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無口な少年の描いたセカイ  作者: 遥野 凪
プロローグ
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19/26

言葉の深層と待機

ごめんなさい……5月下旬、平日に更新出来ず結局6月にくい込んでしまいました。

話が迷走してないか不安ですが、前回のあらすじ↓

体育の時間の一悶着があり、クラスメイトの1人を気にする汐宮(主人公)。

昼休みの際も、その人の事を気にかけながらも昼食を摂り終わった頃に図書委員の相方(九条)に呼ばれ、白虎棟(図書館)に向かう。

ただし、その際にその一悶着を相方に突かれる。

相方は知らないはずなのに……そのモヤを抱えたまま、図書委員会は始まる。

(図書委員会の話はまた番外編で書いてみたいです)

「……以上で今日の集まりは終わりだ」

「急に呼び出してごめんね!!」

白虎棟に集められ、13:00から開始した図書委員会は、主に仕切り役の2人が全てを取り合っており、締めの言葉を並べていた。

もちろん、手持ち無沙汰という訳ではなく、手元には、5月及び6月中旬までの当番表が載っているプリントが、配られている。少し退屈になってきたので、そちらにふと視線を落とす。

(この間に、体育祭があるのか……)

その当番表の真ん中辺りの日程……カレンダーでの6月上旬辺りなのだが、その1週間だけ図書館の開放はしない。と決まっていた。

理由としてはその1週目に体育祭があるので、そちらに全力で精進しろと言う暗黙のルールから……とさっきまでの説明の中で、苦笑いを浮かべつつ、話してくれた。

あんな基本、応援団と体育会系しか燃えないイベントの何が楽しいのか、文化系人間にはさっぱり共感出来ない。

「でも、みんな時間通りに来てくれたのは本当に助かったよ!」

2人のうちの愛想が良い方が、そんな感謝の意を話し出したのを見て、これは長くなるし、聞かなくてもいいと判断し、手元のプリントに本格的に意識を向ける。

『5月1日 3年4組 5月2日 3年5組――』

当番表がプリントの4分の1ほど使われており、空いたスペースには一文が3つほど並んでいた。

『※5月14日から3年担当日に1年は見学。なお、組み合わせは7日の会議で決めたものとする』

『当番日には昼休み、放課後に白虎棟に来てください。一応、当日にはSHRにて担任から当番札が渡されます』

『6月13日以降の当番表は次回の図書委員会で配布する予定です』

仕事内容の説明は、今感謝を述べている方が、至極丁寧に説明してくれ、最後には「まぁ、図書委員ってなんとなく想像出来ると思うし、その通りと思ってくれれば全然OKなんで!!」という発言していたこともあって、あまり問題視しなくてよさそうである。

(だから基本、貸出返却だけってことだろう……)

加えて、2·3年のクラスも1年に比べて1クラス少ないだけなので、週に1回も巡ってくるものではなさそうだ。

(もっとも、学期によって担当する学年が違うから、月1ではあるだろうけど)

プリントから僅かに目線を上げると、愛想の良い方……白鷺(しろさぎ)先輩が、爽やかに笑いながら締めていた。

最後まで笑みを絶やさずに話し続けるなんて行為、自分ならそんなこと出来ようもない。笑顔大賞みたいなのに是非ともノミネートするだろう。

そんな風に思っていると、彼と対照的の先輩が口を開いた。

「ふん……相変わらず、詐欺師は大袈裟すぎ」

そう言い放つと、愛想の悪い方……水野先輩が、終わったはずの締めを再び始める。多分、詐欺師は、白鷺先輩の蔑称的なあだ名だろう。鷺=詐欺みたいな。

「ったく、普通に考えて、今朝、担任から言われてるなら、集合時間に確実に、来れるだろ?」

明らかに、嫌味のように言葉を吐き捨てる。

(その普通には、担任が言わないって可能性は頭に無いんだろうな)

そのせいで危うく、自分は委員会ということを知らずに、事後報告と共に、後日呼び出しを喰らいかねなかったのがここにいるんだけど……とは言わず、心で愚痴る。

(隣の人がもしいなかったら、本当に有り得た未来だよ……)

そうならなかった、救世主と呼びたい隣の人……もと言い、もう1人の図書委員、九条 灯穂さんは……。

『そもそも最初は昼休みの放送で知らせればいいって考えだったんだ。それを朝に担任にお知らせしてもらえるっていうのをもっと感謝してもらいたいものだ…』

一言一句、完璧に、先輩方が発した言葉を、ビッシリと手のひらサイズのメモ帳に記していた。後から台本ありますか?と聞かれてこちらですと言って渡せるレベルで。

(メモしてくれ、なんて頼んでないぞ……)

メモ帳を持っていたのは、長年の癖なのかまでは分からないが、かなり手馴れたように使っていた。

(それにしても……早すぎる)

まるで、録音するかのように、ラグさえもなく、メモをしている。

いくら速筆が得意とはいえ、完璧に写すなんて、普通に考えれば人間離れだ。

ただし、隣に座る彼女からすれば、そんな偉業……いや、()業をやっている感覚なんてないのだろう。こちらからすれば、恐ろしさしかないけど。

(多分、こういうタイプの人って、自分が行ってる事=一般的と思ってたりするし)

世の中には普通の事しかしてない天才だけが、天才って訳でもない。彼女が天才なのかは分からないが。

(だから、この人からすれば、話は聞くものではなく、書くものなんだろうな……)

全く違う考え方を、尊重しながら、彼女の完璧すぎるメモを、横目で眺めていた。……つくづく、読みやすくて綺麗な文字だ。

すると、それに気付いたかのように、その欄から外れたところに、横書きを走り書き出す。

「俺が1年だった時なんか、ここまで本があった訳じゃなかったからな。確か、あの時は――」

当然その間も、彼の話は留まることを知らない。だが、なんとなく、彼女は走り書きを終えた後、また書き起こすような気がする。

(特技か、趣味か分からないけど……)

脳の片隅でそんな事を考えていると、書き切ったらしい走り書きを見せてくる。

『ねぇ、あの2人のこと詳しかったりする?』

あの2人とは、前で話してる先輩のことだろう。逆にその2人以外になると誰かさえも分からない。

「……知らないけど」

半ば呆れながら、彼女に届く声音で応える。

(行く途中は、普通に話してたけど、実は話すのが嫌なのか……)

メモしている内容は、メモするまでもない、とてもつまらない内容だ。それに今回のような質問も、口頭なら10秒もかからない。

『ありがとう』

1秒足らずで書いた5文字を見て、先輩方に視線を戻す。

「ちなみに、ここの蔵書数の話をしてなかったな……ここの蔵書数は」

委員会自体は、早く終わったが、どうやら解放まではまだ時間はかかるみたい。

話は長丁場になりそうだ。




*****




結局あの後も、長々と話が尾を引き、先程ようやく解放された。

行きと同じように、話と同じように教室までの長い廊下を、2人並んで歩く。

「九条さん、なんで」

「汐宮君なら、多少は知ってるかと思って」

「あんなメモを…………お?」

途中で見せてきた走り書きについて、問おうとする出鼻を弾くように、全てを言わせずに、また振り向きもせずに、返答してくる。

(というか、普通に話してるけどこの人)

さっきまでの委員会では、自分にさえも、走り書きのメモを見せて、言葉を交わそうとしなかったというのに、こんなあっさり口を開いたのだ。

とりあえずは、人見知り感覚で、知らない人が周りにいたら話せないという体質とでも思っておくことにした。

「ただの私の買い被り。汐宮君は、何も悪くないわ」

パシッと言い切る間延びしない言い方は、潔さがあって、好感度が持てた。男子でも中々そんな言い切れる人少ないし。なんて、尊敬を少ししてしまう。

(それならいいんだけど……)

なんて思いながら、目を通しきったプリントをブレザーのポケットに突っ込む。A4サイズなので4つ折りにすると、すっきり片付いた。

(じゃなくて、聞きたかったのはそれもあったけど……)

聞きたかった事を再度確かめ、遮られた言葉の続きを、頭から出てこいと念じてみる。あんなメモを、あんなメモを……。

「――と仮定すると、あの2人、特段目に付く点はないということ……」

しかしながら、彼女は、頭の中を整理するように、こちらにも聞こえてくるような声で呟く。もしかすると、あの時はわざと聞こえるように言ってたかもしれない。

(だから、聞きたかった事は、あの2人じゃなくて、あんなメモを……)

「だけど、それならアレは何だったのかしら……」

そう呟き、顎元に指をやる仕草は、どこか探偵めいたように見える。実際の探偵がそんな事をするかは知らないが。

(あんなメ……待て、アレって何?)

こういう風に、なんとなくぼやかされたり、曖昧なものって不思議と気になってしまう。それによって、思いもよらぬ物事に巻き込まれるかも知れないという確率が、あるにも関わらず。

本当に、人間とは(自らも含め)愚かだ。……もちろん、第三者としてではなく、個人としての意見。

その方が、後で間違ってたとしても、逃げられるから。だけど、そう思っていても、もう引き返せない所にもう来てしまっていた。

「汐宮くんも、気になるでしょう……アレ?」

こんな風に振られてしまったらもう、どうすることも出来ない。

そして今回も、その過ちの1つになるだろう。こうして、厄介事になりかねない事に、つい興味本位で、首を突っ込んでしまうのだ。

問いかけた本人は相変わらず、顔を向けなかったが、こちらの答えをまるで見透かしたように、答えを待っていた。

(この学校の人は一筋じゃない人ばかりだ……)

彼女を含め、多くの人に関わり、思い描く通りには、少しも上手くいかなくなっていた。

もっと平穏に過ごすはずの高校生活はどんどん遠ざかるばかりだ。

(仕方ない、神様はどうやら見放すし、運命は見逃さないし)

4半期世紀も生きてないけど、この時点で諦観したと自分は思う。

「……アレが何かまでは分からない。ただ、何か気になったんだろう」

ならば、向かい合ってみよう。幸い、彼女には、行きの際に話してくれた麥瀬の話もあり、興味がある。

どうせどうやって逃げようにも不自然しかない状況。つまり、逃がしてはくれないのだから。と思い、稚拙な憶測でしかないが、無いなりの頭を捻って出た回答を彼女に伝えてみる。

「汐宮君。もしかして、私が知り得た事をトレースではなく推理するつもり?」

「お生憎、九条さんみたいに、速筆等は出来ない」

「速筆じゃなくて神速筆(しんそくひつ)よ」

「そのままか……」

神速と速筆……確かに彼女の筆記速度は、そんじょそこらの人らには追いつけない早さだろう。

「その呼び名は、私が決めたわけじゃないわ……」

「呼び名の件は、今度、誰かに話して」

「そうしておくわ」

「ありがとう。じゃあ、さっきの続きだ」

散らばった言葉を元通りに戻し、隣の女子に聞く。彼氏いるの?みたいな軽々しい質問ではなく、まともな質問だ。

「「何故、九条さん(私)が直接話さず、メモを使ったか」」

(え……)

完全にハモった。まるで、こちらの思考をすっかり読んでいたように。

「……ニアピンどころか、完全一致ね」

ようやく、こちらを向いたと思った彼女の顔は、どこか見透かしたように目を細め、口角が上がっていた。

「私、他人様(ひとさま)の思考は手中なのよ」

……何そのチート能力。なんて言えず、平然に装った。

「へ、へぇ……それは凄い」

内心では、どこまで読まれてるのか分からないせいで不安でしかない。が、こういう時に少しでも弱みを持たれると、そこにどんどん漬けられてしまうので、出来るだけ平気そうにすべきだろう。

だが、1つだけ文句を言わせてほしい。

(こんな化物をセットにしないでくれ……)

書いてる方も思いますが、まともなやつはいないのかって思いますよね……

他の人を下等生物みたいに思う人や手中にほぼ掴んでしまってる人やら……

私の通ってた学校にはこんな変人いなかったです。

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