。

(掴みどころない人ばっかだな……ここ)

そう文句を胸に吐きつつ、置いてかれないように走った。

伝書部の先輩に比べれば、かなり楽なピッチで助かったことなんて、誰も知らない。




「すみません、遅れました」

そして、5分後。謝りながら白虎棟のドアを開けたのは言うまでもない。

「俺を待たすな、下等生徒」

「えーと、君は1年代表……1年6組だね」

(もうちょっと呼び出すの余裕もってもらえないんですか……)

文句しかなかったが、指定された席に座った。

図書委員が揃いました!!

一応、校則で男女で委員会をするようになっているので基本的に男女1人ずつです。(クラスによって男女比は変わるので原則ではない)

九条さんは、訳あり生徒ということは汐宮は知っていますが…。実は、少し前に九条さんは出てきてます。(汐宮も会話を交わしている…)

そして、新たな先輩も出てきて…………まだまだ大変ですが楽しんでください!!

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