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流転の道  作者: Boneless
虚ろな始まり
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第七章:「魔術師の沈黙」

丘はもはや、あの穏やかな観察場所ではなくなっていた。迫り来る虐殺の焦点へと変わっていた。下の混乱の中から抜け出した五人の人間が、命からがら彼のほうへ登ってくる。その背後では、二十近いオークが族長の命令を果たすため、丘へ向かっていた。彼は逃げる可能性を測った。脚が疲れないこと、この草原を何日でも息を切らすことなく走れることを知っていた。それは彼の最大の利点だった。だが、短い距離ではオークが人間より速いことも知っていた。逃走計画を立てるには、距離があまりにも狭かった。背を向けて走り始めた瞬間、オークが彼に追いつくまで、おそらく数分もかからないだろう。


オークたちと向き合うほかに、選択肢はないように見えた。全員に勝てるという確信はなかった。だが、もしかすると退かせるだけの恐怖を与えられるかもしれない。


彼は両手を、迫り来るオークの集団へ向けて突き出し、初めての魔術を放つために集中し始めた。まず目の前に魔法陣が形成された。体内のマナがその陣へ流れ込み始めるのを感じたその時、低く、震えるような唸りが聞こえ始めた。


その音を聞いた人間たちとオークたちは、彼のほうへ目を向けた。魔法陣の輝きを見た瞬間、誰が標的なのか分からぬまま、その場で立ちすくんだ。


音が途切れた瞬間、オークたちのすぐ前方で、地中から巨大な石の尖塔が突き上がった。そのうちのひとつが、一体のオークの肩に突き刺さった。オークの苦痛に満ちた咆哮は、石が肉を裂く音と混ざり合って響いた。


彼が生み出した尖塔は、壁を築けるほど太くも密でもなかった。オークたちに恒久的な損害を与えたり、大きな脅威となったりするほど、正確でも壮麗でもなかった。彼がしたことは、ただ目の前の魔法陣へ、制御もなくマナを流し込んだだけだった。おそらく作法を知らないせいで、膨大なマナを費やしたにもかかわらず、これほど弱い効果しか生み出せなかったのだ。それでも、その魔術は、その瞬間に求められた役目を完全に果たしていた。


魔法陣が消え、標的が自分たちではないと悟った人間たちは、負傷した若様を伴い、必死に彼のもとへ向かい始めた。彼らにとってこの見知らぬ者は、もはや単なる未知ではなかった。背後の死から逃れるために縋ることのできる、最後の港だった。


石の尖塔がもたらした突然の恐怖によって、オークたちの進軍は刃で断ち切られたように止まった。オークの族長の太い声が、草原の風に混じって平野に響いた。


「丘から退け! 魔術師だ!」


負傷した仲間を助けている数体のオークを除き、集団全体が、はっきりとは分からない魔術の射程から急いで離れ始めた。彼自身も、自分の魔術の射程を正確には知らなかった。だが計画はうまくいった。彼が生み出した恐怖は、オークたちに撤退を強いたのだ。


その間に、五人の人間の集団は彼のいる場所へたどり着いた。そのうちの一人が息を切らしながら前へ出て、軽く頭を下げて言った。


「ありがとうございます。」


目の前の男が何を言っているのか、話している言語が彼の心の空白にとって完全に異質なものであったにもかかわらず、彼はなぜか理解していた。言葉が彼に届いた時、それはまるで見えない篩を通り抜け、意識の中へ純粋な「意味」として注がれていくようだった。言語の壁など、彼にとっては存在しない概念であるかのようだった。内側に広がるこの新たな発見への驚きを隠しながらも、声にある距離を置いた静けさを崩さず、彼は答えた。


「構わない。」


相手の男は驚いた目で彼を見た。自分の知る言葉で話したはずだった。しかし目の前の異邦人は、ためらいなくそれを理解したように見えた。息を切らしている一行は、おそらく生まれて初めて遊牧民と出会い、その人物が自分たちの言語をこれほど自然に受け入れている理由を理解できず、深い混乱に陥っていた。だが彼は、その静かな驚きにはこだわらなかった。平野にいて、遠ざかってはいるが、いつでも戻ってきそうに見えるオークたちから視線を外さないまま尋ねた。


「オークたちは再び態勢を立て直して、こちらへ来るかもしれない。最寄りの集落がどちらにあるか、知っているか?」


男は受けた衝撃を脇へ押しやり、横目でオークたちを見た。それから、震える手で地平線の霞んだ線を指した。


「東へ行けば交易都市があります。少し遠いですが、オークたちがそこまで我々を追ってくるとは思いません。」


ようやく心の絶対的な空白の中に、向かえる具体的な目的地ができた。その安堵と共に、彼はわずかに頷いた。人間たちの上にある不安げな視線を気にも留めず、真剣な声で言った。


「なら、道を示せ。」


日が沈むまで、彼らは東へ向かって歩いた。オークたちが追ってきているのかどうかは分からなかった。だが、彼らはもはや正面から戦える状態ではなかった。特に負傷者をひとり運んでいることを考えれば、踏み出す一歩一歩が危険であり、立ち止まるたびに静かな緊張があった。


日没が近づいた頃、彼らは二本の枯れ木の下で野営を張った。野営といっても、乾いた木の枝と根を燃やした火がひとつあるだけだった。それでも、他の者たちにとっては、その炎こそが草原の夜の寒さから身を守る唯一の避難所だった。


火のそばには、奇妙な沈黙があった。若様は炎の暖かさに最も近い場所で、疲れ果てた様子で横たわっていた。おそらく兵士たちの隊長であろう人物は、忠誠の象徴のように主の足元に腰を下ろし、まばたきもせず周囲を見渡していた。他の三人は、枯れ木の一本の幹に背を預け、若様の反対側に並んでいた。まるで自らの身体で、主を両側から囲む生きた鎧を形作っているかのようだった。彼自身は火から少し離れた場所に、その集団が自分へ向ける鋭い不安を感じ取っているかのように、静かにあぐらをかいて座っていた。彼らの間にあるその空白は、まだ名づけられていない境界線のようだった

誰も話さず、沈黙をどう終わらせればよいのか分からないようだった。人間たちはまだ鎧を身につけていた。周囲がなお危険だと考え、互いにすら疑いを抱いているようだった。あるいは、彼をまだ完全には信用していないのかもしれない。結局、彼の衣服はところどころ擦り切れ、汚れていた。手には鞘のない剣を持っている。その姿は、決して身分ある者には見えなかった。


その時、彼は地面に横たわる若様を見た。町までは数日の道のりだと言っていた。だが負傷した者がそれほど長い旅に耐えられるのかどうかは分からなかった。好奇心に負け、先ほど彼に礼を言い、この集団の現在の指導者のように見える人物へ尋ねた。


「町まで、持つのか?」


男はゆっくりと顔を若様へ向けた。その視線を彼から離さぬまま、落ち着いた声で答えた。


「少し痛めつけられただけで、重い傷はありません。朝には意識を取り戻します。」


それから彼へ向き直り、言葉を続けた。


「正式には、まだ名乗っていませんでしたね。私はガッロ。オルトレマーレ家に仕える者です。」


ガッロは順に他の者たちを示した。


「彼らはニコ、ファビオ。隣の年寄りはバスティアンです。」


そう言ってから、若様へ目を向け、付け加えた。


「そしてこちらがピエトロ様。オルトレマーレ家の若様です。」


ガッロはゆっくりと視線を彼へ向けた。沈黙は、返答への期待で重みを増していた。求められているのは名前だった。だが、彼の心には自分の名に関する響きが何ひとつなかった。記憶は、空っぽの部屋へ開く扉のようだった。何かをでっち上げて嘘をつくこともできたかもしれない。だが内側の感覚が、そうすべきではないと囁いているようだった。


沈黙が続くほど、場の重みは増していった。火の爆ぜる音さえも、この重苦しい沈黙を破るには足りなかった。


その中で、バスティアンがまるで救い手のように口を開いた。目尻に刻まれた深い皺と、白くなり始めた眉の下の眼差しが、野営を覆う緊張をいくらか和らげた。髭と口髭に混じる白が火の光を受けて銀のように輝き、彼に一行の他の者とは違う、より静かな雰囲気を与えていた。彼は、ざらついた老いた響きを帯びた声で言った。


「隊長……遊牧民は、名を後から勝ち取るものだと聞いたことがあります。身なりとその様子を見るに、この者に名を与える者はいないように見えます。ですから……」


バスティアンの介入は、火の周りの張り詰めた空気を少しだけ和らげた。ガッロは老人の言葉をしばらく頭の中で吟味した。視線は、隣の遊牧民の古びた衣服と、傍らにある鞘のない剣の間を行き来した。名がないということは、大きな空白を意味していた。だがバスティアンは正しいのかもしれない。この草原の真ん中で、誰にも属さぬ者にとって、名は今の彼が持っていない贅沢だった。


「失礼しました。」


ガッロは軽く頭を下げて言った。その硬い軍人らしい声色は、より柔らかな響きへ変わっていた。


彼が、バスティアンによって与えられた「名を得る時を待つ遊牧民」という役割を静かに受け入れている間、ガッロはおそらく沈黙が再び野営に降りるのを防ぐため、冗談めかした声で言った。


「名がなくとも、魔術で我々の命を救ったのは立派な功績でしょう? 我々があなたに名をつけるというのは、どうです?」


それから軽く笑い、他の者たち、ニコとファビオへ目を向けた。だがバスティアンが、目尻の皺を深めるわずかに不安げな声で、まるで犯された過ちを礼儀正しく正そうとするように割って入った。


「隊長、それは少々……無礼に当たるのでは? 本来なら、シャーマンがなさるべきことです。」


自らの過ちに気づいたガッロが、その無礼を詫びようと振り返った時、彼は、わずかに身を乗り出し、期待に満ちた目で自分を見つめる遊牧民と向き合うことになった。


名。内側の空白を少しでも埋めてくれるかもしれない言葉。それは、彼にとって、迷い込んだ闇の真ん中で差し出された手のように感じられた。伝統が何を言っているかなど、今はどうでもよかった。心の底なしの沈黙を破ってくれる一音にさえ、彼は飢えていた。


ガッロは確かめるように、ためらいを含んだ声で尋ねた。


「本当に? つまり……古きしきたりや、シャーマンの祝福を待たずに、我々のようなただの兵士から名を受けたいと?」


彼は言葉ではなく、ただ数回、軽く頷いて答えた。その目に宿る子供のような好奇心と純粋な期待は、つい先ほど巨大な石の尖塔を地中から引き出した、あの恐ろしい魔術師の姿とは完全に対照的だった。バスティアンでさえ、その視線を前に沈黙した。目の前の若い男の魂にある深い自己への飢えが、千年の規則よりも重くのしかかっていることに気づいたからだった。


ガッロは魂を貫くような好奇の眼差しから目を逸らし、バスティアンを見た。自分がどうすべきなのか、はっきりとは分からなかった。同じ迷いを含んだ声で、バスティアンへ尋ねた。


「なあ、爺さん。何か案はあるか?」


バスティアンは驚き、困惑したまま考え込みながら言った。


「いや、そもそも私は遊牧民の名というものを聞いたことさえありませんな。ふむ……」


「遊牧民の名前でなければならないのですか?」


ニコが火をかき混ぜながら尋ねた。


「ほかに何がある? 遊牧民に俺たちみたいな名前をつけるっていうのか?」


ファビオが、声に混じるかすかな嘲りを隠しきれずに言った。


「知っているものが、いくつかあります……」


半ば意識の戻ったような声で、ひとつの囁きが上がった。

本作の日本語版は、AI支援による翻訳工程を経て制作され、原文の文体や感情を損なわないよう人の手によって確認・調整されています。

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